2000年2刷 A5判 P251 カバー端僅イタミ
“フランク・ロイド・ライトが日本の伝統的絵画美術を愛好していたことは広く知られているが、同時に、彼は日本美術や建築からの直接的影響は強く否定していた。
本書では、日本の哲学的部分だけではなく、美術や建築のある特定の意匠が実際ライトの初期の作品に大きな影響を与えていた事実を検討する。これにより、ライトの一般的なデザイン・アプローチに新たな光が投げかけられることになるであろう。
特に本書では、ライトのいう「有機的」デザインの原理の観点から、ライトがいかに日本の伝統美術や建築を理解していたかについて論じる。そして、それぞれ独立した形態やアイデアがひとつの新しい創造的な統合体にまとめられていった過程を示すことによって、ライトの芸術的な独創性について明らかにするつもりである。
浮世絵から出版物にいたる8つのおもな経路と、日本のさまざまな建築物について詳細に検討し、文章と図の両方の分析をとおして、これらがライトの著作物や建築に与えた影響を示している。”(カバー袖紹介文)
目次:
序文(加山壽夫、ジョン・サージャント)
序章 ライトの作品と日本の伝統美術・建築の関連性
20世紀初頭以来のさまざまな議論
第1章 「ジャパニズム」とボストンの東洋研究者たち
19世紀の「ジャパニズム」と美術運動からの流れ、およびボストンを拠点とした東洋研究家(エドワード・モース、アーネスト・フェノロサ、アーサー・ダウ、岡倉覚三)とライトの個人的つながりから見た、ライトの日本美術・建築に対する理解
第2章 「日本住宅とその環境」―日本住宅の解析
エドワード・モースによる日本の中流階級住宅の詳細な解析が、ライトの新しいアメリカ住宅のコンセプトに与えた影響
第3章 鳳凰殿―南シカゴにおける寺院建築と受託建築の融合
1893年シカゴ・コロンビア万博の日本館が、初期プレーリーハウスに与えた影響
第4章 フェノロサと日本美術の「有機的」性質
アーネスト・フェノロサによる日本伝統美術の解析が、ライトのこの分野の理解に与えた影響
第5章 「コンポジション」―美的な線による、構成としての絵画・平面図・パターン
アーサー・ダウによるアーネスト・フェノロサの美術理論の図解化が、ライトのデザイン手法に与えた影響
第6章 浮世絵と、自然・人工・社会的形態の抽象化
浮世絵がライトの日本理解に果たした役割、またライトの提唱する「有機的」建築の実証例として、および建築思想・グラフィック的手法・職業的人脈の源としての浮世絵の役割
第7章 岡倉と東洋の社会的・美的理念
岡倉による日本の伝統美術、特に茶の湯の底流をなす社会的・美的理念の解釈がライトに与えた影響
第8章 日本訪問―江戸が得たものと与えたもの
ライトの日本滞在が、「有機的」芸術概念の展開と構成理論に与えた影響
第9章 発想源としての日本―日本建築と類似点
ライトの作品と日本建築の類似点の検証
第10章 確証としての日本―日本文化にみた普遍原理
ライトの、普遍的「有機的」理想の実例としての日本文化への理解
原注
索引
訳者あとがき