1997年初版 四六判 P390+原注P84、P882+索引・原注P152 各巻カバー少スレ、少クスミ、少イタミ、背ヤケ
叢書ウニベルシタス560
訳:谷林眞理子、岡田俊恵、小池久恵、俣野房子、斎藤悦子、藤澤美枝子
世界各地、過去から現在まで、さまざまな社会集団にみられる呪術。それらを個々の事例として考察するのみにとどまらず、「呪術」の一般的理論を構築する試み。
デュルケム学派の社会学を基礎に、人類学、哲学、宗教学、歴史学、精神分析学などの広範な分野における呪術論を俯瞰し、その機能、意味付け、宗教と呪術の関係性などについて言及する。
目次:
上巻
日本語版序文
序
{一般理論/呪術は実際に存在する/やっかいな題材/この研究はいかに始められたか/マルセル・モース/資料について}
序章 呪術とは何か
七つの領域 {(1)医療呪術/(2)黒魔術/(3)儀式呪術/(4)宗教呪術/(5)オカルト・サイエンス(と、神智学)/(6)超常現象/(7)呪術カルトとセクト/少数領域}
古典文献から導き出された一般理論 {一般理論がなしうること/古典文献は呪術についていかに言及しているか}
呪術の定義 {広義の呪術/狭義の呪術}
定義付け
定義
梗概
【第一巻 シンボル】
仮説1 呪術は社会的行為の一形態である
呪術は何かを作り、何かを変える
社会的行為と社会的行為説のどちらが呪術的か
呪術は疑似行為ではない―サルトル説への反論
仮説2 呪術的社会的行為は象徴的パフォーマンスからなる―言語的シンボリズムが呪術の中心である
シンボルの力―超越的なものの支配
言語によるシンボルが中心 {(1)呪術で使われる言葉/(2)言葉と言葉の呪術的関係/(3)呪術で使われる文}
仮説3 呪術的象徴行為には厳密な台本がある
発話の第三の型か
呪術的発話は神聖な行為に由来する
確実を期すために台本化する
呪術と、話す勇気
呪術と、行動する勇気
呪術と、考える勇気
範疇
希望の神学―呪術的希望
仮説4 呪術の台本はおもに既存の同意、もしくは予想される同意によって社会的効果を上げる
呪術の効果にかんする説 {(1)呪術がどのようにして効力を発揮するのかを理解するために、象徴的相互作用説は役立つだろうか/(2)呪術は修辞法の一種だろうか/(3)呪術のシンボリズムが抵抗しがたい効果を上げるのは論理によるおか、それとも非論理によるのか/(4)呪術は経験に基づいて永遠に更新されるのか}
呪術はどのような作用するのか―社会学的説明 {(A)社会認知的枠組の弛緩/(B)同意しているという同意}
【第二巻 宗教】
仮説5 呪術は宗教からシンボリズムを借用し、宗教を再生させる弁証法で宗教と論争するためにシンボリズムを用いる
奇妙な弁証法 {(1)呪術は宗教に挑戦する/(2)宗教は反撃するが、宗教の抵抗はさらなる呪術を促進する/(3)しかし、呪術の攻撃は宗教を再生させる場合がある/(4)新たな宗教セクトのホトンドが、はじめは呪術的色彩を帯びている/(5)宗教の文化システムは呪術的抵抗セクトを「パターン化する」/(6)宗教の中には呪術的抵抗セクトを系統的に制度化するものもある/(7)呪術が抵抗するもの/(8)先住民社会における隠れた多元論としての呪術的抵抗と同化作用}
「倫理的」世界宗教の問題 {仏教/キリスト教/ヒンドゥー教/中国の宗教/ユダヤ教とイスラム教}
仮説6 論理の上でも、またいくつかの歴史的連鎖においても、呪術から宗教が派生するのではなく、宗教から呪術が派生する
宗教と呪術ではどちらが古いのか
呪術の宗教衰退説
観察による証拠が宗教先行説を支持する
解決法RM=R {(1)宗教も呪術もマナから派生するのでRM=Rである/(2)宗教も呪術も社会的なものなのでRM=Rである}
仮説7 呪術は宗教における社会投影の副産物である
社会の投影としての宗教{最も有力な部分の投影/全体の投影/宗教の投影はどれほど自意識的か/投影と共同体 対 呪術と抵抗}
投影のメカニクス―デュルケムのマナ・モデル {「聖なるもの」の第三の領域にかんして}
マナの発見
マナの一般化
仮説8 宗教は、社会のために呪術をつくり出したりモデル化する制度である
どれが宗教でどれが呪術なのか
宗教呪術の範囲
宗教の実践は呪術的にみえる
宗教儀礼は「広義において」呪術的である {(1)供犠―人格の奇跡/(2)神秘主義とイニシエーションのシンボル/(3)神話/(4)祈祷/(5)核となる一般的宗教儀礼}
呪術と宗教の重複を説明する理論 {(1)呪術-宗教の同一性/(2)両極の理念型/(3)階級を含む理論}
結論:宗教は呪術をモデル化する
要約:宗教から生じる象徴的意味としての呪術
個人への序曲―成員資格を得るための儀礼
原注
下巻
【第三巻 個人と自己】
仮説9 呪術は自己を守ろうとする
第一部 精神分析の立場から―呪術と自己の理論
(1)フロイト理論から見た呪術 {(A)制度上の呪術にかんしてのフロイト理論 (B)広義の呪術にか対するフロイトの見解}
(2)正当的フロイト学派の学者たち {「呪術的思考」のグループ}
(3)ローハイムの呪術肯定的理論
(4)シュテーケル―呪術は超自我としての宗教と闘う
第二部 呪術が防衛する自己とは何か
モデルの集合
現代の自我心理学における自己モデル
用語モデルにむかって―他の用語の問題
個人の中の自己
定義
第三部 呪術は何から自己を防衛するのか
(1)ヴードゥー教のまじないによる死
(2)自殺
(3)魂の喪失
(4)不安
第四部 いかにして呪術は自己を防衛するか
I 精神分析学理論は、呪術の社会学的理論に適合し、それを裏づける
II 呪術的機関は自己の防衛を助ける
仮説10 呪術は個人の制度を発達させる助けとなった
新石器時代の蛮行
第一部 人のバーニング・ポイント
(1)バンドから部族へ {バンド/部族}
(2)呪術的個人の反乱
(3)呪術は前進し続ける
(4)都市の空気は自由にする
(5) 法的プロセス
第二部 個人を育成する制度への呪術の援助
(1)法的制度
(2)個人を強化する助けとなるその他の制度
(3)人格の範疇の経過 {宗教的段階/呪術的段階/法的段階と統合/東洋 対 西洋/中世および近世初期の統合/オカルト的人格概念の持続/人格の範疇の最終的な崩壊/結論とまとめ}
仮説11 呪術―とくに、黒魔術は自己と個人への社会的抑圧の指標である
第一部 いかにこれらの恐怖が始まったか―わたしの理論 {最も奇妙なテーマとしての黒魔術/精霊による殺人/きわめて古い信仰としての黒魔術/黒魔術カーストの登場人物/なぜ邪教師と妖術師が同一社会に存在するのか/要約―黒魔術の起源}
第二部 なぜこれらの恐怖はパターンの一貫性があるのか―いくつかの説の価値 {(1)薬物説/(2)カルト伝播説/(3)迫害によるパターン化/(4)機能主義理論説}
第三部 実例に即して {普遍的パターン/アザンデ族の特徴/断片化が信仰を育む}
第四部 なぜこれらの恐怖は持続するのか―社会的緊張の尺度 {エヴァンス=プリチャードのモデルの確認/モデルが用いられる異なる方法/アフリカにおける社会の抑圧と黒魔術/リニージの分裂/誰が誰を告発するか/黒魔術と道徳的コンセンサス}
第五部 社会的緊張の尺度は近代ヨーロッパにもあてはまる {ノートスタイン/イーウィンとキットリッジ/マクファーレン/キース・トマス/結論:個人と自己の拡大または縮小}
仮説12 呪術は文明のある側面を表わすものとして存在する
第一部 呪術は現代社会の一つの表現である {呪術と分業/「有機的連帯」はどうなるのか/「有機的連帯」と「形式化した合理性」/なぜ呪術は現代社会に存続するか/社会の宗教的投影としてのオカルト}
第二部 現代社会はどの程度呪術的か {(1)存続する伝統的呪術制度/(2)新たな現代の呪術制度/(3)いくつかの境界線上の制度/(4)最古の職業}
第三部 広義においての呪術―その社会的素地 {金と秘密/呪術の産物/現代の神話と呪術的言語}
第四部 個人と自己に対する抑圧の表現としての呪術 {拡大あるいは収縮の反映としての呪術/個人への圧力/自己への圧力/人格についての追記/生地の裂け目/世界の解体と呪術/決定的連鎖連合―個人と自己/悪魔的な自己?/非人格 対 自己/不能の反映としての呪術―非人格化と無力/自己の成層が出現するのか/カースト制度としての自己/要約}
第五部 結論―呪術の一般的社会学理論 {第一巻:シンボル/第二巻:宗教/第三巻:個人と自己}
【補遺 歴史】
仮説13 呪術シンボリズムは容易に伝播し、歴史をつくり上げる
第一部 歴史の重み {知識の重み/オカルト・リバイバル―一つの歴史的連鎖/文献の発掘/オカルト・サイセンスと大衆}
第二部 歴史的オカルト・リバイバル
(1)古代世界のオカルト全盛期
(2)永続的オカルト革命としてのヒンドゥー教
(3)出版に現われたルネサンスのオカルト・リバイバル {四つのオカルト・サイエンス/ヘルメス文書/科学への推移}
呪術と科学―相互に助け合うのか、邪魔をするのか {千年王国運動}
(4)現代のオカルト流行:十九世紀、二十世紀
訳者あとがき
原注
邦訳文献リスト
索引