1991年2刷 四六判 P238 カバー少スレ、少キズ、端少イタミ 小口僅汚れ、僅イタミ 裏遊び紙剥がし跡
“…だから、いわゆる詩的技巧を駆使した表現は科学の目からみれば「うそ」であり、「うそ」でないまでも一種のトリックであり、そこには誇張があり逆説があるということになろう。だがロゴスの世界ではなくマゴスの世界ではそのような擬似叙述でもって真実がより真実に伝達されることになるのだ。
…〈略〉…
実生活においても「うそ」がすべて悪いとはけっしていえぬ。よいうそ、楽しいうそがあるはずだし、また世の中にはそれが必要だ。誇張法でも事実を明確に示すための誇張であれば、事実 をそのままいうよりはより事実を真実にしかも楽しく伝えるだろう。それを移入する文学作品についても同じことがいえるのではあるまいか。
本書はこのような立場に立って詩の中での技巧がいかに詩の内容とか心象を十二分に示しているかを考察しようとしたものである。…”(本書巻頭「はじめに」より)
目次:
はしがき
一 序 ―うそと真実
二 聴覚に訴えるもの
(イ)リズム
(ロ)韻
(ハ)一つの綜合 ―ソネットから出発して
三 イメージの効用
番外の章(一) 韻律とイメージとライトヴァース
四 隠喩表現の諸相
(イ)隠喩の手法
(ロ)象徴と象徴詩
(ハ)コンシート ―単位と全体
番外の章(二) ダンの理想の女性像と「恍惚」
五 表層と深層
六 閉ざされた庭と開いた自然
七 詩的技術の展開 ―T・S・エリオットの場合
あとがき