2000年初版 文庫版 カバー僅汚れ
“世阿弥が見出した、憑き物による物狂いと思いゆえの物狂いとは。稚児男色の対象となった華やかな美少年たちの背後にひそむ暗闇とは。白拍子の男装にこめられた、性別を越境し女人結界を突破しようとする中世女性の論理とは。能という中世芸能を素材に、狂気、同性愛、性別越境など、近代的理性からは「逸脱」と映ることがらを通して、中世人の隠された心性を読みとく。文学と歴史をきり結ぶ地点から掘り起こす、異色の中世史。”(カバー裏紹介文)
目次:
I 感性の逸脱
第一章 中世の狂気・物狂い―能と漂泊する精神
1 はじめに
2 中世人の狂気観
3 世阿弥の物狂い論
4 憑き物による物狂い
5 思いゆえの物狂い
第二章 中世寺院の稚児と男色―謡曲「経正」「花月」と同性愛
1 稚児寵愛の説話・謡曲
2 大乗院尋尊と二人の童形
3 美童をめぐる闘諍
第三章 第六天魔王と解脱房貞慶―謡曲「第六天」と伊勢参宮説話
1 『太平記』と謡曲「第六天」
2 顕密仏教と魔道
3 貞慶と伊勢神宮の関係
4 伊勢の神と第六天魔王
5 おわりに
《補論》物狂いの荒法師・文覚伝説
第四章 虫類成仏と中世人の死生観―謡曲「胡蝶」と輪廻転生
1 謡曲「胡蝶」と死の心性史
2 転生譚と死のイメージ
3 天台本覚思想と成仏
第五章 中世王権と「亡国の音」―小督説話と音楽
1 王権の衰滅と専修念仏・白拍子
2 『平家物語』と謡曲「小督」
3 源仲国の笛と小督の琴
4 吉例の音楽・亡国の音楽
II 逸脱する女性
第六章 白拍子の男装・能の女装―中世芸能民の性別越境
1 男女両性具有
2 男装と女人禁制の性別越境
3 世阿弥の“女体”能と性の倒錯
4 女性の猿楽能
《補論》男が女になる病
第七章 二人づれの女性芸能者―中世遍歴民の世界
1 後鳥羽院の女房・松虫と鈴虫
2 謡曲「松虫」と松虫塚
3 白拍子・静の廻国伝説
4 一人旅の女性と物狂い
第八章 大力の女と白拍子―中世東北の武家と血統伝説
1 中世女性史の好個の資料
2 戦国時代の伝承
3 白拍子腹の後継者
4 女性の重要な役割
あとがき・新装版へのあとがき
解説(佐伯順子)
初出一覧