平成2年 四六判 P214 帯・プラカバー付 紙カバー上端時代シミ
装幀:政田岑生
“現代歌人一〇〇人の代表作・知られざる秀作を選びぬき 塚本邦雄の定評ある名解説を献ずる最も劃期的なアンソロジー”(帯文)
昭和60年1月から61年12月まで徳島新聞に連載した現代短歌鑑賞文に加筆を加える。
目次:
佐佐木幸綱 梅の木に……/浜田到 硝子街に……/安永蕗子 失楽の日々といはねど……/滝沢亘 血を喀きて……/安立スハル 晩年の父の絵を……/板宮清治 少女期の妻たとふれば……/山中智恵子 かすみ網……/寺山修司 知恵のみが……/河野裕子 すれちがひし木下闇にて……/岡井隆 火の額を硝子にあてて/石川不二子 紅梅が見たしと思ふ……/島田修二 子が問へる死にし金魚の……/馬場あき子 さくら花幾春かけて……/高野公彦 聖痕を持たざる我に……/柏原千惠子 銀の匙はつかに塩を……/相良宏 花あんず紅きかたへの……/春日井建 肩厚きを母に言ふべし……/福島泰樹 あわれ初夏の雪渓よりも……/三枝浩樹 ゆうやみに救われている……/山下富美 眩みくるなべては愛にあらずして……/河野愛子 まなぶたを閉ちてゐるとき……/平井弘 送棺に蹤きゆくみじかき列動き……/中城ふみ子 子が忘れゆきしピストル……/村木道彦 めをほそめみるものなべて……/新城貞夫 太陽の光を病みしわれのため……/石井辰彦 みづからは是れ誰ならむ……/紀野恵 そは晩夏……/塘健 木賊刈る……/浜田康敬 職探すことに疲れて……/真鍋美恵子 劇薬をはかりし秤と……/伊藤一彦 磁石もちあそびに行ける子の……/松田さえ子 悲しみをもちて……/上田三四二 姦淫を今日十たびせり……/井辻朱美 秋の街の……/小野茂樹 あせるごと友は娶き……/葛原妙子 雉の鋭ごゑおこり……/田谷鋭 思ほえず柔和なるもの……/石田比呂志 くれないの林檎を……/松平盟子 塩のごとき浄き銀河よ……/江畑實 下宿までいだく袋の底にして……/富小路禎子 殼うすき卵かかえて……/大野誠夫 絶望に生きしアントン・チエホフの……/吉野 秀雄 杉群に昼のかなかな……/服部直人 雑沓に脛いでて……/杉山隆 地震太く轟き過ぎし夜半にして……/高安国世 昨夜妻の泣きゐしことも……/小中英之 小海線左右の残雪ここすぎて……/武下奈々子 かぐはしき怒りあらむや……/鐸木孝 息づきて……/釈迢空 基督の……/成瀬有 藍くらき手の静脈を……/横尾昭男 深草の碧のたまご……/永田和宏 紅葉一葉はさみて……/佐藤通雅 ふきのたう……/森岡貞香 流弾のごとくしわれが……/鈴木幸輔 寒き日の巷を行けり/清原日出夫 若者よ……/栗木京子 出逢ひしは如月の頃……/東博 二月に雪見ぬことのさびさよ……/中野菊夫 さくらの苗木買へといふ子よ……/遠山光栄 雪をうけをりつつ……/山本 友一 金策のための夜歩き……/山下陸奥 畳の上に……/千代国一 口紅を今宵ひく妻……/大塚陽子 今度生るるときは燕……/築地正子 ひと文字の……/志垣澄幸 為すことる為さざることも……/高比良みどり 一谷のかへで若葉は……/中山明 ある いは愛の詞かしれず……/石川一成 桜桃の色に……/吉岡生夫 きみよそのみどりご抱きて……/雨宮雅子 むらさきの土耳古桔梗を……/柏木茂 月光に……/篠弘 洗はれしつぶら枇杷の実……/滝耕作 安息というは……/樋口覚 短夜は……/瀕戸内艶 諍ひしことみな虚し……/川口常孝 わが死なんときの来たらば……/片山貞美 方向を逆ななる住居表示にて……/鷲尾酵一 しづかなる寝息に……/下村道子 さかさまに吊られて乾く月桂樹の……/清水房雄 夕庭に……/吉野昌夫 浪費を知らざる母の……/我妻泰 性のなき天使の尻など……/井上みつゑ 一群の萩やはらかし……/花山多佳子 ひとふさの葡萄を食みて……/高嶋健一 君の少年たりしは昔……/鵜飼康東 はるかなる星にも……/安森敏隆 ここすぎて……/黒田淑子 わが額に月の光の……/都筑正史 「おふたりの輝く未来に……/松坂弘 口濡らし果実食べつつ……/高尾栄一 紀の国の文左……/時田則雄 〈われ〉〈われら〉いづれにしても……/笹野儀一 胸中のしぶくが如き悔しさに……/高瀬一誌 真昼……/黒松正一郎 鎌倉に頼朝死すと……/武川忠一 子のわれに誰ぞと問いて……/苑翠子 死せむ日の瞼に触るる……