2012年 A5判 ソフトカバー P286 帯付 カバー端僅イタミ ページ上角ごく僅折れ跡
“作家との対話の次世紀に向けて
生誕から200年余、初邦訳(完訳)から1世紀を機に第一線の研究者たちが提示する「最新のサンド像」!”(帯文)
“サンドの作品には常に、作家自身の「わたし(moi)」が明確に刻印されている。この特徴はとくにバルザックやフロベールら同時代の作家との比較で指摘されることでもある。サンドの作品を読む者は、この彼女特有の、ありのままの飾らない「わたし」の目を通して、人間という存在の孤独の深淵を作家とともに覗き込む。作品の主人公たちが「わたし」=作家とともに、厳しい現実に立ち向かい、理想に向かって歩を進めていくさまを見て、読む者はこの主人公と「わたし」の二重の実存に自らの生を重ね合わせ、人間と人生の普遍に触れ、心を震わせる。サンド作品の現代性の核心はまさしくここにあるように思われる。本書各章を通じて、こうした「現代性」のさまざまな様相を浮き彫りにすることができればと思う。 ……「はじめに」より”(カバー袖紹介文)
目次:
はじめに
ジョルジュ・サンド略史
用語解説
【解釈の新しい視座】
1 男と女
第1章 性を装う主人公 『我が生涯の記』『ガブリエル」(新實五穂)
1 一八三〇年代のパリにおけるサンドの男装 20
2 『ガブリエル』における女主人公の異性装
第2章 変身譚に読み取る平等への希求 『モープラ』をめぐって(小倉和子)
1 「モープラ」の背景
2 登場人物たちの変身
3 サンドの時代の「結婚」
第3章 異身分結婚への挑戦 『フランス遍歴職人たち』『アンジボーの粉ひき』『アントワーヌ氏の罪』(稲田啓子)
1 父親 ―結婚の「障害」
2 ブルジョワの求めるもの ―家名か、財産か
3 偏見と社会的圧力
4 新しい家族の創造へ向けて
第4章 「男らしさ」のモデル 『愛の妖精』をめぐって(高岡尚子)
1 「男らしさ」の移り変わり
2 『愛の妖精』の作品世界における「男らしさ」
3 シルヴィネの「男らしさ」が意味するもの
第5章 変装するヒロインたち 『アンディヤナ』から『歌姫コンシュエロ』『ルードルシュタット伯爵夫人」 へ(西尾治子)
1 復讐する分身
2 仮面のアイデンティティ
3 変装による自由の獲得
2 交差する芸術
第1章 文学・絵画・音楽の越境 ドラクロワが描いたジョルジュ・サンド(河合貞子)
1 ドラクロワの創作理念と革新性
2 サンドの肖像に表現された女性像
3 異なる芸術の対話
第2章 音楽の力・芸術の自由 コンシュエロの放浪とアドリアニのユートピア(坂本千代)
1 職業としての音楽
2 音楽の力
3 芸術家の自由
第3章 演劇、この「最も広大で完璧な芸術」 『デゼルトの城』を中心に(渡辺響子)
1 演劇界におけるサンドの創作活動
2 サンドの小説に描かれた演劇
3 ノアンでの実践、そして「芸術家の自由」の実現へ
第4章 絵画に喩えられた女性たち(村田京子)
1 ラファエロの聖母像に喩えられた女性
2 ホルバインの聖母像に喩えられた女性
3 田園のイマジネール
第1章 パストラルの挑戦 『ジャンヌ』『棄て子フランソワ』『クローディ』を中心に(宇多直久)
1 サンドの田園小説像
2 『ジャンヌ』にみる歌の要素
3 田園劇の誕生
4 新聞小説にみるサンド的パストラルの再生
第2章 旅と音楽の越境 『笛師のむれ』をめぐって(平井知香子)
1 『笛師のむれ』成立の経緯
2 二つの異なる土地
3 旅する笛師 ―融和の媒介者
第3章 物語への誘い 『祖母の物語』に託された願い(太田敦子)
1 『祖母の物語』の背景 ―十九世紀後半のフランスの社会と文学
2 伝統的なコントとの隔たり
3 物語への誘い ―メルヴェイユーの力
【受容の歴史 ジョルジュ・サンドと日本】
第1章 サンド作品の邦訳概史(坂本千代、平井知香子)
1 邦訳史概観
2 田園小説の邦訳
3 童話の邦訳 ―『祖母の物語』の受容
第2章 伝記の出版動向と文学史上の位置(坂本千代、高岡尚子)
1 伝記と文学作品
2 文学史上の位置
第3章 研究史(坂本千代、西尾治子、村田京子)
1 サンド研究の曙(一九四六〜八九年)
2 女性サンド研究者たちの力(一九八九〜二〇〇三年)
3 サンド研究の飛躍にむけて(二〇〇三年以降)
あとがき
注
サンド作品等の邦訳書誌
ジョルジュ・サンド年譜
参考文献
索引(サンド作品名/人名/地名/事項)