
1999年2版 A5判 P287+索引・文献P16 帯僅スレ カバー背から端にかけて少ヤケ
“いまも生きて変化を遂げているカクレキリシタン信仰 ―その本質へ迫る”(帯文)
“いま現在カクレキリシタンとして生きている人々が、みずからの信仰についてなにを感じ、なにを考え、なにを悩み、どう生きているのかということを、行事に仲間の一人として参加することで、明らかにしていく。”(帯裏紹介文)
近世のキリシタンをルーツとしながら、1873年(明治6)の禁教令廃止後も潜伏時代の信仰形態に基いた独自の変容を遂げ、現代まで長崎県で継承されてきた「カクレキリシタン」。その歴史、行事、宗教観などの実態を調査し、キリスト教的要素を払拭し日本に土着した独自の民間信仰形態として論じる。
目次:
序章 カクレキリシタン世界への誘い
一 カクレキリシタン世界への誘い
二 カクレ饅頭の味
三 小さな方法論
第一章 生月キリシタンの歴史と展開
一 生月島の概観
二 生月のキリシタン布教と迫害
三 ガスパル様の殉教
四 サンジュワン様とダンジク様のお歌
五 サン・パブロー様(幸四郎様)
六 明治初期の生月潜伏キリシタンの復活
第二章 カクレキリシタンの呼称
一 「潜伏キリシタン」と「カクレキリシタン」
二 内部および外部からの呼称
三 「隠れキリシタン」か「カクレキリシタン」か
第三章 カクレキリシタンの分布
一 潜伏キリシタンの分布
二 先行調査におけるカクレキリシタンの分布と信徒数
三 現在のカクレキリシタンの分布
第四章 壱部のカクレキリシタン組織とその継承
一 キリシタン時代の信徒組織「組講」(コンフラリア Confraria)
二 「ツモト」と「小組」(コンパンヤ Companhia)
三 オジ役(爺役)
{1 オジ役と爺役/2 オジ役の見立て/3 オジ役の伝授/4 神聖なるオジ役のタブー/5 オジ役の報酬}
四 オヤジ役(御番主)
{1 オヤジ役の呼称とその役割/2 オヤジ役の任期/3 壱部六ヵ所のオヤジ役}
五 役中の役割
六 組織維持の現状と将来
{1 世襲制と輪番制の長所と短/2 組織の維持と改革}
第五章 オラショとその伝承
一 壱部のオラショとその意義
二 『生月旧キリシタンごしょう」
三 オラショの変容
四 「伝承のオラショ」と「創作のオラショ」
五 オラショの唱え方
{1 「ロッカン」のオラショ/2 「一通り」のオラショ/3 「お七百(長座)」}
六 「神寄せ」と「申し上げ」
七 オラショの伝承
{1 一通りのオラショの伝習/2 御誦比べ}
第六章 壱部カクレキリシタンの年中行事
一 カクレキリシタン行事の構造
{1 祈願―直会―宴会/2 神への供え物/3 カクレキリシタン研究における行事の意義}
二 行事の分類
{1 行事の分類法/2 行事の目的と形態による分類}
三 壱部の行事一覧
{1 壱部・岳の下の行事一覧/2 種子・大久保の年中行事}
四 壱部・岳の下の行事内容
第七章 「お授け」と「戻し方」
一 お授けの諸問題
{1 お授けと洗礼/2 お授けの意義/3 お授けの呼称と時期/4 施洗者と施洗上の制限/5 お授け依頼者と施洗者の作法/6 代父母の呼称とその条件/7 アニマの名(洗礼名)/8 お授けに用いられる水/9 お授け執行の場所と参加者/10 施洗前の清め/11 死者への洗礼}
二 お授けの有効性
{1 カトリックにおける有効な洗礼の条件/2 生月諸地区のお授けの有効性}
三 壱部のお授けの式次第
四 なぜお授けはすたれたのか
五 戻し方
{1 経消し―二重の葬儀/2 「戻し」と「送り」/3 戻し方は誰が行うか/4 死者へのお土産}
六 壱部の葬式と供養
{1 お授け・風離し・出立ち養生/2 戻し方の式次第/3 供養}
七 墓の建て方
第八章 現在のカクレキリシタンの他界観
一 オラショにみる他界観
二 カクレキリシタンと他界
三 葬儀と祖先祭祀
第九章 カクレキリシタンの信仰構造
一 現代日本の民衆宗教の構造と特色
二 現在のカクレキリシタン信仰の特色
{(a)重層信仰/(b)祖先崇拝/(c)現世利益主義/(d)儀礼中心主義}
第一〇章 カクレキリシタンの信仰対象と神観念
一 キリシタン土着の問題
二 生月カクレキリシタンの神類型
三 知覚できる物的存在としての神
{(a)御前様/(b)お水(サンジュワン様)/(c)オマブリ/(d)オテンペシャ/(e)お札様/(f)ロザリオ、メダイ、十字架、布切れ、人物像、鏡等}
四 「御魂入れ」と「御魂抜き」
第一一章 タブー・タタリ・ケガレ
一 カクレキリシタンとタブー
{1 お授けにまつわるタブー/2 性に関するタブー/3 役職者のタブー(オジ役のタブー)}
二 カクレキリシタンとタタリ信仰
{1 神様とは御魂の入ったものである/2 タタリとされた実例/3 組織解散時の神様の処理}
おわりに
注
付録 壱部『生月旧キリシタンごしょう』
カクレキリシタン関係参考文献
索引