昭和60年 四六判 P428 カバースレ、端少イタミ 遊び紙僅剥がし跡 扉ページ上端僅濡れシミ
“…人間は、祖先が考え、行ってきた諸々の思想や生活を有形無形に引き継いできている。今、周囲を見渡してみると、なぜそうなるのか説明のつかないまま、われわれは行動していることが多い。たとえば寺へ参れば手を合わせて拝み、神社へ行けばかしわ手を打って拝むが、どうしてそうするのかはとても一々考えつかない。人に贈物をするときにはノシ紙をつけるが、これが昔贈物にはノシアワビを添えた名残りだとはほとんどの人が知らない。
それでも、生物学的な遺伝子が現在の人間を決定づけているのと同様に、社会学的な風習ない師生活様式がわれわれと無縁でありえようがない。そこで、今まさに不明になりかけているそれらの行動様式を少しでもさかのぼって追求し、その正しい意味をつかみ、将来への的確な橋わたしに役立てたいというのが、この本のねらいである。…”(本書「はじめに」より)
目次:
増補版の上梓にあたって
I 習俗のナゾ
1 盛り塩と浄め塩 {ミソギが出発点/元は海水で/その略化と変化}
2 御幣と門松 {ミテグラ・ヌサ・玉串/祭木の由来/祭木の小型化/ヌードショウの手草/年の神/いばる人間}
3 五月五日のこと {五月五日は女の日/サツキ・サナエ・サオトメ/三月三日の祭り/くやしがる男性/尚武の日/端午の節句/季節感のずれを嘆く}
4 お守り袋 {お守りの始めは女性の髪/一神一役/オナリ神/ま辛くあらば/神の安売り/土産の語源/屋敷神からお守りへ/文明と古代の同居}
5 庚申の由来 {プロローグ/庚申ということば/エトの迷信/庚申日のタブー/女性はけがれていない/サルダヒコ/三尸説/義務から禁止へ/青面金剛/庚申信仰の分布/語呂合わせ/セックスのくすぐり/その他の登場物/庚申のトナエゴト/カネ/道祖神/道祖神の古形/灯籠と男女神へ/馬頭観音/猿と馬/上州馬盗人}
6 死と火 {葬式の原型/けがれと喪/聖なる火・けがれた火/死よおごるなかれ/たまよばい/捨て墓・祭り墓/高彦根神の怒り}
7 未開放部落 {「破戒」の不幸/賎民村の発生/土地なき者/四つ/消えるべき因習}
8 赤飯 {ある記憶/桃太郎のきびだんご/日本は米の国だったか/なぜ赤いのか/ナンテン}
9 コケシ覚書 {コケシと木地屋/木地屋の系譜/巧みな権威利用/氏子狩り/コケシのふるさと}
10 熨斗 {のしあわび/めでたいしるし/ナマグサのシンボル/海は浄める/椰子の実の歌}
11 すし {にぎりずしは新米/臭いすし/すしと漬物/魚に密書を}
12 鬼門 {三不如意/東北に鬼が住む/日本は世界の鬼門/鬼門と家相}
13 うらない {イタコ・口寄せ・ノロ/託宣の姿/集団から個へ/特異能力/易の流行}
14 茅の輪 {芽を身をつける/出産儀礼/七歳のこども/祓えの原理/茅の輪とシデ/死から生へ/生まれる過程/結び}
15 はちまき {武蔵と巌流/ここ一番/チグハグな脱帽/神に近づく者/ハチのあたま}
16 神に祭られた賊 {神田明神の由来/将門記/時代背景/将門反す/京官大驚・宮中騒動/余談}
17 箸 {日本人と箸/箸と竹/箸のありがたさ/箸とたべもの/日本繁栄のかげに}
18 いれずみ {北と南と/昔の入墨/ベルツの着物説/現代では}
19 「朝飯前」と「お茶の子サイサイ」 {昔の食事は二度/多くなった食事の度数/朝は朝星・夜星/一升飯/朝飯前の仕事}
20 食べもの語源 {すきやき/かつどん/奴/おでん/てんぷら/豆腐と納豆}
21 酒の飲み方 {所変われば/古来の風習/左きき}
22 “神さま”閑談 {神の規範/祭の見方/神は男性/気をつけ!/平和な証拠}
23 たたりの思想 {「たたりじゃ」/天神さまはたたり神/不幸あい次ぐ/たたり神の資格}
24 火と性器の呼称 {火と性器は同根のことば/世界共通のホト/火の音の由来}
25 姥捨考 {親捨てはなかった/オハッセから転化}
26 モノモライ {呼び名のいろいろ/何かをもらえ}
27 照葉樹林文化 {照葉樹とは/サトイモ/コウジ/茶/柑橘/絹と漆/水晒し/腐りもの、ねばるもの/気質への影響}
28 紙以前 {貴重品/書く/包む/拭う/左と右}
29 こどもと習俗 {時代は変る/神の代理/こどもの祝い/遊びの中で}
30 七夕(たなばた) {たなばた語源/その距離―一五光年/笹の葉さらさら/そうめん・ほおずき}
31 えらびとり {大五郎は刀を選ぶ/誕生日を祝ったか/こどもの将来をうらなう/西日本に分布}
32 フロの話 {初めはサウナ式/浴衣と丹前/タレント勝山/昔風呂屋、いま“?”}
33 三下り半 {三行半に書く/簡単に離婚ができたか/連座を防ぐ/縁切寺・駆け込み寺/庶民の知恵/離婚率の変化}
34 冠婚葬祭の話 {「これなり」/冠/婚/葬/祭}
35 暦の豆知識 {大安吉日/新暦・旧暦/日月蝕/庶民の暦/七つ立ち/夕で始まる一日/夜は神の時間/春はあけぼの/太安萬侶の死亡時間}
36 一日と一年 {一日の始まり/鶏鳴で始まる朝/一年の周期/はる・なつ・あき・ふゆ}
II 地名考
1 やまと・日本・じゃぱん {楽浪の海中に倭人あり/ヤマトはどっち/倭から和へ/ジャパン/ヤマトへの郷愁}
2 あづまはや {ヤマトタケルの嘆き/ケヌとアヅマ/マイダーリン、アイラブユー/昔の峠}
3 沖縄と琉球 {違う語感/琉球/沖縄/日本の島の命名法/強いられた「琉球」/うるま}
4 なにわ今昔 {国見歌/昔の大阪湾/みをつくし}
III 記紀等私見
1 かわいそうなスサノヲ―記紀の或る読み方― {悪人弁護/出生/根の国/主役を引き立てる悪役/誓ひの占める位置/天つ罪/出雲へ/「臣」系統への高姿勢/朝鮮・高天原・根の国}
2 数字の好悪 ―古代の数の観念をさぐる― {ラッキー7・末広がり/記紀の数字/好まれた8/厳粛な5/きらわれた4679/8と35の対立}
3 出雲の旅 {国引の章/神社巡りの章/国庁跡、国分寺跡の章/松江市内の章}
4 神とゴッド {神と宇宙/神の歌/神と人間の関係/神の顕現/神の好むもの憎むもの/二つの世界観}
あとがき