平成23年 四六判 ソフトカバー P284
“鬼、鵺、土蜘蛛、豆腐小僧、天井嘗、垢舐……。日本人の想像力によって生みだされ、絵巻や物語に描かれてきた妖怪たち。いまも都市伝説などで再生されつづける「妖怪」とは何か? 説話やお伽草子に描かれる妖怪や怪異、うわさ話のなかの妖怪、妖怪画の歴史、妖怪と娯楽の関係、妖怪の博物誌など、最新の研究成果を盛り込んで日本の妖怪文化に迫る!”(カバー裏紹介文)
目次:
はじめに
I 妖怪とは何か
{妖怪の定義/出来事・·現象としての妖怪/存在としての妖怪/造形化された妖怪/道具妖怪/名付けによる妖怪種目の増殖/妖怪と幽霊/妖怪はどのように生まれるか}
II 妖怪の思想史
{妖怪研究の歴史をたどる/江戸時代の鬼神論/平田篤胤の幽冥研究/井上円了の妖怪学/江馬務の妖怪研究/柳田國男の妖怪研究/妖怪研究の退潮と妖怪ブーム/新たな妖怪論の登場/妖怪画への関心/妖怪研究とエンターテインメント/人間研究としての「妖怪学」/妖怪と娯楽・大衆文化}
III 記録の中の妖怪
{「記録」の定義/『日本書紀』に現れる怪異/空を飛ぶモノ/鬼・鬼火/ねずみの記録/彗星の記録/『続日本紀』に現れる怪異/死霊の祟り/記録の中の妖怪が示唆するもの}
IV 説話文学の中の妖怪
{説話文学に見られる妖怪/古代の鬼のイメージ/『今昔物語集』に見る鬼の多様性/妖怪と幽霊のちがい/物の気と鬼/〈鬼〉と捉えられてきた妖怪/仏教説話の中の鬼/人間から鬼ヘ/天狗・天魔・魔鬼/一つの中世人による解説/善天狗/鬼から人へ、霊へ戻る/変化するもの/狐の説話/狸の説話/未確認生物/鵺の説話/土蜘蛛の説話/人間の生物化/蛇の説話/虫の説話/野槌の説話/曖昧な動物と妖怪のちがい/信仰から娯楽へ/笑話の中の妖怪}
V お伽草子と妖怪
{お伽草子を概観する/本格的な妖怪絵巻の登場/『付喪神記』/『土蜘蛛草紙」/『百鬼夜行絵巻』/お伽草子の妖怪、化物/蜘蛛の妖怪/蟹の妖怪/蟻とダニ/清姫の素性/鬼の清姫/蛇の清姫/『化物草子絵巻』}
VI 妖怪の出現する場所
{妖怪は「出現場所が決まっている」/過去の場所を復原する/江戸時代の記録に描かれた付喪神/城下町絵図に見る妖怪の出現場所/口頭伝承の妖怪を地図化する/地籍図に見る妖怪の出現場所/復原図から妖怪の出現場所の傾向を見る/近世都市の怪異空間を探る/抽象的な空間概念を探る/言語化された妖怪の出現場所/妖怪の出現する場所の意味}
VII 妖怪画の系譜
{妖怪画以前/描かれた霊的存在/妖怪譚の絵画化/「百鬼夜行」の絵画化と「百鬼夜行絵巻」の登場/妖怪図鑑の萌芽/妖怪図鑑の登場/妖怪錦絵と幽霊画の隆盛/継承・発展する妖怪絵巻の伝統}
VIII 娯楽と妖怪
{妖怪に対する新たな態度/妖怪手品/写し絵・怪談狂言・怪談噺/見世物と妖怪/妖怪ゲームセンター、からくり的/江戸のポケットモンスター/草双紙の「化物」たち}
IX 妖怪の博物誌
{妖怪の博物誌」とは/山の怪/川・沼の妖怪/海の妖怪/道・坂・峠の妖怪/家の妖怪/妖怪への理解を深めるために}
X 〈口承〉の中の妖怪
{妖怪は「民話」か/「民話」とは何か/有名どころばかりの「昔話」の妖怪/由来をつくる「伝説」の妖怪/実体験と伝聞の「世間話」の妖怪/コトとしての口承、モノとしての妖怪}
XI 妖怪研究ブックガイド
I 基礎編 妖怪研究のエポック・メーキング
{柳田國男『妖怪談義』/井上円了『妖怪学全集』/江馬務『日本妖怪変化史』/宮田登『妖怪の民俗学』/小松和彦『妖怪学新考』}
II 展開編 妖怪研究の現在
{小松和彦編『怪異の民俗学』/小松和彦編『日本妖怪学大全』/東アジア恠異学会編『怪異学の技法』/一柳廣孝、吉田司雄編『妖怪は繁殖する』/京極夏彦『妖怪の理 妖怪の檻』}
III 発展編 妖怪研究各論
{田中貴子「百鬼夜行の見える都市』/中村禎里『河童の日本史』/堤邦彦『江戸の怪異譚』/アダム·カバット『江戸滑稽化物尽くし』/香川雅信『江戸の妖怪革命』/湯本豪一『明治妖怪新聞』/常光徹『学校の怪談』}
参考文献
掲載図版一覧