1994年初版 四六判 P330+索引P6 帯およびカバークスミ、背ヤケ 小口イタミ
“昭和という時代の表現者として特異な足跡をのこした長谷川兄弟。空間の、思想の、官能の《越境》を繰り返した彼等は何を欲望したのか、私たちは何を見失ったのだろうか?二十世紀日本文芸の地層に新たな回路をきりひらく書き下ろし評論。”(帯文)
「谷譲次」「林不忘」「牧逸馬」という三つの筆名で作家として活躍した長男・海太郎、『猫』などの作品を残した画家である次男・潾二郎、ロシア文学者で詩人の三男・濬、長男と同じく作家の四男・四郎。長谷川四兄弟の足跡を辿る。
目次:
第一章 世民・長谷川淑夫
{1 父と息子たち―長谷川淑夫・長谷川海太郎・長谷川潾二郎・長谷川濬・長谷川四郎/2 プレ長谷川淑夫の時代―地方分権と王道との往還/3 「長谷川淑夫」の誕生―〈新聞我〉と、無意識の危険思想/4 王道の果てに―世民・長谷川淑夫、戦時下の死}
第二章 長谷川海太郎
{1 一人三人以前の混沌―陸にあがるまでの海太郎/2 一九二四年 もう一組の一人三人 亜多羅諸児・迂名気迷子・田野郎の誕生―アナグラムの迷宮/3 排日アメリカをなめたおした〈めりけん・じゃっぷ〉―谷譲二登場/4 〈めりけん・じゃっぷ〉から「安重根」へ―一九三一年・アジアという憂鬱}
第三章 長谷川潾二郎
{1 小説化・地味井平造のまぶしい日々―昭和初年の都市的眩暈/2 画家・長谷川潾二郎―影を封印するまなざし/3 画家・長谷川潾二郎による小説家・地味井平造の抑圧―モダニズムの光源の眩暈と均等な光線の誘惑のあいだ}
第四章 長谷川濬
{1 長谷川濬・満州国で出発した文学者/2 長谷川濬、マクシム・ニコライウイチを名のる/3 病巣としての海/病巣としての満州}
第五章 長谷川四郎
{1 シベリアから/シベリアを遠く離れて―五五年体制下の長谷川四郎/2 「シベリア物語」「鶴」の成り立ち―ヴァリアントとしての〈代表作〉/3 二十世紀極東の文学者・長谷川四郎―似君埋少不埋多(君は埋められたるに似たる少なく、埋められざる多し)}
略年譜
昭和的―〈めりけんじゃっぷ〉から満州文学まで
索引