フィクションの修辞学 ウェイン・C・ブース 訳:米本弘一、服部典之、渡辺克昭 叢書記号学的実践13 書肆風の薔薇

1991年 A5判 P571 カバーヤケ、時代シミ甚大、スレ、キズ、端イタミ、少破れ、角少欠損 天・小口時代シミ多 両遊び紙および扉ページ時代シミ、裏遊び紙剥がし跡

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1991年 A5判 P571 カバーヤケ、時代シミ甚大、スレ、キズ、端イタミ、少破れ、角少欠損 天・小口時代シミ多 両遊び紙および扉ページ時代シミ、裏遊び紙剥がし跡

“ニュー・クリティシズムに始まる近代の英米文学批評を集大成した《シカゴ学派》の巨頭による本書は、原著刊行(一九六一年)以来、小説理論の古典的名著としてN・フライの『批評の解剖』とともに多数の読者に読み継がれてきた。
著者は、読者とコミュニケーションを取り結ぶ「公の筆記者」として現実の作者と位相を異にする《内在する作者》の概念を導入する。
《内在する作者》による読者の説得の技法、すなわち《修辞法》を議論の中心に据え、古今東西の作品を博引旁証しつつ、あらゆるフィクションがもつ《技法》を明解に記述しつくしてみせる。
外的要素を排し、個々の作品内の言葉の構造がもたらす「意味の伝達」の技法を精緻に読み解く手法は、T・トドロフやG・ジュネットら大陸の記号学構造主義の批評家による物語分析に多大な影響を与え、また、作者と読者が手に手をとり、作品という旅を完結させるという考え方は、W・イーザーによる「受容理論」やその後の「読者論」の出発点ともなった。
多様な批評理論の出現を促す大きな起爆力を秘めた小説理論の一大源泉、待望の邦訳。”(カバー裏紹介文)

目次:
序文

【第一部 芸術的純粋さとフィクションの修辞学】
第一章 語ることと示すこと
 {古い時代の物語における権威のある語り/『デカメロン』からの二つの物語/作者の様々な声}
第二章 一般原則I 「真の小説は写実的であるべきだ」ということについて
 {正当な反抗から議論を無効にする独断へ/個別化された種類から普遍的性質へ/これまでの一般的基準/一般的基準の三つの拠り所/現実らしさの幻想の強烈さ/介在物のない現実としての小説/リアリズムの類別化について/強烈さの段階化}
第三章 一般原則II 「すべての作者は客観的であるべきだ」ということについて
 {中立性と作者の「第二の自己」/公平さと「不当な」強調/「無感動であること」/非個人的技法によって助長される主観性}
第四章 一般原則III 「真の芸術は受容者を無視する」ということについて
 {「真の芸術家は自分のためにのみ書く」/純粋な芸術についての諸理論/偉大な文学の「不純さ」/純粋なフィクションは理論的に望ましいか}
第五章 一般原則 感情、信念、読者の客観性
 {「涙と笑いの力を借りるのは、美学から見ると、偽瞞である」/文学における関心(および距離)の諸類型/複数の関心の結合と対立/信念の役割/信念の実例としての『二人の女の物語』}
第六章 語りの諸類型
 {人称/劇化された語り手と劇化されていない語り手/観察者と語り手=行為者/情景と要約/論評/自己を意識する語り手/様々な距離/様々な語り手支持、または訂正/特権/内面描写}

【第二部 フィクションにおける作者の声】
第七章 信頼できる論評の様々な用法
 {事実や〈絵画的描写〉や要約を提供すること/読者の意見を形成すること/確立された規範に個々のものを関係付けること/出来事の重要性を高めること/作品全体の意義を一般化すること/読者の気分を操作すること/作品そのものに直接論評を加えること}
第八章 示すこととしての語り 劇化された語り手―信頼できるものと信頼できないもの
 {内在する作者の劇化された代弁者としての信頼できる語り手/『トム・ジョーンズ』の中の「フィールディング」/フィールディングの模倣者たち/『トリストラム・シャンディ』と形式の一貫性の問題/三つの形式上の伝統 ―喜劇的小説・寄せ集め・風刺/『トリストラム・シャンディ」の統一/シャンディ風の論評 ―優れたものとできの悪いもの}
第九章 ジェイン・オースティンの「エマ」における距離の操作
 {『エマ』における共感と批判/内面描写の操作によって共感を得ること/判断の操作/信頼できる語り手と『エマ』の規範/エマ・ウッドハウスについての明確な判断/友人そして導き手である内在する作者}

【第三部 非個人的語り】
第十章 作者の沈黙の様々な用法
 {再び「作者退場」/共感の調節/明瞭さと混乱の操作/作者と読者の間の「密かな交感」}
第十一章 非個人的な語りの代償 その一 距離の混乱
 {難題としての「ねじの回転」/これまでの文学におけるアイロニーの問題点/『若き日の芸術家の肖像』における距離の問題}
第十二章 非個人的な語りの代償 その二 ヘンリー・ジェイムズと信頼できない語り手
 {欠陥をともなった反映者から、主題への発展/「嘘つき」における二人の嘘つき/「アスパンの恋文を盗み出すこと」、あるいは「ヴェニスの追憶」/「深読みする世の読者諸氏、御用心」}
第十三章 非個人的語りの道徳的問題
 {道徳的問題と技法/魅惑的な視点、セリーヌを例として/曖昧にされた作者の道徳的判断/エリート意識の道徳的問題}

原註
参考文献
訳者あとがき
事項索引
人名・書名索引
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