2014年 A5判 P329 帯付 小口僅イタミ
坪内逍遥「小説神髄」以後の近代文学観では汲み取れない部分が多く「遅れたもの」「劣ったもの」「二義的なもの」と軽視されてきた、あるいは一定の読者や研究はあるものの文学史の中での位置付けが難しいとされてきた、明治10年代、20年代の文学作品をとりあげ、江戸民衆文化と西洋文化の融合として再考する論集。
“新たな近代文学史の構築に向けて
明治期、欧化に邁進した日本が捨て去った江戸期の文化と心性を継承した作家たちにいま光を当てる。
日本古来の文化・習俗を文学に昇華しつつ、欧米文化と格闘し、近代文学の構築に寄与しながらも忘れ去れていった作家と作品を、日文協近代部会が総力をあげて再評価する。”(帯文)
目次:
まえがき
序論 新しい文学史へ 透谷と漱石(伊豆利彦)
【第一部 読まれなかった〈明治〉】
〈悪〉の破壊力 ―三遊亭円朝「怪談牡丹燈籠」論(峯村康広)
明治二十年のアウトサイダーたち ―「対外進出」を想像する心のあり方について(大西仁)
仮名垣魯文『高橋阿伝夜叉譚』論 ―魯文の描いた〈毒婦〉お伝は、〈悪〉として描かれていたか(西村英津子)
若松賤子訳『小公子』における内省的人称表現の分化(後藤康二)
【第二部 帝国憲法下の表現者たち】
第一節 尾崎紅葉の復権
尾崎紅葉「三人妻」を読み直す ―内面へ踏み込まない小説へのアプローチ(大島丈志)
日清戦後文学としての『多情多恨』 ―〈擬制〉と〈集合〉(関谷由美子)
第二節 一葉テクストを読み解く ―まなざしの向こうへ
樋口一葉「にごりえ」論 ―「人魂」となってさまようお力のへ〈無念さ〉(前田角蔵)
樋口一葉「たけくらべ」論 ―絶望に抗う想像力(高口智史)
第三節 泉鏡花 ―愛・戦争・国家
泉鏡花『冠弥左衛門』 ―反権力の拠点「高妙寺」(稲林弘基)
純化された愛の物語・泉鏡花『外科室』を読む ―明治二十八年の『外科室』と『十三夜』の録之助の愛(鈴木正和)
泉鏡花『琵琶傳』 ―女の愛と反逆(小林裕子)
【第三部 文学史の新断面】
近代日本文学「明治二十五年」のたたかいと挫折 ―選挙大干涉事件と透谷・漱石・一葉・多摩の民衆(小澤勝美)
『舞姫』から鴎外の『椋鳥通信』へ ―「沈黙の塔」を視座として(金子幸代)
心理描写の先駆け ―広津柳浪『残菊』と明治文学(千葉正昭)
三遊亭円朝の怪異観 ―『真景累ヶ淵』から 『怪談乳房榎』へ(三浦正雄)
あとがき