1990年4刷 四六判 P308 カバー少汚れ、背少ヤケ
“幕末から明治にかけての時代の転換期に、天理教、金光教、,大本教、丸山教などの民衆宗教が誕生した。
それらは民衆救済の道を思いつめて神がかりし、生きながら神となった教祖の強烈な人格力によって多くの人びとの心をひきつけ、入信させた。単なる俗信や現世利益の追求を超えて民衆宗教を創始した生き神=教祖たちの独自の宗教意識は、民衆の自己解放・変革とどのようにかかわりあい、またどのように継承され、あるいは変貌していったのか。本書は金光教のケース・スタディを中軸に置きながら、このような民衆宗教成立の社会的背景と、日本の近代化の過程において天皇制権力と苦闘しながら妥協の道をとるにいたった過程を、事実に即して考察する。”(カバー袖紹介文)
目次:
はしがき ―読者へ
【I】
日本の近代化と民衆宗教
はじめに
一 幕末民衆宗教における生き神思想の成立||金光大神の思想形成をめぐって
{1 思想形成を促するもの/2 幕藩制社会と宗教/3 生き神思想の成立/4 世直しと生き神}
二 民衆宗教と国家 ―生き神か現人神か
{1 「近代」へのプロローグ /2 生き神か現人神か/3 「独立」の代価/4 民衆的異端の系譜を継ぐもの}
民衆宗教における“近代”の相剋 ―教派神道体制下の金光教―
はじめに ―問題の所在
一 別派独立後の金光教団 ―その内部構造について
二 大正デモクラシーと金光教
{1 佐藤範雄と「国民教化」運動/2 信仰復活運動の意義/3 片島幸吉の思想}
三 ファシズム期の金光教
{1 教団「民主化」運動の展開/2 「新体制」の意味}
結びにかえて
【II】
斎藤重右衛門のこと ―ある民衆宗教布教者のプロフィールー
はじめに
一 生いたち
二 道を求めて
三 出会い
四 苦難
五 別れ
戦争と信仰 ―『卡子』と大久保さん父子のことー
{一 『卡子』との出会い/二 研究室にて/三 「不条理」の意味/四 もう一つのメッセージ/五 研究史の立場から/六 待ちうけていたもの/七 信と忠のはざまで/八 大久保宅次―その人と信仰(一)/九 大久保宅次―その人と信仰(二)/一〇 旅の終りに}
【III】
生き神の思想史 ―神と人とのあいだ―
はじめに ―「生き神」の歴史的性格
一 生き神思想の成立
{1 教祖の自己解放と「生き神」/2 民衆救済思想としての「生き神」/3 生き神思想の歴史的意義}
二 ヒトガミ観の変遷
{1 ヒトガミにおける神性と人性のあいだ/2 御霊 の世界/3 ヒトガミの近世的展開}
三 生き神思想とヒトガミ ―その連続と非連続
{1 人間「罪 の子」観の意義/2 親神の性格}
おわりに
ナショナリズムと民衆宗教
一 民衆宗教の「古傷」
二 「外国は獣類の世」
三 排外主義への発案
四 「三千世界」の神
五 「文明は人倒し」
六 「反近代」の超克}
霊と近代 ―民衆宗教における霊魂観の変遷―
はじめに
一 ヒトガミの系譜 ―御霊信仰から生き神まで
二 こころと霊のあいだ ―金光大神の霊魂観
三 「身魂」の思想 ―出口なおの場合
四 「霊魂」の転成 ―出口王仁三郎と霊体二元論
結びにかえて ―霊魂の「新時代」と生長の家
あとがき
初出一覧