昭和46年　A５判　P270　函スレ多、ヤケ、角イタミ　本体背僅イタミ　見返し少ヤケ　裏遊び紙僅剥がし跡

文学者たちの恋愛に関するエピソードや騒動などについて解説する。

目次：
近代情炎誌（吉田精一）

森鴎外（秦行正）
　｛『舞姫』にみる太田豊太郎とエリスの疑問点／恋愛なき性欲・自己を語れなかった鴎外／系族の語った事実／『舞姫』の発表とエリスの来日／路頭の花・ エリス／『舞姫』をめぐる事実と虚構／自我の認識と家への屈服／赤松登志子との結婚と離婚／日本の精神風土と家族のエゴイズム／『舞姫』をめぐる残された問題点｝

尾崎紅葉（岡保生）
　｛毘沙門横町の小えんとの腐れ縁／風流隠事を現実生活にまで延長した野暮ったさ／名作『金色夜叉』と佐渡への旅／佐渡の芸妓小糸との交情／美妓お竹との白昼一歓／小糸との交渉と紅葉伝説／忘れえぬ日々となった佐渡小木での事実／小えんとの出会い／小えんこと村上まちとの交情／紅葉の死と小えんの晩年／『金色夜叉』のお静と小えん／見惚、気惚、底惚｝

巌谷小波（伊狩章）
　｛初恋・川田綾子との出会い／燃あがる小波の恋愛感情／文学に傾倒し硯友社に加入／綾子へのつのる恋情と作家志望／美男子小波の遊蕩／紅葉館での中村須磨子との浮名／須磨子の艶容／京都M亭の仲居H女との情事／大橋新太郎に囲われたお須磨と『金色夜叉』／綾子に純情をつくす小波／一方は一時の慰み・一方は百年の友／小波の綾子への求婚と川田家の拒絶／間貫一のモデルとなった巌谷小波｝

北村透谷（平岡敏夫）
　｛透谷における恋愛の記憶の再生産／自由民権運動と石坂ミナとの結婚／一枝の花を添えた趣・富井松子／透谷と富井松子とのプラトニック・ラブ／故郷・恋愛の記憶とその原質／婚約・結婚と富井松子の苦悩／オフェリアと富井松子のイメージ／富井松子の病床と透谷の思慕／『夜魂鏡』と狂恋・狂死／富井松子の死と東北旅行／透谷の自殺と富井松子のイメージ｝

樋口一葉（塚田満江）
　｛明治に生きた女性・樋口一葉 ／一葉にみる情炎の問題／作家一葉の登場／近代女流情炎史上に咲いた最初の一輪／風土からみた一葉の基調と源泉／好き死に処を得たい／『うらむらさき』と『われから』にみる女性の内奥／ついに燃えなかった天性の詩人｝

国木田独歩（坂本浩）
　｛悲恋の詩人・国木田独步／佐々城信子との出会い／深まりゆく交情／独歩の北海道行きと信子の監禁／わが恋愛は遂に勝ちたり／夢のような幽居生活の破鏡／浪漫主義から自然主義への移行｝

島崎藤村（伊東一夫）
　｛藤村における人格的な恋愛と情炎との問題／佐藤輔子との出会い／青春時代の愛と苦悩／輔子との恋愛の事実と証言／愛が生みだした悩みと哀れみの恋愛詩集『若菜集』／若き日の恋愛・信仰・芸術／人格的な恋愛から情炎に流されようとする藤村的人間性の真実／佐藤輔子を二重写しにした広瀬恒子とのむなしい情炎／星野天知との友情の亀裂と恒子との断絶／芸術の新泉としての愛の苦悩｝

田山花袋（小林一郎）
　｛花袋のめぐりあった恋愛・片思いの人々／薄命の長姉いつとその子あい／姪あいへの恋慕／あいとの交情を描いた『小桃源』／あいとの深い交情に踏み込んでゆく花袋／作品としての虚構化されてゆくあいの姿／事実とモデル問題／『蒲団』の岡田美知代と『百夜』の飯田代子｝

徳田秋声（榎本隆司）
　｛作家秋声の苦渋の時代／十年ぶりの再会と陥穽／職業としての宿業／秋声夫妻を悩ました事件／山田順子の上京／青春時代の淡いプラトニック・ラブ／妻への愛情の信頼／順子とのセンセーション／老境の迷妄と痴情関係／淫逸な文学少女の虚栄／生の燃焼と生の無常／自然主義文学の建て直し｝

岩野泡鳴（大久保典）
　｛結婚まで／竹腰幸のこと／めぐり逢い／『耽溺』と増田しも江／放浪／霊が勝つか肉が勝つか｝

伊藤左千夫（永塚功）
　｛真剣な恋は人間最大の芸術なり／恋は犠牲の交換なり／戸村ふじへの思慕とその告白の歌／岡村チカとの交渉／激しい感情を吐露した『我が命』／恋愛的下部構造と文学形成｝

与謝野晶子（翁久美）
　｛奔放な情熱の開放／旧派から新派へ、鉄南・雁月との交友／愛・観念から現実へ／高まりゆく愛／『みだれ髪』の結実｝

北原白秋（西本秋夫）
　｛出獄から『桐の花』の発刊までの憔悴と沈淪／俊子との恋愛事件と涙の苦悩／一人の女性を救はんとして遂に救ひ得ず／姦通事件の顛末｝

石川啄木（今井泰子）
　｛堀合節子との出会い／深い肉に根ざした恋の花／親の反対をおしきって結婚へ／波立つ胸のいかに温かなりしよ／宮崎郁雨の私信からみた事実／肉体の結びつきと新鮮な心の動き／早熟な才能の開花｝

高村光太郎（北川太一）
　｛女性観を支える原型となった母と姉／恋を恋する思春期の情趣／赤城山での千代とのめぐり会い／光太郎と葉舟と千代／パリで成長した光太郎／モナリザと称した娼妓・若太夫への憧憬／よか楼お梅との交情と光太郎のデカダンぶり／智恵子との真のふれあい／『智恵子抄』の芸術的結晶｝

斎藤茂吉（藤岡武雄）
　｛あはれひとつの息を息つぐ／妻てる子との悲傷事件と朋友の死没／師弟から男女の関係にうつる永井ふさ子との恋／恋愛の歌と書簡／孤独悲哀を記した「日記」と肉迫・独占を訴えた「書簡」／狼になりてねたましき咽笛を噛み切らむとき和まむ／悲劇の結末をとげた恋愛／人麿と茂吉の晩年｝

永井荷風（宮城達郎）
　｛恋愛と文芸と二つより外はなし／ドミ・モンドの娼婦イデスとの淫楽／薄命の芸妓富松との恋を恋した荷風／芸妓八重次との交情／斎藤ヨネとの結婚と八重次との関係／八童次との結婚と破鏡／『断腸亭日乗』にみる馴染を重ねた女列挙／忍辱の女性お歌との隠棲とその晩年｝

谷崎潤一郎（橋本芳一郎）
　情炎の資料とその信憑性／初恋と文学への志／福子との交情と謎／その真相とイメージ／石川千代子との結婚のいきさつ／潤一郎・春夫と夫人譲渡事件／古川丁未子との結婚・離婚／根津松子との幸福な結婚｝

有島武郎（福田準之輔）
　｛日本的な宣言とエロティシズム／本能的な愛と死の一体化／青春期の苦悩・森本厚吉との出会い／定山渓の出来事は男色的行為か自瀆行為か／性欲の苦闘と宗教感覚の相違／いま一つの世界　―ティルダとの愛／真摯な魂の苦悩と情熱の世界｝

久米正雄（田中保隆）
　｛文壇をにぎわした『破船』事件／久米・松岡の交友と第三次「新思潮」／漱石山房での木曜会／『破船』事件に見る人間関係／漱石の死をめぐる友情の亀裂／『破船』事件の発端／久米正雄求婚の顚末／筆子との関係が破談にされた久米／筆子・松岡の結婚と久米への同情／奥村艶子との結婚により幸せな生活を送る久米／久米、松岡の和解｝

葛西善蔵（大森澄蔵）
　｛結婚後もつづいた染谷ソメとの純朴な恋／技術と実生活との二律背反・『池の女』と染谷ソメ／『不能者』『不能者前後』『風聞』にみる別所温泉でのトラブル／一連の「おせい物」と浅見ハナ｝

嘉村磯多（太田静一）
　｛業報・小川チトセとの駈落ち／青春の愛憎・山下ユキヲとの初恋／藤本静子との結婚と女愛専有欲／愛欲の広海沈没と機の深信／宗教講話会と小川チトセとの出会い／深まりゆく愛欲・駈落の顛末／貪愛常なる人間実相｝

林芙美子（板垣直子）
　｛林芙美子文学の到達点／芙美子の情炎の背景と基礎／「無頼作家」についての検討の熱と性観の向上／芙美子の情炎誌の人々／最後の結婚生活に入る／情炎誌はなおつづく｝

太宰治（渡部芳紀）
　｛太宰治の女性観／淡い思い出におわった初恋／大人の恋・小山初代との出会い／心中未遂事件と罪意識／小山初代との同棲／青春をかけた最後の遊蕩／苦悶の時期・小山初代との離別／厳粛な決意・石原美知子との結婚／変貌の時期・作家としての回復／太田静子との交情／名作『斜陽』と太田静子の懐妊／燃えあがる山崎富栄の恋情／『人間失格』と山崎富栄との心中｝

田中英光（島田昭男）
　｛団々とした愛嬌者／『カチカチ山』の検討／女性憧憬と現実錯誤／「永遠の恋人」にたいする悲壮な信仰／『オリンポスの果実』と相良八重／深まりゆく相良八重への思慕／「永遠の恋人」とナルシシズム／現実世界での愛の破綻／「永遠の恋人」と性意識／愛の充足・山崎敬子とのめぐり会い｝