平成28年 A4判 P118
「平成27年度 変容の危機にある無形の民俗文化財の記録作成の推進事業」報告書。
熊本県の氷川町早尾地区に伝わる男性成人の儀礼で、現在は消防団に入る際の儀式として残っている「スッキョン行事」を記録。
前半部では氷川町および早尾地区の概観(地理・歴史・産業・民俗など)を紹介し、後半部でスッキョン行事についての調査・記録を報告する。
“早尾のスッキョン行事とは、早尾地区で年頭に行われる初会合において、早尾地区の青年男性が重量のある男性器を表現した模型を持ち上げることにより、一人前の大人として地域から認めてもらうという通過儀礼行事である。
〈略〉
行事には早尾地区の長老や村役人が参加し、集落から選ばれたカンヌシ(神主)が行事を取り仕切る。早尾地区の住民が見守る中、行事の主役がオシャクシサマと呼ぶ神様に対して口上を述べ上げる。口上ではオシャクシサマへの挨拶を行ったあと、御神体の男性器の模型やお杓子、御飯などの供え物を載せたソワダイ と呼ぶ三方を持ち上げる。…”(本書第三章第一節より)
目次:
凡例
第一章 氷川町の概観と早尾に暮らす人々
第一節 氷川町の概観
一 地理的環境と交通/二 歴史と文化/三 産業/四 観光/五 民俗文化
第二節 早尾地区の概観
一 自然環境と交通/二 生産・生業/三 歴史と文化財/四 早尾地区づくりチューリップ祭り
第三節 早尾の祭りと民俗行事・民俗芸能
一 早尾のドラ/二 早尾の棒術/三 地蔵祭り {(一)昔の地蔵祭り (二)現在の地蔵祭り (三) 宮原地区の地蔵祭り}/四 どんどや/五 モグラウチ/六 サナボリ/七 盆踊
第四節 集落のお堂と神社の祭り
一 今寺(南区) ―今寺観音堂・大神宮/二 山口(南区)―薬師堂/三 坊屋敷(南区)―早尾坊屋敷観音堂/四 油谷(南区)―管原(菅原)天満宮/五 川久保(南区)―川久保薬師堂/六 今宮(北区)―早尾今宮観音堂/七 服巻田(北区)——服巻田神社
第二章 社会生活
第一節 早尾の自治会
一 早尾村から宮原町、そして氷川町へ/二 氷川町の誕生と自治組織「早尾区」
第二節 早尾の青年団
第三節 早尾の消防団
第四節 一人星とムラ入り習俗
第三章 早尾のスッキョン行事の概要と変遷
第一節 早尾のスッキョン行事の概要
第二節 早尾のスッキョン行事の変遷
一 年頭の会合/二 早尾のスッキョン行事の復活と各地の公演/三 早尾のスッキョン行事に関する変遷
第三節 神主役と経験者の伝承
一 神主役/二 経験者の伝承/三 観客
第四章 早尾のスッキョン行事
第一節 早尾のスッキョン行事に用いる用具
一 スッキョンの儀式に用いる用具{(一)スッキョン(○大小二個のザボン ○棕櫚の表皮)(二)杓子 (三)徳利 (四)太巻きの注連縄 (五)御幣を付けた榊 (六)供え物 (七)ソワダイ}/二 儀式の衣装と用具の保管{(一)神主役の衣装 (二)用具の保管}
第二節 早尾のスッキョン行事の準備
一 前日までの準備{(一)注連縄作り (二)スッキョンを重くする (三)榊・棕櫚の表皮・ザボン}/二 当日の準備
第三節 早尾のスッキョン行事の現状
一 スッキョンの会場と開始前の様子/二 神主による模範演技{(一)神主の登場 (二)模範演技}/三 入団者一人目の儀式{(一)儀式の流れ (二)歌の披露 (三) 儀式の終了}/四 入団者二人目の儀式{(一)儀式の流れ (二)歌の披露 (三)儀式の終了
「早尾のスッキョン行事」の継承について
参考文献
映像資料
協力者・協力機関等
執筆者