
2021年 A5判 P244 帯付 カバー僅スレ、僅汚れ
“生きた絵画とは何か?
セザンヌも愛読したバルザックの短編小説『知られざる傑作』をもとに、色彩という観点から美術史や文学史、思想史を通して絵画の「生」を探究する絵画論。”(帯文)
目次:
画家の懐疑(叡智)
{叡智と意味=感覚/色の投げつけ、体液=気分の投げつけ/絵画における血の幻想/「裁決する「筆《クー》」の問い/懐疑と悪霊。我描く、我存在す/ヒステリーとメランコリーのあいだ/「触れることの妄想を伴う狂うほどの疑い」/色の数え上げ、体液=気分の計算は可能か?/赤面、疑い、決断}
コルピスススペクトル
肉色
{絵画における肉の要請/絵具(化粧)と色彩(生命)/肉と皮膚、深部と表面のあいだ/朱と血(チェンニーニ)/肉色の変貌(ディドロ) /肉色、それによって絵画は徴候を授けられることを夢想される/色彩の理想にして頂点としての肉色(ヘーゲル)/色彩の相互貫入(深部と透明)と「内面の活力」}
pan
{色は表面ではない/アリストテレスとドルチェにおける透き通ったもの/皮膚は表面ではない/デカルトにおける表面の産出/絵画における間隙の要請/形と襞。バルザックの幻影理論/絵は表面ではない/幻想と塗装下地の観念/結び目と編み込みのパラダイム/メルロ=ポンティにおける肉/pan とは何か?/フェルメール/選言の暴力と疎外の構造/皮膚、平面、pan/pan の効果と近さ/ティツィアーノ/近づくこと。不明確なもの、障害物、遠くのものの作用/触視覚的機能の絶頂の瞬間/pan の効果と妄想/作品《オビュス》における身体《コルビュス》の指標的現象/「この下に女がいるのだ」。}
画家の懐疑(欲望)
{「女を一対一で」という倒錯的交換/イメーヌの観念/契約のアボリア、接近不可能な女/フレンホーフェルとオルフェウス。無為=脱作品化という試練/地獄の色彩としての肉色/染みと欲望(ティツィアーノ)/血、欲望の幻影的実体(ミシュレ) /ポーズの病としての肉色/ポーズと恥じらい/恥じらいと過ち(ヴィーコ)/フレンホーフェルとピュグマリオン。憎悪、欲望、恥じらい/作品《おびゅ》から身体《コルビュス》へ。「ほとんど」の弁証法/尺度を欠いた女/サイズか細部か/閃光=断片としての女。優美とフェティッシュ化/フレンホーフェルとプロトゲネス/絵の分裂 〔脱臼〕性=脱局所性}
細部
{pan の効果、細部の効果/〈不可能な絵画〉のイコノロジーとしての足(ホラポロ、リーパ)/細部とフエティッシュ化/理想と汚穢のあいだ/歩き方に関するバルザックの理論。「すべてを見せることができる。それでいて何一つ覗かせるわけではない」/女の神性/唯一の細部の超-認識と無意味/イコノグラフィーとイクノグラフィー/カトリーヌの足の大理石化/パロス島の大理石の倒錯性(狂気と魔力)/絵画的記号過程《セミオーシス》と彫刻的記号過程《セミオーシス》/身体と絵画の無機物的起源/消え去る―永遠に―身体/グラディーヴァの歩み/フェティッシュと遺物のあいだ。喪と美のあいだ/カトリーヌの足の「心理的」不動性}
画家の懐疑(分裂)
{石化と消失(コロッソス)/ピュグマリオンとオルフェウスへの回帰/石の血、英雄の死/稀有なヴィーナス/唯一的で、全的で、原初的な女性(パンドラ) /ヴェールで覆われ、閉じ込められた、絵画の主題/絵が自分の絵具を見せる時/ティツィアーノ/肉色の理想が身体の脱形象化をもたらす時/色彩の魔術(ディドロ、ヘーゲル) / pan の暴政か細部の暴政か/フェティッシュの崩壊/不安的な肉/絵画は自分自身を飲み込む手段を有している/自己像幻視の仮説/分裂した意識の持ち主としてのフレンホーフェル/体液=気分のアンチテーゼ的力能/ヴィーナスというアンチテーゼ的観念/涙、泡、血
原注
知られざる傑作(オノレ・ド・バルザック)
索引-書誌
訳者あとがき