1994年初版 A5判 P351 カバー背ヤケ大、裏側袖シール剥がし跡大
目次:
序章 あるホテルの終熄
メトロポオルの燈が消えた {佃島の向こう岸にあるホテル-ホテルは新しい国の首都の燈《メトロポール》-“商業都市大阪”の看板の「燈」も消えた-新大阪ホテルをめぐる東京と大阪の対立-東西の合作となった新大阪ホテル}
マッカーサーの車に乗って {新たな局面に対応すべく機敏に行動するホテルマン-ホテルは「租界」になるべき-宿命を背負っている}
第1章 居留地を生きた男
築地のホテルは「山師の企て」だったか {黒船にせきたてられて世の中は変わりつつあった-太平洋上のアーチは一〇〇年かかって完成した-ホテル館の設計と異人技術者の仕事ぶり-喜助は危ない橋を渡っていた-初代と二代と横浜と}
足もホテルに眠る外じん {一〇〇人の客を泊めるホテル-ホテル館の中身-玄関はどこにあったか-「日本人は風が大好きなんだ!」}
もしも慶喜が新しい国の支配者だったら {三部作-ブラックの感想をめぐって-ホテル、ハウス、そしてバンク}
横浜はたそがれどころか夜明けだった {居留地横浜の「共和国」的内容-喜助の想像力による海賊ぶり-宮ノ下にリゾート・ホテルが生まれた事情}
第2章 カイゼル髭に羽織袴の衣装論
そして、その代りに宮ノ下に来られよ {奈良屋と富士屋の競争は厳しかった-チェンバレンの日本人観-髭の正造の活躍が始まる}
ブロードウェイを和服で歩く {ホテルは慈善事業か、金儲けのゲームか-花御殿と富士ビュー・ホテル-日本趣味への非難の源泉}
意匠の〈対他性〉の問題 {地球が小さくなって意匠の対他姓がめばえる-和風とクラシック-下田菊太郎という建築家のこと}
異邦人たちの日本趣味 {パスポートを紛失すれば-議院建築をめぐる攻防}
第3章 山師の企てから企業家の計画へ
海のむこうで修行してきた男たち {帝国ホテルの解体で解体されたもうひとつのもの-ホテルマンとしての手づくりの過程-「帝都」にまともなホテルがほしかった-渡辺譲のドイツ留学}
明治中頃の日比谷、丸之内を散歩してみる {さびしい丸之内、さわがしい霞ヶ関-雲の上と雲を凌ぐ建築の違い-大倉喜八郎と帝国ホテル}
大日本ホテル業同盟会の結成 {全国のホテル業者の横の連絡-いくつかの古いホテルの略歴-送られた書状と、まとめられた趣意書}
鉄道の国有化とステーション・ホテルの建設案 {同盟会はすぐにつぶれてしまった-外国人旅行者のもたらす国家経済への利益について-ステーション・ホテルのアイディア-農商務省の建物をホテルへ改造せよ-日本ホテル組合から日本ホテル協会へ}
築地采女町のホテルで夢を見た旅人たち {築地精養軒ホテルの新館完成とその設計者-美しい街に憑かれた人たちの物語-時を超えて「山師」は交錯する}
第4章 ヤマトホテルの虚と実
ホテルは植民地にむけて進出する {マンシュウへ-満鉄のホテルが次々と建つ-各地のヤマトホテル}
満州建築界のざわめき {忘れられた植民地の建築家たち-大連へ大移動-〈世界史〉の眠りをまもるもの-中国風の加味}
星ヶ浦に降る星は {大山鳴動兎二匹とその後に飛び出したもの-ジャーマン・カッテージ風の本館}
日韓併合の露骨さと京城朝鮮ホテル {明治政府は日韓併合を強引におしすすめた-京城朝鮮ホテルについて}
第5章 丸の内の形成と帝国のホテルの新生
松井貴太郎が東京停車場の出現に怒ったわけ {東京停車場の出現の意味を問う-「錯まられたる東京停車場」という論説-皇城を背にできない駅舎のゆがみ-ステーション・ホテルを置くのも間違っている}
ジャパン・ホテル計画に見られる大正のモダニズム {ジャパン・ツーリスト・ビューローの発足と活動-海外からの観光客の急増と深刻なホテル不足-大正を象徴するジャパン・ホテルも“幻のホテル”となった”
林愛作のダンディズム {〈電気ホテル〉のメイン・スウィッチを切れ!-勲章と幸運-林愛作という男の周辺}
継子あつかいのなかでうぶ声をあげたホテル館 {ライトが日本へやってきた-真面目なレーモンドの尾困惑-うまれてはならなかった子として}
帝国ホテルがたたえていたある種の陰鬱さの原因 {サソリの形象があちこちにある、という指摘-悲嘆の城砦としてのホテル-大谷石とあふれる装飾の意味}
屋根に鳳凰堂のシルエット {“ジャポニカ”の帝国ホテル案-神戸のトーア・ホテルのことなど-ホテル館の歴史的運命}
あとがき