1998年 A5判 ソフトカバー P171 カバー裏僅イタミ
“…世紀末独特のデカダンスとエロスと憂愁と、そしてある意味では忌まわしさの香りを養分としながら、かくも美しくかくも妖しい世界を描出し続けた画家や詩人たちは、何を見ていたのだろうか。〈略〉
本書は私と同じように象徴主義の魅力の虜となった読者たちに、あるいはこれからそうなるはずの読者たちに、不確かながら私の手中に収まったその糸を提示したつもりである。簡単に言えば理性信仰、合理主義、物質主義、世俗主義に対する非理性、神秘主義、精神的貴族主義である。まったく否定的概念のように思われるかもしれないが、過度に発達した理性信仰等が否定的概念となるのもまた真である。つまり両者はモダニズムというコインの表裏の関係にあり、別の比喩を使用するならばモダニズムはヤヌスの双面であるとも言える。〈略〉
モダニズムが続く限り象徴主義的精神は意義を持ち続ける。 私は本書を書くに当たり、神秘主義との関係、ジョルジュ・バタイユが言うところの理性に対する暴力としてのエロティシズムとの関係について論じたほか、簡単にだが20世紀における象徴主義的精神を持つ美術について論じたのはこうした意図からである。…”(本書巻頭「はしがき」より)
クノップフ、ルドン、クリムト、モロー、ホドラー、ベックリン、クビーン、トーロップ、ムンク、クリムト……といった画家たちの作品を例にあげつつ、象徴主義芸術の登場した背景や、しばしば提示される幾つかのイメージ・テーマについて解説。
適宜モノクロ図版を付す。
目次:
ロ絵
はしがき
【第I部 象徴主義 ―モダニズムへの警鐘】
1 ブルジョワの時代 ―19世紀後半の昼の精神
1 第三共和制成立までの歴史
2 ブルジョワの時代
3 昼の精神としての印象主義
2 フランスにおける1886年の象徴的な意味
3 失楽園としての象徴主義
4 メランコリー
5 彼岸の世界への憧慨と絶望
6 死
7 美としてのエロティシズム
8 宿命の女
9 神秘主義 ―ペラダンと薔薇十字、錬金術など
主要参考文献