
2009年 四六判 P293 帯・カバー僅汚れ、僅イタミ 天地小口少汚れ
“音楽を奏でるエッセイ
絵画に宿る音楽を聴き、音のかなたのイメージを探る。
文章それ自体が音楽をつむぐ、珠玉のエッセイ集!”(帯文)
目次:
はじめに
【I 音のかなたへ】
水の声/フェルメールの楽器/アンダンティーノ/霧の中で/盗作か否か/春に/音色/雨傘とペテロ/心の中の演奏会/グルジアから/春の雨/片方だけの会話/トイピアノ/土田英介のピアノ・ソナタ/流刑地/たった一度の春/シャコンヌ/待たれ続けたソナタ/後ろの正面/クザーヌスのガラス/水なき空/独り/小さな耳/羊は草をはみ/鳥が舞うように/桜と菩提樹/音楽の兄/紫陽花/季節はずれの雪/待つ静けさな/静けさの背景/シェプキンのゴルトベルク/眠り/水の音/独りきりの音/ドビュッシーの沈黙/シャガールの風/失われた時間/ショスタコーヴィチの闇/豊橋交響楽団/失われた菱の花/日の出/バノハの糸杉/ブレーゲンツの目/ハーグの教会で/影法師の行方/曲を抱える/ノクターン/三本足の犬/雨です/秋の風/固有の歌/黄金色の「魔笛」/灰色の桟橋で/声のゆくえ/美しい顔/ニーチェと春/水のにおい
【II コンサートを読む】
古楽器演奏批判としての古楽器演奏 カルミニョーラとヴェニス・バロック・オーケストラの「四季」/神話の解体へ エディタ・グルベローヴァの「ノルマ」/根本からの個性の探求 インマゼールのベートーヴェン初期ピアノ・ソナタ/音による世界観の表出 瀬山詠子、二晩のリサイタル「石桁真礼生歌曲の夕べ」/生まれいずる春の詩 イヴリー・ギトリス、ヴァイオリン・リサイタル/現代と対峙する表現 ハーティング指揮の「運命」/裏切られた言葉 ヘンツェのオペラ「午後の曳航」(三島由紀夫原作)/存在の絶対的孤独 ヴィレム・ブロンズ、ピアノ・リサイタル/障子の三つの穴の視線 プッチーニ指定の楽器による「蝶々夫人」/現代に更生を問う エルガーのオラトリオ「使徒たち」/内なるスカルビアを見る ホール・オペラ「トスカ」/演奏による存在の開示 三上かーりんと小川哲生の「冬の旅」/なやめる時の最ちかき助なり オンド・マルトノとピアノによるメシアン「未刊の音楽帖」/雪と段ボールの幻想 白石市民オペラ、プッチーニ「ラ・ボエーム」/ホセの悲劇を明確に刻む チョン・ミョンフン指揮の「カルメン」/音の無い弾き手の孤独 キュッヒルによるプフィッツナーのヴァイオリン協奏曲/死を生の讃歌と変える風 コルボ指揮ローザンヌ・アンサンブルのフォーレ「レクイエム」/人格が引き出す手つかずの美 アルヴェ・テレフセン、ヴァイオリン・リサイタル/聞こえない音を求めて 宮本文昭の世界VI、宮澤賢治の童話の朗読と音楽/ボッティチェリとバッハ カルミニョーラのヴァイオリン・リサイタル/幸福な対話の音楽 遠山慶子とウィーン弦楽四重奏団のモーツァルト/異化された「辻音楽師」 白井光子とハルトムート・ヘルの「冬の旅」/予測を一切入れない男と女の哲学 野平一郎作曲の「悲歌集」初演/劇性の排除による現代批判 ムーティ指揮のヴェルディ「レクイエム」/ピリオド楽器で現代を読み直す アンドレアス・シュタイアー、フォルテピアノ・リサイタル/ホールを夢の道と化すバロック 古楽四重奏団「レッド・プリースト」のバッハ、ヴィヴァルディ/「冬の旅」に奥深い橋を懸ける ナタリー・シュトゥッツマンのシューベルト「白鳥の歌」/生きようとしていたシューベルト ボストリッジとドレイクの「冬の旅」第一部/左手だけがつくりだす世界の意味 レオン・フライシャー、ピアノ・リサイタル/ワーグナーに現代の愛の形を刻印 シュテークマン演出の「さまよえるオランダ人」/他者の優しさに呼応する 西村朗の弦楽四重奏曲第四番「ヌルシンハ(人獅子)」/男女の愛の違いを巧妙に表現 ラ・ヴェネシアーナ、モンテヴェルディのマドリガーレ/野のなかの歌のように バノハ弦楽四重奏団のドヴォルザークとベートーヴェン/情念を表出するリズム 末吉保雄個展「たかはしけいすけの詩による四つの歌曲」ほか/失われた不安のゆくえ ザ・ゴールデン・カップスとジュリアード弦楽四重奏団/降りしきる雪に響く リヒター演出のチャイコフスキー「エフゲニー・オネーギン」/理想郷としての死へ向かう シューベルトの「ラザロ、または復活の祝日」/本質的に同じバロックとロック マンゼ(バロックヴァイオリン)とエガー(チェンバロ)/“華やかな孤独”の在りよう セルゲイ・シェプキンのバッハ「ゴルトベルク変奏曲」/存在の孤独の闇に引きずり込む コンヴィチュニー演出の二期会「エフゲニー・オネーギン」/〈自由〉の多層性を問う ザ・タロー・シンガーズのプーランク「人間の顔」/底にある悲しみを新しい形で 寿明義和とシュタイアーのシューマン/愛と自己破壊 ジョン・アダムス作曲「フラワリング・ツリー 花咲く木」/女性の悲しい愛の心理 横須賀芸術劇場オペラ、パーセル「ダイドーとイニーアス」他/削除された四曲にクララの思いを聴く ジョン・エルウィスと渡邊順生の「詩人の恋」オリジナル版/現代におけるペテロの不在 アラン・ブラテル・バレエ団「憐れみ pitié!」
本文中に取り上げた曲を聴くことができるCDなどの紹介と若干の補遺
おわりに