1985年4刷 Ａ５判 P292 カバー上部僅イタミ、少背ヤケ 遊び紙少ラベル剥がし跡
“一見いかにも荒唐無稽、でたらめだらけであるかのごとき小説『西遊記』は、じつは、世界を解釈しようというメタフィジックな欲求にとりつかれた人びとがでっちあげた、壮大なテクストであり、しかも、タオと煉丹術のシンボリズムと隠語《クリプトロジー》に満ち満ちている。”（表紙紹介文）
目次：
�機‖晃膓�の誕生と再生
1 序にかえて
2 子供を生む石―孫悟空の再生 ｛花山頂にて／ペトラ・ゲニトリクス／石から生まれた禹と啓／石と両性具有／風と生殖／鍛冶師と孫悟空／再生のための母胎／壺中天／孫悟空の再生／モチーフの転換／『水滸伝』の場合／語りもののまくら／物語のリアリティ｝
3 龍からの変身―孫悟空のもうひとつの誕生 ｛孫悟空不在の時間／江流和尚説話／魏徴に斬られた龍／弱い龍王たち／龍から龍王へ／東海火龍太子／龍馬の原型／龍の背筋／龍の神通力と孫悟空／河童駒引と孫悟空｝
4 旅人の従者たち―桃太郎から『西遊記』まで ｛桃太郎の従者たち／桃太郎と五行思想／イヌ・サル・キジの役割分担／孫悟空たちの役割分担／十二支と方位／龍馬の役割／龍の代理者／沙悟浄の姿の変遷／十二支と沙悟浄／ヨウスコウワニ／役割分担の論理性｝
�供 慇祥卦�』の隠秘学《オカルティズム》
1 五行思想と『西遊記』―挿入詩の謎 ｛『西遊記』の挿入詩／五行思想入門／八卦と方位／八卦と魔方陣／十干と五行／孫悟空は金、猪八戒は木／孫悟空は火、猪八戒は水／二土とはなにか／刀圭と黄婆｝
2 鉛と水銀の物語（一）―煉丹術の秘宝 ｛西と東の錬金術／不老不死の薬／『抱朴子』煉丹実験室／鉛と水銀／錬金術のプリマ・マテリア／『参同契』と煉丹シンボリズム／陰陽のシンボル坎離／鉛と水銀から鉛汞へ／鉛は白虎、汞は青龍／鉛汞イメージの自己増殖／煉丹術シンボルの隠秘化｝
3 鉛と水銀の物語（二）―かくれたるポルノグラフィ ｛メルクリウスの龍／錬金術と性的シンボリズム／内丹と外丹／『還源篇』の性的シンボリズム／なかだち婆ァの黄婆／黄婆と王婆／黄婆と土／心猿意馬／隠語の効用／烏と兎のシンボリズム／亀と蛇のシンボリズム／第八十一首／かくれたるポルノグラフィ／Ｒ．Ｈ．ファン・フーリック／中国性典の技術主義／性典の文体と煉丹術の隠語｝
4 孫悟空と金と火―主人公たちの煉丹術的解釈 ｛孫悟空たちと五行の対応／猪八戒と木母／孫悟空の火眼金晴／『西遊記』中の鉛汞詩／二土の理論的根拠／ふたたび刀圭と黄婆／五行と数字／金は夫、木は妻／五行と五臓／隠語の落ちこぼれ／金蝉子の道教的意味／『西遊記』におけるシンボリズム操作の論理性／煉丹術の秘教化と世界解釈｝
5 聖教曼荼羅―『西遊記』における数字の神秘 ｛時間の単位／三十六と七十二など／孫悟空の寿命／八十一難と十万八千里／仏教的数字／百八か一百八か／算木数字／桁を無視した足し算／ピュタゴラス派の数字観／九において究まる／「九九」表の神秘／聖数一二九、六〇〇／プラトニック・ナンバー／古代の一元四六一七年／五〇四八の秘密／八十一難の道教的意味／でたらめのなかの論理｝
�掘 慇祥卦�』の社会学
1 星の化身たち―中国古代の夜空 ｛天界の官僚制度／中国人の星座観測／五星と五行／木星と星占い／太白長庚星／紫微垣／移りゆく北極星／帝軍としての北斗七星／道教における北斗九星／北斗を踏む／北斗踏みの儀礼／太微垣と天市垣／二十八宿入門／二十八宿の動物たち／十二支と三十六禽／二十八宿と軍隊の布陣／二十八宿の軍旗／九陽星と南極寿星／西方の星座と神話のドラマ／中国の星座と地上の論理｝
2 神々のヒエラルヒー―道教と民間信仰 ｛老子から道教信仰間で／道教の最高神は？／玉帝信仰／元始天尊と三清／現代における道教儀礼／たてまえの最高神とほんねの最高神／玉帝と釈迦の力関係／道・仏の混淆／四天王と道教神たち／王母娘々と女神たち／東方朔と巨霊神／神々のヒエラルヒーとその論理｝
3 哪吒太子物語―孫悟空の分身 ｛『ナタちゃんの竜たいじ』／『封神演義』の哪吒／哪吒太子と孫悟空／モチーフのくりかえし／毘沙門天から李天王まで／李天王の太子たち／肉塊からの出生／哪吒の自殺と再生／三太子の秘密／二郎と四郎｝
4 妖怪仮面劇―戯曲の時代と『西遊記』 ｛『西遊記』妖怪学入門／『西遊記』動物園／『本草綱目』の動物認識／人間の仮面をつけた龍／人面獣身と獣面人身／中国における演劇の発生／約束された空間の論理／明代戯曲の過剰性／仮面による変身／植物をめぐる想像力／『西遊記』ふうのサルの分類学／妖怪仮面劇／孫悟空はなぜサルなのか／孫悟空の行動の遠心性と仮面劇｝
�検 慇祥卦�』の解体学ノオト
1 呉承恩と邱処機―作者をめぐる誤解 ｛錯覚のなかの呉承恩作者説「二郎捜山図歌」／呉承恩の詩文／戯曲作家の可能性？／通説には従わず／今日に生きる邱処機作者説｝
2 『西遊記』の周辺―その成立前後 ｛『水滸伝』のなかの『西遊記』／『金瓶梅』のなかの『西遊記』／『西遊記』の周辺の小説戯曲／章回小説の回目／戯曲の正名と題目／則目から回目へ／『釈尼伝』と『釈厄伝』／ダイジェストとしての楊至和本？／仏教語「釈尼」／道教語「釈厄」｝
3 おとなしい斉天大聖―解体の手がかり ｛『南遊記』と『北遊記』／『封神演義』の作者／元気のない斉天大聖／斉天大聖の兄弟姉妹／二郎神の大活躍／小説のなかの猴と戯曲のなかの猿／孫悟空は天下無敵か／京劇におけるシナリオ改変／国家権力と孫悟空｝
あとがき
ひとりぼっちのりんごのき こどものとも289号 作：三原佐知子 画：なかのひろたか 福音館書店