1984年初版 四六判 P378+索引P8 函少汚れ、角僅イタミ 本体元パラ破れ(端一部欠損)、折れ跡
監修:宮本常一
マレーシアのサバの北端、クダット半島の丘陵地帯に住むルングス族の生活、風土、儀礼などについて紹介する。
目次:
刊行の辞(宮本常一)
はじめに
目次
第一章 環境と歴史
1 サバの風土と人びと {サバの自然/人口と分布/民族による住み分け/開発と足かせ}
2 ルングス族をめぐる歴史 {ルングス族の祖先/中国との交渉/海洋民との交流/イギリスの支配/中国人の移住と日本軍/独立後}
3 ルングス族の土地 {ルングス族の土地/村とロングハウス/焼畑による暮らし}
第二章 焼畑をめぐる一年
1 村の日々 {村の朝/ロングハウスの生活}
2 タガッドの伐採 {山行きの支度/焼畑を拓く土地/作物の生みだす権利/悪霊からの土地を借りる/隣人との協定/伐採/四種類の焼畑}
3 ルングス族の暦 {山に誰もいない日/月による暦/農耕と良い日悪い日/季節と暦/星と暦}
4 災を告げる兆し {大蛇の肉/コピジョ/豚のくしゃみ}
5 川漁 {毒流し/その他の川漁/海水魚への依存}
6 機織り {がらんとした村/衣服と装飾/糸とりと染色/機織り/照りつける陽}
7 山焼き {乾期の終り/集まった男たち/火入れ/火の悪霊除けの呪い/後片づけと境界づくり}
8 種播き {はじめて種を播く日/トウモロコシを播く/稲の共同播種/稲の神を迎える/播種棒を使う種播き}
9 猪垣 {猪垣づくり/鳥獣におびやかされる畑/鳥獣への依存}
10 稲を守るさまざまな儀礼 {稲の成長祈願の儀礼/稲の神を畑に呼びもどす儀礼/モノグリ・タナルの儀礼/雨乞いの儀礼}
11 草取り {雑草/草取りの作業/結い/賃雇いの出現}
12 トウモロコシの稔るころ {トウモロコシの収穫と見張り/貯蔵兼見張り小屋/鳥追い/鳥獣退散の儀礼/稲の神の風車}
13 稲刈り {稲の穂の熟れるころ/初穂刈りの儀礼/新米を食べる/『稲の神が犬をつかわして稲を与えた神話』/『双子の兄妹が女に農耕を教わった神話』/クルル/稲刈り/弁当の米/賃雇いの手伝い/イモとサトウキビと野菜}
14 刈り入れと脱穀 {脱穀開始の儀礼と中間脱穀/脱穀/稲をもらい受ける儀礼/『唱えごと』/貯蔵/豊作の呪い/ルングス族の歌/稲の神を送る儀礼/稲の調整/コメの名称}
15 タムー(市) {農閑期の土曜日の朝/異種族の集い交わる所/種族間の分担と相互依存/市から町へ}
16 山の中の丸木舟 {丸木舟をつくる/仕上げと進水/ルングス族と海}
17 村の鍛冶屋と鉄の道具 {鍛冶仕事の季節/川原の仕事場/ルングス族の鉄の道具/『猿とオランウータンと海洋民から生活の技術を教わった話』/鍛冶屋部落?}
第三章 ルングス族の農耕
1 新時代の芽ぶき {広がるヤシ園/新しい家畜/水田の出作り}
2 焼畑の現状 {慢性的な米不足/焼畑の面積/焼畑の耕作周期/休耕期間とチガヤ/自転車操業の伐採/果てしない除草}
3 農事暦 {四つの焼畑の組合せ/乾期前記(三月〜四月)/小雨期(五月上・中旬)/乾期後期(五月下旬〜八月)/雨期(九月〜二月)}
4 集合耕作とその崩壊 {サガラニとオブオブ/ウジュウ(共同播種)/サガラニの解体}
5 源流への手探り {四つの畑の古い姿/稲の神バンバラゾン/『火傷を負ったバンバラゾンの話』/一色ではない農耕儀礼/根栽農耕作物で埋まった畑/作物と農具と性別の関係/ゴプーの変貌/除草技術の制約/基盤に埋もれた根栽農耕}
第四章 村の社会生活
1 濁酒づくり {酒宴の季節/餅麹をつくる/餅麹の乾燥/もろみとしこみ/清酒との比較}
2 結婚まで {結婚の申し込み/プライバシー/花嫁の条件と贈り物/結婚の相手/近親婚のタブー/『大洪水で若者と娘が生き残った話』/通婚の範囲/年齢による区切りのない社会/首狩りの一つの意味/『マンサバンの首の話』/性は恥で罪}
3 結婚式とその意味 {一日目=花婿の行列/花嫁の家で/二日目=供犠と払い/花婿の家へ/三日目=両家間の往復/四日目=不眠不休の式の終り/結婚も姦通も熱いこと/限りある豊穣の配分/水あらそいとしての首狩り}
4 家族と村と子供 {一年は妻方に同居/ロングハウスの間取り/成員間のつながり/引っ越し魔/制約の少ない社会/ロングハウスを成立させたもの/悪霊に対してのまとまり/離婚/出産と育児/しつけ/家族構成/相続}
第五章 目に見えぬものたちとの共存
1 死とけがれ {子供の死/葬いと忌み/生命と魂/七つの魂のゆくえ/『ポヅスフット』/けがれ/熱いことと寒いこと}
2 供犠と豊穣への祈り {死者の霊をなぐさめるルムヴァスの儀礼/死霊を送りかえす墓まいり/幸運と豊作を神に願うマガハウの儀礼/宝物をねぎらうマガラハ・ド・ダプーの儀礼/ツモロン}
3 モギヌム {災厄退散の儀礼/モギヌムの準備/儀礼をする者/家族神ルソッドに儀礼の始まりを告げる歌/『バイン』/『モンキヨタン』/『スリンギ』/『ガンティ』/まず豚をつかまえる/精霊への祈り/悪霊への最初の供犠/悪霊を追い出す/悪霊たちを送る川辺の供犠/ルソッドへの供犠/コピアガマンの準備/『モディティリス』/ルソッドへの祈り/新たな悪霊たちへの供犠/精霊と資料との応酬/精霊への供犠/ルソッドたちへの供犠/死霊の追放/しずめの儀礼/なおらいの踊り/祈祷師と助手への謝礼/しめくくりの儀礼とタブー}
4 ルングス族の宗教的世界 {儀礼の基本構造/いけにえとしての豚と鶏/いけにえとしての人の命/精霊たちと悪霊たち/ルングス族の宇宙と住人/霊たちの性格/ツモロン・モギヌムを行なう場合/ルソッドという精霊/ルソッドと囲炉裏/祈祷師}
第六章 変わりゆく村
1 変化の連鎖反応 {押しよせる外界/平等で衣食足りていた社会/はずされた箍/連鎖反応への拍車}
2 学校教育とマレー語 {マトンゴン小学校/生徒たちと先生たち/義務教育の普及/教育の男女差の背景/マレー語でつながる外界}
3 耕すべき土地の変質 {土地所有権の発生/ヤシ園の拡大とともに/古いルールとの使い分け/水田の所有権/土地「相続」の発生/生まれはじめた生産手段の格差}
4 均一な社会への訣別 {適応力生む階層分化/ヤシ園の力/焼畑の将来/階層と生業の分化/危険を乗りこえる潜在能力}
おわりに
地図/参考文献/索引