1994年 新書判 P190 帯背から端にかけてヤケ大 カバーヤケ、薄く折れ跡 天時代シミ多
“お化けがもっと身近だった時代が生んだ仮設建築の種と仕掛”(帯文)
“神社仏閣や城廓のような、権威づけられた、堅牢な建築に較べると、仮設建築物は、資料が少なく、学問的興味の対象とはならなかった。しかし、人々の日常を支えたこれらに、日本的な建築文化のある種の伝統が見出されるのも事実である。本書は、江戸時代から見世物小屋のひとつとして発達し、近くは遊園地の中で人気を集める化物屋敷の外構・内装・陳列物の歴史を辿り、都市生活者が求めた「恐怖の楽しみ方」を探るものである。”(カバー袖紹介文)
目次:
第一章 消えゆく「お化け」たちへ
{節分のお化け/厄除けの異装/恋愛の風俗/すたれゆく「お化け」/失われてゆく心性/化物屋敷へのまなざし}
第二章 日本における「化物屋敷」観
{和風の化物屋敷/洋風の化物屋敷/建築物的風姿/古びても妖怪になりきれない「もの」について/行き来する魔物たち/退治しやすい化物たち/物怪と仲よくする方法/日本人の化物屋敷観―化物と人が交流する場}
第三章 化物屋敷の誕生
{場面型と迷路型、化物屋敷の演出/怪奇談の流行、「場面型」化物屋敷誕生の前提/文芸のなかの怪異/絵画のなかの怪異怪奇趣味の江戸/肝試しと百物語/化物細工師、宇禰次と目吉/生人形師たちの化物細工/「場面型」化物屋敷の嚆矢、菊島千吉の怪物問屋/変死体の見世物/身投げ三人娘人形/十界の見世物/メーズ、「迷路型」化物屋敷の原型/「迷途」のモデル/メーズの流行/鏡張りの迷路/化物細工との融合/「迷路型」化物屋敷の誕生}
第四章 化物屋敷と都市の近代 百貨店・遊園地・博覧会
{都市娯楽の近代化/新たな演出家たちの登場/ランカイ屋の活躍/美人島探検旅行館/理科応用の見世物/納涼博覧会/百貨店のお化け屋敷/「不思議」を見せる見世物}
第五章 化物屋敷の完成 国技館の納涼博覧会
{読売新聞社のイヴェント事業/国技館/イヴェントの既成概念を打ち破る/富士山の見世物/氷を使った見世物/水を使った見世物/外地を見せる見世物/季節を反転する装置、国技館の納涼イヴェント/昭和の大化物屋敷、日本伝説お化け大会/伝説名宝大会/世相博覧会/化物屋敷の完成形}
第六章 化物屋敷の現在
{お化けたちの行方/遊園地と化物屋敷/「見せる」技術の革新/和風から洋風へ/和洋中の混在/宝塚の鬼太郎/新しい魔物たち/恐龍の見世物/化物屋敷の問題点}
第七章 化物屋敷の空間構成
{祭礼の仮設劇場/仮設小屋の起源/見世物小屋の現状/コモノの建築空間/見ながしの劇場/見たところから見たところまで/囲いこまれた道/人が扮する「お化け」の創案者/演劇青年と「お化け大会」/おっかぶせお断り/客を呼ぶ装置、思案橋/迷路のレイアウト計画/たまり場、とびだし/「お笑いお化け屋敷」という口上/悲鳴と笑い/大道のなかの小屋}
第八章 遊戲化される恐怖をめぐって
{恐怖の風景/不安を楽しむ装置/スペクタクルとしての死/絶叫マシーンの快楽/安全に恐怖を体験する喜び/遊戲化された「死」の現在/遊戲化される「恐怖」の未来}
あとがき
参考文献