1992年　A５判　P412　帯付　カバー少スレ　天時代シミ

“文学作品・日記・書簡等を通して過去の病人を、三〇〇人を超えるインタビューを通して現代の病人を、社会史・心性史・身体論・社会学の視点から総合的に分析！”（帯文）

“病気の体験は、単なる個人的な体験ではない。おのおのの社会にそれぞれの、病気があり、それぞれの病人がいる。どこでも、どの時代でも、個人は自分が生きている社会との関連で、そして社会が定めた様式にしたがって病気に
なるのだ。
神によってもたらされた集団的災禍たる伝染病の、名も知れぬ犠牲者たち、エイズ、医者の技術や知識にたいして疎外され受け身になった患者、治療を自らおこなう現代の慢性病患者の集団、そしてボランティア団体にいたるまで、病気の体験と病人という人間は社会的に構築され、歴史的に位置づけられる。
本書の主題は、近代的病人の誕生である。過去の病人については直接の証言、手紙、日記などから、現代についてはさまざまな病気にかかっている300人以上の病人を対象に行ったインタビューから解読しえた、病人の体験と言葉がこの研究の基礎になっている。”（カバー裏紹介文）

目次：
日本語版によせて
序

【I　病気と病人】
1　病いの旧体制―伝染病
　｛隔離／避けられない災禍とその犠牲者／パニックと混乱／集団的、社会的な戦い／熱病の再発／醜悪な病い｝
2　肺結核から結核へ
　｛ロマン主義的な病い／細菌をまき散らす労働者／病人の出現／病いの体験―神話から現実へ｝
3　記憶と忘却の領域
　｛かつての病気の記憶？／熱病の時代の終焉／神話の残存／医学の勝利｝
4　現代生活の病い
　｛病気の個別化と社会化／病気は医学の領域に属するものとなる／新たな災禍―癌／現代の病理の多様性／現代生活によってひきおこされる病気に関する考え方｝

【II　病気の解読と解釈】
5　醜い身体から病いの空間へ
　｛病気の症状の醜悪さ／虐げられ変形した身体／身体＝外皮―腐乱と悪臭／目に見えぬ病い／身体外部の健全さと運動機能の損傷／苦痛、そして医学によって傷つく者たち／内面化された病いと身体機械論｝
6　病因から意味へ
　｛病因という概念と病気の解明／病気、自然の混乱、天罰／伝染／病気の原因となるライフスタイル／過労／素人の考え方と医学上の論争／個人とその病い―隠れた意味／白我の病い｝

【III　病人のアイデンティティー】
7　宿命あるいは病人なき病い
　｛運命への従属／必然的な成り行き／病人なき病い｝
8　過ちの重圧―罪人と悔悛者
　｛病気による処罰と贖罪／神だけが病いを癒せる／キリスト教徒の死の儀式／苦痛という現代の試練｝
9　梅毒患者―過ちを犯した身体
　｛快楽と腐敗／集団幻想／医学の言説―性病との闘い／衛生活動と保健道徳／現代の性病｝
10　無為から病気になる権利へ
　｛扶助と政治権力／慈善から連帯へ／労働と社会保障―病気になる権利／病気を通じて人生を変える／休業と身体の管理／病気と社会秩序に対する抗議｝
11　治療する者-治療される者、病人と医学
　｛医学の地位のゆるやかな上昇／治療と治癒の義務／鑑定と職業的権威／専門家と素人―視点の対立／病人の戦術／民間療法の援用｝
12　養生する者から健康の義務へ
　｛病気の管理／みずから養生する者、知、医療技術／病人と医者―新たな関係？／患者グループ／積極的なアイデンティティー／《健康利用者》／健康という義務｝
結び

【現代の病い、エイズをめぐって　―第二版へのあとがき】

訳者あとがき
原注