2008年 新書判 P254 帯付 カバー背上端僅イタミ ページ僅シミ
“二〇〇七年七月、画期的な絵巻「百鬼ノ図」が発見される。この新発見の絵巻の登場によって、“謎”だらけといわれてきた百鬼夜行絵巻のミステリーが一気に解け、これまでの定説は完全にくつがえることになったのである。
著者は、国内外にある百鬼夜行絵巻の伝本六十余の画像をすべて収集、それらの詳細な分析により、絵巻の成立と系譜の全容の解明をはたす。この発見と研究のプロセスを収録した本書は、妖怪研究第一人者による、百鬼夜行絵巻研究の決定版である。
本書初公開の「百鬼ノ図」をはじめ、初紹介の伝本多数をカラーで掲載。”(カバー袖紹介文)
目次:
「百鬼ノ図」(国際日本文化研究センター蔵)
はじめに
「百鬼夜行絵巻」と「妖怪絵巻」/混乱し複雑化する諸伝本/「百鬼ノ図との衝撃的な出会い/全体の三分の一が黒雲のシーン
第一章 すべては日文研本「百鬼ノ図」から始まった!
(1)「百鬼ノ図」と中世 {祖本は室町時代にさかのぼる可能性/中世的な絵巻がもう一つ―京都市立芸術大学蔵「百鬼夜行絵巻」/歴史を書き換える新発見}
(2)次々にわかってきたこと {もう一つの関連絵巻での発見―大倉集古館蔵「百鬼夜行図」/「模本」祖本」「原本」とは/中世的性格を物語る資料―東京国立博物館蔵「百鬼夜行図(異本)」/左右を反転させてみると}
第二章 「謎」だらけの百鬼夜行絵巻
(1)「謎解き」の歴史 {ミッシングリングを求めて/幕末・明治の研究から―九本の伝本/近衛家の絵巻のゆくえ/詞書をもつ百鬼夜行絵巻―国立国会図書館蔵「百鬼夜行絵巻(す本)」/そのほかの八本}
(2)本格的な「謎解き」 {近年の研究―二つの流れ/「謎解き」の始まり―小松茂美氏の研究/大胆な仮説を展開―田中貴子氏の研究/さまざまな問題を提起―小峯和明氏の研究}
第三章 百鬼夜行絵巻の全諸本が分類できる
(1)四つの系統がある {分類基準の四作品―真珠庵本、日文研本、京都市芸大本、兵庫県歴博本/数多い真珠庵本系統の模本/真珠庵本系統以外の模本群}
(2)組み合わせの着眼点 {四つの折衷型/頭が烏帽子か蛸か/ラストが火の玉か黒雲か/土佐行秀と化物尽し系の妖怪/そのほかのタイプ/真珠庵本の位置づけの修正/図柄検討の重心を移す}
第四章 妖怪イメージ誕生の秘密
(1)擬人化と妖怪 {妖怪の三つのカテゴリー/動植物の擬人化―「鳥獣人物戯画」との類似/魚介類の擬人化―「俵藤太絵巻」との類似/中国絵画における擬人化/器物の妖怪―「不動利益縁起絵巻」/角だらいの妖怪―「融通念仏縁起絵巻」/夜叉の四天王との類似}
(2)戯画から妖怪へ {「妖怪」とは何なのか?/擬人化と妖怪化/器物の獣化・鬼化―「付喪神絵巻」/動物・器物が人に化ける―「化物草子」/古い器物たちの復讐の物語/動物・器物の発心と成仏/並存する異界と人間世界―「是害坊絵巻」/妖怪絵巻としての「調度歌合」}
(3)妖怪の出現を描く {夜のなかの闇/怨霊出現、一天にわかにかき曇る/「羅生門」の鬼出現の描写/鮮烈な印象の黒雲描写/中国絵画からの影響}
おわりに {系統樹の書き換えと中世制作の祖本/「擬人化」の問題と物語の幻想化、妖怪化/「戯画」と「妖怪画」、擬人化と獣化・鬼化/妖怪物語絵巻と妖怪図鑑化}
あとがき
参考・引用文献
百鬼夜行絵巻分類別所蔵元リスト
図版協力