平成9年初版 A5判 P510 函クスミ、函背から端にかけてヤケ
『本朝酔菩提』『桜姫全伝曙草紙』など、近世後期の作家・山東京伝の読本について、近世演劇史・民俗信仰・説話などの影響を見出し、京伝の考証学の成果として位置づける論考。
目次:
序章 山東京伝、人生の転機から考証学・本格小説へ
{第一節 絵本『四季交加』と京伝の「志」/第二節 京伝の生活、正業と余技、そして人生の転機/第三節 京伝の心、戯作と考証学/第四節 『近世奇跡考』亀田鵬斎序文と京伝の凡例/第五節 儒学・和学両考証学圏と京伝考証学/第六節 本格小説―後期読本の創始/第七節 南畝・柳塘・京伝/第八節 和学考証学者との交友、京伝考証学の構想/第九節 小山田与清『擁書漫筆』に見える京伝考証学}
第一部 考証学の時代と京伝の生活・人生
第一章 京伝『四季交加』論―人生の再出発と考証学― {第一節 京伝の大都市民意識と感慨/第二節 大都市民京伝の〈無常観〉と〈人生漂泊観〉/第三節 狂文と美文/第四節 戯文性/第五節 季語・年中行事性/第六節 〈物尽くし〉の文体/第七節 俳文性/第八節 狂文性/第九節 京伝の関心の対象〈雑芸能者〉〈雑職人〉と〈職人尽絵〉/第十節 〈江戸年中行事職人尽俳文絵本〉の成立}
第二章 南畝・保己一・京伝と折衷学・考証学・和学 {第一節 文人南畝の借写・抄書生活/第二節 徂徠学から折衷学へ/第三節 考証学ブーム/第四節 塙保己一と和学考証学圏/第五節 南畝における人生の転機と文人的遊戯生活/第六節 南畝交友圏における両考証学者/第七節 借写・考証と公務/第八節 南畝と京伝}
第二部 山東京伝の考証学と読本
第一章 『骨董集』論序説 {第一節 京伝の読本方法論への視点/第二節 『骨董集』の分類/第三節 〈昔咄〉への関心と考証の深化/第四節 考証水準の成長と詠嘆・認識・主題化/第五節 京伝の内部世界/第六節 京伝の考証学と馬琴の考証随筆}
第二章 〈遊行聖〉―『本朝酔菩提全伝』より― {序説/第一節 『骨董集』に見える〈宗教・芸能(者)〉への関心と認識/第二節 『本朝酔菩提全伝』の構想とモチーフ/第三節 〈聖〉から〈雑芸能者〉へ/第四節 〈聖―賤〉}
第三章 〈説経史〉―『本朝酔菩提全伝』より― {第一節 説教から〈雑芸能〉へ/第二節 門説経から説経へ/第三節 説経操芝居の盛衰/第四節 京伝の〈説経〉に関する認識/第五節 『蝉丸文書』に見る説経/第六節 説経と浄瑠璃/第七節 京伝におけるモチーフ〈説経史〉}
第四章 〈遊行聖〉〈浄瑠璃成立史〉〈歌舞伎成立史〉―『稲妻表紙』『本朝酔菩提』『櫻姫全伝曙草紙』より― {第一節 六字南無右衛門/第二節 『稲妻表紙』の三世界/第三節 佐々良三八郎/第四節 文弥節・佐渡島歌舞伎と京伝の考証/第五節 佐々良三八郎から六字南無右衛門へ/第六節/佐々良三八郎とささら太郎・自然居士/第七節 京伝の〈歌舞伎成立史〉/第八節 『桜姫全伝』の弥陀太郎から『稲妻』佐々良三八郎へ/第九節 京伝の〈操浄瑠璃成立史〉/第十節 失われることのないモチーフ・主題}
第五章 〈地獄絵・地獄信仰〉―『本朝酔菩提全伝』『善知安方忠義伝』より― {第一節 賽の河原の地蔵和讃/第二節 地蔵信仰史/第三節 説経・説経祭文・地蔵和讃に関する京伝の考証と認識/第四節 〈子供をめぐる地獄信仰〉に関する京伝の考証/第五節 「地獄太夫」の考証と「地獄の袿衣・地獄変相図」/第六節 京伝の挿絵}
第六章 《昔咄・説話》と〈女人堕獄信仰〉―『浮牡丹全伝』より― {第一節 モチーフ/第二節 《民俗信仰》と《昔咄・説話》/第三節 京伝の考証と小説的構想/第四節 京伝の構想}
第七章 〈地獄絵・地獄信仰〉〈女人堕獄・救済〉と《昔咄・説話》―『本朝酔菩提』『善知安方忠義伝』『桜姫全伝曙草紙』より― {第一節 地獄絵「観心十界図」/第二節 京伝の地獄絵/第三節 〈女人堕獄・救済〉と新しい近世地獄絵/第四節 「血の池地獄」と『血盆教』に関する京伝の考証/第五節 近世の〈女人堕獄信仰〉と京伝の思想/第六節 〈産女〉〈子育て幽霊〉と京伝の構想/第七節 京伝の〈産女〉の絵}
第三部 〈中世説話〉と京伝のモチーフ・主題
第一章 中世伝承世界から近世初期〈清玄桜姫説話〉へ {第一節 〈中世説話〉と京伝読本/第二節 『子安物語』諸本/第三節 中世説話『子易物語』と古浄瑠璃『一心二河白道』/第四節 『古易物語』における説話的要素/第五節 『一心二河白道』における説話的要素/第六節 中世〈土俗的桜姫物語〉における説話的要素}
第二章 近世初期〈清玄桜姫説話〉から中期『勧善桜姫伝』へ {第一節 序説から前説へ/第二節 〈桜姫の出自〉「鷲尾」/第三節 『子易物語』の「豊受明神」/第四節 「老坂佐伯長者」から「桑田長者平氏鷲尾義治」へ/第五節 文坂の〈鷲尾〉考証 /第六節 『勧善桜姫伝』における〈清源桜姫〉の出自の独創/第七節 『子易物語』と『勧善桜姫伝』/第八節 文坂と前期読本}
第三章 中世説話から近世中期勧化本へ―『桜姫全伝曙草紙』論(三) {第一節 信太時元の出自/第二節 西鶴に見える「老坂子安地蔵」/第三節 御伽草子『梵天国』と『勧善桜姫伝』/第四節 中世〈道成寺物〉諸説話と〈清玄桜姫〉/第五節 『一心二河白道』『勧善桜姫伝』における〈和泉式部説話〉}
第四章 近世中期勧化本 『勧善桜姫伝』の構想―『桜姫全伝曙草紙』論(四)― {第一節 〈難題婿譚〉/第二節 〈伴大納言説話〉と〈染殿后説話〉/第三節 〈清玄桜姫物〉〈隅田川物〉演劇と『勧善桜姫伝』/第四節 『勧善桜姫伝』の三重構造と京伝への影響/第五節 〈女人救済〉から〈男の勧化物語〉へ/第六節 大どんでん返し}
第五章 〈京伝の清玄桜姫〉開幕、そして『桜姫全伝』の構想―『桜姫全伝曙草紙』論(五) {第一節 京伝の秘匿/第二節 文坡の〈清源桜姫〉の出自/第三節 京伝の〈清玄桜姫〉の出自/第四節 文坡の考証に対する京伝の考証/第五節 京伝の〈弥陀次郎発心譚〉/第六節 〈土俗的桜姫物語〉〈清水寺の僧の恋物語〉の伝わる道/第七節 京伝のモチーフ〈丹後与謝海辺伝承世界〉/第八節 京伝と〈御伽草子〉/第九節 京伝『桜姫全伝』の構想/第十節 京伝の構想と思想}
あとがき
索引