1976年再版　A５判　P291　函ヤケ、汚れ、角イタミ　本体表紙および天地小口汚れ、時代シミ　巻頭口絵および扉ページ時代シミ

“ロマネスクな筋や構成を全く無視して、全篇を一種の散文詩、寓話、アネクドット、対話、アフォリズムのようなものから成り立たしめているのが、この変ったスタイルの小説『ポトマック』の第一の特徴であろう。さらに本文と同時に描かれた、六十四枚のデッサンがこれに加わって、この風変りな小説はいよいよユニークなものとなる。八方破れと言ってもよいほどの形式であるが、しかし、ここに溢れんばかりに息づいているのは、作者の青春のみずみずしい情熱であり、哀愁であり、苦悩であろう。ナンセンスと逆説で綴った文章の中からでも、それが私たちに、ひしひしと伝わってくるのが感じられるのである。こんな叙情的な調子の作品は、コクトオのものとしては稀有であり、これが青春の書である所以も、そこにあるのだろうと思われる。……”（「訳者あとがき」より）

澁澤龍彦が25歳の頃に翻訳したものに手を加えないまま、15年後に発表された作品。

装幀：堀内誠一、勝川浩司

目次：
献辞
後から
どんな風にして彼等は出現したか
ウージェーヌたちのアルバム　あるいは
面白く終るようなお話は
　｛却っていっそつまらなく終るもの／ペルシケエルの手紙｝
十字街
最初のポトマック訪問
アリアドネ
死
二度目のポトマック訪問
道草食い
三度目のポトマック訪問
翌日
不可能なる利用
特別版

あとがき
イゴオル・スラヴィンスキイへ
訳者あとがき