1995年初版　22.0×28.9　P144 表紙端僅スレ　別冊付録「覆刻『犯罪図鑑』」付（本書から取り外し済）

構成：米沢嘉博

“江戸川乱歩が活躍した昭和初期は、エロ・グロ・ナンセンスの時代と呼ばれる。
近代の裏面に蠢くエネルギーが爆発した大衆文化の時代であった。
日本における探偵・怪奇小説の誕生、キワ物的出版物の大ブーム、ポルノグラフィー、ロボット…などの流行、カフェー、レビューの出現、人びとは競い合い奇を猟っていった。乱歩はまさに時代の申し子、その作品には時代の空気が濃厚に漂っている。”（扉ページ紹介文）

目次：
都市の闇と迷宮感覚　エロ・グロ・ナンセンス時代と江戸川乱歩（紀田順一郎）

怪奇と幻想
　｛エロ・グロ・ナンセンスの系譜（鈴木貞美）／探偵小説の誕生（鈴木貞美）／モダン都市の幻想（鈴木貞美）／「新青年」が生んだ作家たち（伊藤秀雄）／怪奇・幻想小説の流行（八木昇）／魔術・心霊学・霊術（一柳廣孝）｝

機械趣味とカラクリ
　｛機械への嗜好性―乱歩とプロレタリア文学（荒俣宏）／海野十三と科学小説（會津信吾）／「科学画報」と通俗科学（會津信吾）／電気博覧会（橋爪紳也）／レンズ仕掛けのレトリック（高橋世織）／ロボット・ブーム（米沢嘉博）／「人種と風俗」への好奇心（米沢嘉博）｝

エロの時代
　｛エロティシズムへの偏奇（中田耕治）／モダニズムの裸体郷（秋田昌美）／歓楽都市探訪（米沢嘉博）／カフェー（初田亨）／好色燐寸《マッチ》（米沢嘉博）／小野佐世男と風俗マンガ（小野耕世）｝

猟奇とグロ
　｛異形たちの蜜月（久世光彦）／残虐のグラフィズム（秋田昌美）／サディズム・マゾヒズム（秋田昌美）／伊東晴雨の「責め絵」（北原童夢）／美少年・美少女と異装（川崎賢子）／万国衛生博覧会（田中聡）｝

モダン・デカメロン
　｛近代・性出版の幕開け（関井光男）／乱歩と同性愛（古川誠）／性科学雑誌と変態性欲（関井光男）／発禁図書文学案内（城市郎）／エロ出版のオルガナイザー、梅原北明（城市郎）／画業から奇書出版へ、酒井潔（城市郎）｝

猟奇犯罪事件簿（下川耿史）
亡父乱歩のいた風景（平井隆太郎）

付録：「犯罪図鑑」
“平凡社刊の江戸川乱歩全集付録「犯罪図鑑」は、昭和七年五月十日発行当日に風俗壊乱で禁止、押収された現在稀なる小冊子である。
四六判仮綴の薄手（六十四頁）ながら、“ギロチン、変態性欲、責め、拷問、バラバラ死体”などの絵画や写真がふんだんにもりこまれて、さながらグロテスクの宝庫。たかが単なる「付録」と軽視されがちながら、乱歩全集もこれなくしては画竜点睛を欠くきらいあり、探偵小説ファンは必携必見したきミニ・ライブラリーである。（城市郎）”（冊子巻末解説）