2005年初版 四六判 P285 カバー端僅イタミ
“ヒミコの鬼道と邪馬台国の葬送儀礼を追求すると、縄文・弥生・古墳時代を通して日本シャーマニズムの系譜が浮上する。三輪山信仰と蛇、巫女とセクシュアリティー等、考古学・民俗学・宗教学を動員してその謎に迫る。”(カバー紹介文))
“卑弥呼の「鬼道」とは何か。それを探るには弥生時代の祭祀と祭祀者を追求しなければならない。古くは縄文時代の環状列石。さらに男根を表す石棒や人形などのセクシュアリティの力の系譜。アメノウズメやヤマトトトビモモソヒメから神功皇后にいたる神がかりの示すもの等を分析しシャーマニズムをキーワードとして古代日本を探る!”(カバー袖紹介文)
第1講 卑弥呼の鬼道とシャーマニズム
1 開講にあたって {日本について/シャーマニズムの今日/ツキとは}
2 『魏志倭人伝』の宗教世界 {卑弥呼の出現/鬼道とは/邪馬台国の葬送儀礼/卑弥呼の墓}
3 弥生時代の絵画土器とシャーマン {弥生の絵画土器/頭上の羽根飾りと翼の袖/女性器の線刻画/鳥への変身/聖なる鹿の血と肉}
4 弥生人と縄文人の世界 {環濠集落と方杉周溝墓/環状列石のある景観/同心円の空間構造/他界の発生}
5 弥生の農耕祭儀 {稲吉角田遺跡の土器絵画/蘇塗と農耕祭祀/穀霊を運ぶ鳥と祖霊像/農耕儀礼の光景を復元する/生け贄として聖獣、鹿}
6 セクシュアリティの表象と祭儀 {男根像による呪い/縄文の石棒と土偶/弥生の男根像と人形/セクシュアリティの力}
第2講 シャーマニズムの世界
1 シャーマンとシャーマニズム {シャーマンとは/バンザロフのシャーマン論/神霊の統御と交通の霊力}
2 シャーマニズムの宗教経験 {精霊の宿り場としてのシャーマン/憑依とは/エクスタシーの専門家/エリアーデの「憑霊」論/混淆するシャーマニズム/日本の巫女の人為的エクスタシー}
3 憑依とシャーマン {ルイスのシャーマン論/ルイスのエリアーデ批判/シャーマンの儀礼/精霊憑依の二つのタイプ/憑依解釈の歴史的な変化/憑依と脱魂/憑依と脱魂の併存する日本}
第3講 日本シャーマニズムの歴史民俗誌
1 日本シャーマニズムの系譜 {シャーマニズムの北方説と南方説/北方シャーマニズム説/南方シャーマニズム説/王権シャーマニズム/宮廷葬儀シャーマニズム/民間シャーマニズム/梓巫女と弓}
2 柳田国男の巫女論 {柳田民俗学の方法と目的/二種類の巫女/ミコの語源/御子神とミコ/巫女の凋落/妹の力とは}
3 柳田国男の神秘論 {異人の出現/「神秘」の発生/職業の巫女と神秘/神憑きの発生/憑依の解釈学/オシラ様を祀る柳田/巫女のフィールドワークの必要}
第4講 アメノウズメと巫女埴輪
1 アメノウズメの神がかり {記紀神話の中のシャーマン/神がかりのシーン}
2 神がかりの場 {神がかりの舞台装置/託宣儀礼の祭具/欅と鬘}
3 神がかり儀礼の祖型と構成 {天の岩屋籠もり神話の解釈/新嘗の祭場の穢れと災い/混沌の回復と神の発生・更新}
4 巫女埴輪と表象の諸相 {巫女の装束/巫女埴輪の展開(出現期 波及期 展開期 転換期 州延期)}
5 巫女の衣裳と祭祀 {オスイ(意須比)/埴輪のオスイ/襷/首飾り・腕飾り・足飾り/琴を弾く男性}
第5講 古代日本シャーマニズムの霊魂観とセクシュアリティ
1 「たましひの鳥」鷹と鈴 {鷹匠の埴輪/儀礼としての狩猟/大伴家持の鈴を付けた鷹/鈴の音を響かす鷹/「たましひの鳥」鷹/霊魂をもたらす鳥}
2 鈴鏡と巫女 {鈴鏡を付けた巫女埴輪/鏡と鈴鏡/鈴鏡とシャーマニズム}
3 巫女と呪術的セクシュアリティ {衣・裳・紐―乳房をあらわにするアメノウズメ/ヌードと女性器/女性器を露出した埴輪/性器の呪力/神の憑依と聖婚}
4 笑いとセクシュアリティの力 {笑いとセクシュアリティ/歌舞と酒盛り/笑いと性行為による豊饒の祈り}
5 セクシュアリティの儀礼的パフォーマンス {国生みと神生み/「成れる神」と「生める神」/「いきほひ」の歴史的オプティミズム/性交の始源と儀礼/神の来訪と歓待/神がかり・笑い・セクシュアリティの力}
第6講 三輪山信仰とシャーマニズム
1 神がかりの位相 {神がかりを表わす言葉/ツケ/カカリ}
2 三輪山とカンナビ {三輪山信仰/三輪山の磐座/カンナビ山}
3 三輪の神と神観念の変遷 {依り来る神/オオアナムジの死と再生/一夫多妻制と巫女の収奪/色好みの神/采女と巫女}
4 来訪神と常世国 {来訪神/折口信夫の古代学/他界観の変遷}
5 三輪の神オオモノヌシと巫女 {丹塗矢に変身する神/オトメと神の嫁/不可視の神から可視の神へ}
第7講 ヤマトトトビモモソヒメの神がかりと祭祀
1 ヤマトトトビモモソヒメとオオモノヌシ {ヤマトトトビモモソヒメの神がかり/神の子を産む巫女}
2 神功皇后の神がかりと託宣儀礼 {歴史教科書の神功皇后/“三韓征伐”の神功皇后/神功皇后の神がかり:『古事記』の託宣儀礼/神功皇后の神がかり:『日本書紀』の託宣儀礼}
3 蛇を祀る巫女ヤマトトトビモモソヒメ {オオモノヌシと神の妻ヤマトトトビモモソヒメ/王権の聖地/死と再生のシンボルとしての蛇/蛇を育て祀る巫女/蛇息子の昔話/動物霊による呪法/呪いの人形/呪いのマジナイ/ホトを突く巫女/男根的“暴力”による侵犯/異界とこの世の断絶/蛇祭祀の終焉から王権の祭祀へ}
おわりに―森羅万象に耳を澄ましてみよう
参考文献
あとがき