平成17年 四六判 P222 帯角折れ跡 遊び紙裏側に謹呈札貼付 扉ページ裏側剥がし跡
“夢はそのまま現実だった!
輿に乗って空を飛ぶ門跡経覚。これは瑞夢か凶夢か。神仏からのメッセージとされた中世人の夢は、「夢語り」 によって共有され、現実に投影された。応仁の乱前夜の中世社会を、夢の視点から描き出す。”(帯文)
“土一揆が頻発する応仁の乱前夜の京都・奈良。室町時代に、人が見た夢は、これから起きるできごとの神仏からのメッセージとされた。興福寺大乗院前門跡、経覚が輿に乗って空を飛んだという西忍の夢、その夢解きをする門跡、尋尊。それぞれが遺した記録から、門閥二人の関係を克明にたどり、夢が共有された「夢語り共同体」としての中世社会を描き出す。”(カバー裏紹介文)
目次:
はじめに
第一章 交差する三つの道
一 天竺人の子、西忍
{西忍とは何者か/二度、唐船に乗って/船方の掟法/明の都、北京へ/貿易の品々と大きな利益/天竺人の子/幼名ムスル、俗名天次/不思議の老者}
二 門跡の地位を追われる経覚
{九条家に生まれる/経覚の母、正林禅尼/蓮如と経覚/大乗院門跡の地位/門跡の後継者/将軍足利義持の南都下向/大和国民等の作法/将軍足利義教の政治/大和永享の乱/門跡を追われる}
三 幼い新門跡、尋尊
{一条殿の若君/西忍の出家/経覚、軍勢を率いて乱入/経覚と尋尊は師弟か/龍田本宮への参拝/門跡への完全復帰/奈良の町で合戦/鬼薗山に城郭を/落着するまで在京/城を自焼して没落/懐から蝶を取り出す夢/死者を辻堂に出す/古市に落ち着く}
第二章 戦乱と土一揆のひろがり
一 日々乱発する土一揆
{渡唐反銭と土民蜂起/二人の若公の争い/将軍の御成/大和国中の闕所地をめぐって/将軍の寄附状/土一揆、日々乱発/武家の「ていたらく」/土一揆に順うも一興/外聞と実儀}
二 龍王と仏舎利
{合戦と質取り/龍王の子を質に取る/仏舎利とは?/龍王と室生寺/龍穴と宝珠/室生寺への参詣/まばゆき月を手に取る/天川の弁財天に参詣/夢想に相当す}
三 越前の荘園支配をめぐって
{経覚の隠居方料所/細呂宜下方/細呂宜下方をめぐる動き/楠葉元次のはたらき/長禄合戦/河口荘惣百姓等、直務を要求/直務の奉書を得る/朝倉の名を籠める}
第三章 未来記と夢語り
一 二つの未来記
{未来記とは/地中から石筥を掘り出す/『明月記』の未来記/太子未来記」と倒幕の動き/天王寺御手印縁起/『看聞日記』 の未来記/尋尊と天王寺瑪瑙記/経覚と「野馬台詩」/「野馬台詩」とは?/パズルを解く吉備真備/「野馬台詩」の全貌/二つの未来記}
二 経覚の「夢語り共同体」
{「夢語り共同体」/夢を憑む/「夢語り」のカラクリ/眠って見る夢、醒めて見る夢/予ならびに家門の吉/明教房実盛の下人が見た夢/鵲に飲ませた毒/夢想に賛同して/鹿の肉を食らう/牝鹿が懐中に}
三 師弟三人が、あいならぶ時
{寺門の内紛と口遊/春日大明神の照覧をあおいで/禅公の教育について/政覚の大乗院入室/有得の欲心、一身のことに限らず/師弟三人、あいならぶ時/九牛一毛/一期の後は、残らず門跡知行分へ/その後の三人}
おわりに
参考文献
あとがき