1989年18刷 B5判 P359+索引・付録P25 カバー下端濡れ跡 天少シミ汚れ
フランソワ・トリュフォーが聞き手となってアルフレッド・ヒッチコックにインタビューした対話の記録。
“「どんな監督をもしのぐすばらしい才能が、わたしにとってはヒッチコックなのである。ヒッチコックの映画を無視できないのは、ヒッチコックという人間と、その映画的キャリアの模範的なすばらしさに驚嘆せざるをえないからであり、その作品の豊かさを吟味してみるときには、崇敬の念を、あるいは羨望を、あるいは嫉妬を、あるいは何かをたしかにそこから得たという実感を、そしてつねに熱狂的なおもいを噛みしめずにはいられないからである」―フランソワ・トリュフォー
1925年の処女作から『暗殺者の家』『レベッカ』『『見知らぬ乗客』『北北西に進路を取れ』『鳥』そして最後の作品『ファミリー・プロット』まで、20世紀の映画史を生きた巨匠のすべての作品を論じながら、その秘密のテクニックをあますところなく公開するファン必読の名著、待望の邦訳。”(カバー袖紹介文)
目次:
序 ヒッチコック式サスペンス入門
1 1899―1926
幼年時代-警察ぎらい-イエズス会と鞭打ちの刑-科学への好奇心-映画との出会い-未完の処女作-女対女-未来の妻-マイケル・バルコン-快楽の園-映画監督第一日-山鷲
2 1926―1928
下宿人―最初の真のヒッチコック映画-純粋に視覚的な形式の創造 -ガラス板の効果-手錠とセックス-ヒッチコック登場-下り坂-ふしだらな女-リング-ワン・ラウンド・ジャック-農夫の妻-シャンペン-グリフィスのように-マンクスマン―サイレント時代の最後の作品 -スクリーンをエモーションで埋めつくすこと
3 1929―2933
恐喝―最初のトーキー映画 -シュフタン・プロセス-ジュノーと孔雀-文学と映画-サスペンスとは何か-殺人!-アメリカ映画の言語と文体-いかさま勝負-金あり怪事件あり-パリで一緒に-十七号-猫騒動-プロデューサーとして-ローマの休日-ウィーンからのワルツ-低迷と不調の時期
4 1934―1935
暗殺者の家―知りすぎていた男-チャーチルが警視総監だったーピーター・ローレ-シンバルが打ち鳴らされるとき-単純であること、明晰であること-三十九歳-ジョン・バカン-〈アンダーステートメント〉とは何か-チキン・パイとセックス-ミスター・メモリー-批評家を批評する-人生の断面《きれはし》、ケーキの断片《きれはし》
5 1936―1939
間諜最後の日-スイスには何がるか-サボタージュ-子どもと爆弾-殺意と同化-エモーションを生みだすこと、そしてそのエモーションを最後まで持続させること-第3逃亡者-サスペンスの模範-バルカン超特急-〈らしさ〉ということ-デヴィッド・O・セルズニックからの電報-イギリス時代の最後の作品―巌窟の野獣 -チャールズ・ロートンという俳優-イギリス時代の総括-のるかそるか―Hollywood or bust!
6 1940―41
タイタニック号の企画は沈没した-レベッカ―アメリカ映画第一作-シンデレラ物語-オスカーをもらったことがない-海外特派員-ゲイリー・クーパーからジョエル・マックリーへ-オランダには何があるか-血まみれのチューリップ-〈マクガフィン〉とは何か-スミス夫妻-俳優は家畜だ-断崖-ミルクの白さ
7 1942―1944
逃走迷路-アイデアに溺れすぎて-群集のなかの閉鎖状況-疑惑の影-ソーントン・ワイルダー-メリー・ウィドウ-理想主義者の殺人犯-救命艇-戦争の縮図-獲物にとびかかる猟犬のように-ロンドンに帰って-二本の戦争宣伝映画
8 1945―1947
ふたたびアメリカにもどって-白い恐怖-サルバドール・ダリとともに-汚名-ウラニウムという名の〈マクガフィン〉-FBIに監視されて-愛のサスペンス・ドラマ-映画づくりを主題にした映画のアイデア-パラダイン夫人の恋-グレゴリー・ペックはミスキャストだった-興味ある撮影の試み-悪魔さながらの角のように堅手
9 1948―1950
ロープ―全篇ワン・ショットの映画-絵はがきのカラー-映画の基本はカット割り-街の雑音が立ちのぼってくるように-山羊座の下に-Run for cover―確実な地点に戻ってやり直せ-たかが映画じゃないか-舞台恐怖症-いつわりの回想-悪役がうまく描かれていなければ映画は成功しない
10 1950―1952
見知らぬ乗客-レイモンド・チャンドラーとの確執-サスペンス―時間の収縮と拡張-時間表《ダイヤ》のように-私は告白する-交換殺人のテーマ-ユーモアの欠如-野蛮なソフィスティケーション-懺悔の秘密-事実とフィクション-警察恐怖症-パイプのけむり―ある三角関係の話
11 1945―1955
ダイヤルMを廻せ!-3D方式-映画と演劇―ドラマの集約-裏窓-クレショフ効果-人間はみなのぞき屋である-小犬の死-〈サプライズ〉としてのキス、〈サスペンス〉としてのキス-パトリック・マホーン事件とドクター・クリッペン事件-泥棒成金-セックスがスクリーンに描かれるとき-ハリーの災難-〈アンダーステートメント〉の笑い-知りすぎていた男-背中にナイフをぐさりと突き刺されて-再びシンバルが打ち鳴らされるとき
12 1957―1959
間違えられた男-まったく嘘のない映画-めまい-屍姦症の男の物語-キム・ノヴァクはノーブラを誇りにしていた-メリー・ディア号の遭難-フラミンゴの羽根-ベルリンの壁-政治サスペンス映画のアイデア-北北西に進路を取れ-それはグリフィスにまでさかのぼる-本物のセット、原寸大のセット-時間と空間をいかに操作するか-不条理にもとづく荒唐無稽な遊び-死体が転げ落ちる……
13 1960
夢かジョークか-わたしはいつも恐怖でいっぱいだ-深夜のアイデア-史上最長のキス-愛のすがた-空間を生かさなければならない-イメージの創造―映像は映るものではなく、つくるものだ-クローズアップを持続させること-サイコ-ジャネット・リーのブラジャー-燻製にしん-観客を演出する-アーボガストの殺しかた-俯瞰撮影-シャワーと殺人-剥製の鳥-大衆のエモーションをゆさぶる-映像作家の映画、わたしたちの映画-製作費八〇万ドル、配収一三〇〇万ドル-批評家は映画の主題や物語にしか興味を持たない
14 1963
鳥-なぜ鳥が人間を襲うのか-メラニー・ダニエルズの金ピカの鳥籠-即興演出-無言のシーンほどサスペンス・タッチが冴える-電子音響《エレクトロニック・サウンド》-トラックの叫び-わるい冗談
15 1964―1966
マーニー-性的フェティシズム-企画流れになった三本のシナリオ-三人の人質-メアリー・ローズ-R・R・R・R-引き裂かれたカーテン-殺しのリアリズム-親切なバス、意地悪なバス-ポール・ニューマンとアクターズ・ステュディオ方式の演技-照明《ライティング》なしの撮影−かっとされた工場のシーン-一作一作が新しい冒険だ-上昇曲線―ドラマチックな盛り上がり-シチュエーションの映画と人物の映画-新聞はロンドンの「ザ・タイムズ」しか読まない-わたしは視覚人間である-ヒッチコックはカトリック作家か?-ストーリーよりもディテールの工夫に力をいれなければならない-都会の二十四時間
一九七八年版のための序文 ヒッチコックはひとつの映画の制度、映画の法則になった―「引き裂かれたカーテン」から「みじかい夜」まで
日本語版のためのあとがき ヒッチコックとともに
訳者あとがき
付録 略歴・フィルモグラフィー・参考資料
索引