鬼の研究 馬場あき子 三一書房

1971年1版1刷 四六判 P253 函および帯背ヤケ 小口少汚れ

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国内文学古典文学(近世以前)

妖怪・幻獣・神話・民間伝承日本・東洋の神話・説話・民間伝承・妖怪




1971年1版1刷 四六判 P253 函および帯背ヤケ 小口少汚れ

中世の文学や記録などに見られる「鬼」に関する記述を渉猟し、そのイメージが何に由来し、どのように変遷したか、さらにそこには日本人のどのような心性が現れているのか、などを探る。角川文庫、ちくま文庫から復刊されているロングセラー評論の元版。

“現代に〈鬼>は作用しうるか。近世にいたって鬼は滅びた。 苛酷な封建幕藩体制は、 鬼の出現をさえ許さなかったのである。そこでは、鬼は放逐される運命を負うことによってのみ農耕行事の祭りに生き、 折伏され、 詠殺されることによってのみ舞台芸術の世界に存在が許された。祭りや、 歌舞の形式のなかに埋もれつつ、その本来的エネルギーも圧殺寸前の状態となっている現在、 最後の叫びを上げているような〈鬼〉のすがたに、 私は限りない哀れを覚える。それとともに、 機械化の激流のなかで、衰弱してゆくほかない反逆の魂の危機を感ずる。〈日常〉 という、この実りすぎた飽和様式のなかで、 眠りこけようとするものを醒すべく、ふしぎに〈鬼〉は訴えやまないからである。”(帯裏紹介文)

目次:
序章 鬼とは何か

一章 鬼の誕生
 1 鬼と女とは人に見えぬぞよき {「虫めづる姫君」の慨嘆/籠れる鬼の重之妹/四条宮筑前の君/『倭名類聚』の見解}
 2 〈おに〉と鬼の出会い {鬼・神同義説/鬼と日本の〈おに〉/鬼の面貌/西行人を造る}
 3 造形化のなかの鬼 {〈おに〉の訓を得た〈鬼〉字/造形化される鬼/『山海経』は影響したか}

二章 鬼を見た人びとの証言
 1 鬼に喰われた人びと {阿用の一つ目鬼/初夜の床に喰われた女/あぜ倉に食われた業平の思い人/武徳殿松原に食われた女/官の朝庁で喰われた弁官}
 2 鬼の幻影 {幽霊と鬼/鬼の足跡と衣冠の幻/征葥の調伏}
 3 百鬼夜行を見た人びと {一条桟敷鬼のこと/百鬼夜行とは/常行・師輔鬼に遇う/龍泉寺の修行者鬼に遇う}
 4 牛頭鬼と羅刹女と地獄卒 {牛頭鬼による殺害事件/羅刹に出遇う/涅槃茶鬼の描写/現世を歩く地獄卒}
 5 衰弱する〈ぬし〉の系譜の鬼 {〈ぬし〉とは何か/家霊としての〈ぬし〉/左大臣融の霊鬼/人なき堂屋に棲む〈ぬし〉の鬼/鬼をよせつけぬ心とは/冷泉院の水の精の翁}
 6 完成にむかう鬼の典型 {羅生門の鬼/鬼の出現する場所/「肝だめし型」から「武勇譚型」へ/切断される老母の手/武勇者と美女/他界との問答と絆を切る剣}

三章 王朝の暗黒部に生きた鬼
 1 鬼として生きた盗賊の理由 {童子を名のる大江山の鬼/二つの大江山と酒呑童子/山拠の生活をもった人びと/王朝暗黒社会の不可解性/鈴鹿御前立烏帽子/鬼使い千方/鈴鹿御膳の問題点/悪路王叛乱と鈴鹿の鬼/鬼の拠点としての鈴鹿山・関山/戸隠の鬼女/女盗人ものがたり/鬼族としての盗人魂/鬼として生きた特殊階級の人びと/平六の社会復帰}
 2 土蜘蛛の衰亡と復讐 {土蜘蛛誅殺と先住権/土蜘蛛の復讐}
 3 雷電と鬼 {日本の神と雷電/雷電と鬼/菅公の御霊としての雷電}
 4 鬼の心と呪術の世界 {生きながら鬼となること/愛の変節を責める女の鬼/六条御息所と羞恥の鬼/砧の怨みと鬼ごころ/恋の鬼葛城上人/鬼つかいと外術}

四章 天狗への憧れと期待
 1 幻の大会《だいえ》 {天狗幻術の「大会」/天狗幻術は作用したか}
 2 天狗と飛行空間 {天狗の星/天狗と神仙思想/鬼の〈あはれ〉と天狗の〈おかし〉/花月少年と天狗思想}
 3 無道の智者 {無道の智者としての天狗像/猿田彦とベシミの面/迫害される天狗/天狗説話の生長と展開/姿なき風雅}
 4 天狗山伏 {山伏と天狗}

五章 極限を生きた中世の鬼
 1 中世破滅型の典型としての般若 {小面と般若/半蛇と般若}
 2 空無の凄絶をもった美―「黒塚」考 {黒塚歌話と鬼/シカミ「黒塚」と般若「黒塚」/「黒塚」の美学}
 3 白練般若 {〈真〉の般若六条御息所/般若の〈艶〉と〈怨〉/般若の悟り}
 4 一言主の愁訴と棄民山姥 {一言主の愁訴/山に棲む遊女/山に棲む鬼女山姥/山姥の哲学}

終章 鬼は滅びたか―あとがきにかえて
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