1992年 新書判 P196 カバー背少ヤケ
“世界のすべてを知りつくしたい― 動・植・鉱物=万物を収集、分類、記述する博物学が学問の王だった一八世紀。その帝王リンネと、その下に鎖国日本を含む全世界をめざす弟子。珍品に踊る王、富豪。博物学の壮大な野望を描く。”(カバー紹介文)
目次:
プロローグ―博物学の時代
1 すべての植物を分類しつくす
{夜が明けたら有名人/植物にも性がある/植物の婚礼/「性の体系」のアイデア/「性の体系」の全体系/論理を重視したリンネ/植物画の最高峰エイレット/リンネはみだらである/「性の体系」の矛盾/すべてを分類しつくす/国境をこえるリンネ植物学}
2 植物はどのようにとらえられてきたか
{実用分類から人為分類、さらに自然分類へ/植物学の祖テオフラストス/近世本草学の頂点/本草学から博物学へ/フランス植物学の父ツルヌフォール/自然をいかにとらえるか/リンネの目指した自然分類/ヴェルサイユ宮殿に出現した自然分類/リンネ批判/植物学の革命/植物分類の発展}
3 学名の誕生
{「種」とはなにか/アリストテレス論理学の属と種/種は変化しない/二名法とはなにか/長すぎた学術名/リンネの工夫/二名法の功績/リンネソウの名の由来/リンネが広めた記号/国際命名規約の制定/門・綱・目・科・属・種}
4 最高の学問としての博物学
{神を理解する学問/神に選ばれた者/システム・オブ・ネイチャー/リンネの動物学/人間は神かサルか/リンネの地質学/博物学の世紀/博物標本はどのように作られるか/貝殻商だけで六〇〇軒/富豪たちの庭園/全世界を覆う博物学者のネットワーク/大英博物館のもとになったコレクション/パリ植物園の発展/恋愛小説より人気のあった『博物誌』/ビュフォン・リンネ論争/フランス啓蒙思想と博物学/リンネを賛美したルソー/ゲーテとリンネ}
5 世界を分類しつくしたい―リンネとその野望
{小さな植物学者/貧乏医学生/ラップランド調査旅行/オランダ滞在中に有名になる/驚くべき生産量/科学アカデミー会長に/ウヴサラ大学教授の地位/ロシアのスパイ?/教師リンネ/大学植物園の管理/植物採集会/平穏な後半生/国王が支援者に/リンネの著作群/小リンネ/植物学者中の第一人者}
6 地球の裏側までも―リンネと使徒たち
{命をかけて海外へ/北アメリカへ/パレスチナへ/スペインへ/アラビアへ/そして日本へ―最後の使徒ツンベリー/ツンベリーの業績/長崎・箱根・江戸の植物/四〇〇の新種発見/ケンペルとシーボルトの業績/リンネ植物学の日本への導入/博物学とナチュラル・ヒストリー/田中芳男の夢/科学博物館の設立}
7 リンネ博物学の遺産
{小リンネの努力/リンネ標本の国外流出/リンネ植物学の流行/博物学界に君臨したパンクス/探検航海と博物学者/使徒ソランダー/キュー植物園の誕生/大英博物館の役割/二五歳でリンネ標本の所有者に/ロンドン・リンネ学会の設立/リンネ標本の行くえ/イギリス博物学の三つの柱}
エピローグ―リンネからダーウィンへ
{一八世紀のリンネ、一九世紀のダーウィン/動物命名法とダーウィン/現代生物学とリンネ/日本の博物学の現状
参考文献