1992年 A5判 ソフトカバー P208 帯・カバー背僅ヤケ 小口僅汚れ
“「パリは変わる!だが……」
現実の中に過去の寓意を見た狂気の画家メリヨンの魂の風景。都市風景の秘められた病歴。”(帯文)
“外界に対するメリヨンの妄想は、写実的な風景に独特の歪みをもたらし、現実離れした寓意と合理的な遠近法との危ういバランスを生み出すことになった。本書の目的は、寓意と遠近法という二つの要素を通し、メリヨンの作品が依り所としている意識の古層を掘り起こすことにある。タイトルに病跡学という言葉を用いたのは、ひとつはこうした意識の古層を、風景画に秘められた病跡と見なし、通時的に跡づけようと試みたためである。もうひとつは、メリヨンの作品の寓意を彼の妄想を手がかりに読み解くとなると、文字通り彼の病跡を参照としながら作品を検証することになるからである。(本書「寓意と遠近法」より)”(帯裏紹介文)
目次:
寓意と遠近法 序にかえて
【第一部 水辺の遠近法 或る名所絵の系譜】
I 王権とパリ風景
{はじめに/ジャック・カロ/ルーヴルとポン・ヌフ/祝祭と遠近法/風景画の政治学}
II 眼鏡絵二都物語
{パリの眼鏡絵/江戸の眼鏡絵/遠近法とジャポニスム}
III ピクチャレスクなセーヌ川の旅
{旅の土産/ピクチャレスク/セーヌ川遡行/パリのピクチャレスクな眺め/風景画のニュー・ウェイヴ}
IV 内面的な都市風景の誕生
{ゼーマンからメリヨンへ/連作「パリの銅版画」/内面風景の悲劇
V 明暗のスナップショット
{二つのポン・ヌフ/写真の誕生/マルシアル/写真的発想と浮世絵名所絵の解体}
【第二部 都市の図像学 メリヨンの版画を読む】
I 「プチ・ポン」 あるいは秘められたスフィンクス
{はじめに/パピエ・ヴェルダートル/逆光に浮かぶ聖堂/
プチ・ポンと神の宿/風景が記憶するもの/ドラートルと小鳥の寓意/スフィンクスの影}
II 「吸血鬼」 あるいは君臨する怪獣像
{思索者/二つの怪獣像/大都市と吸血鬼/寓意の消長}
III 「両替橋」 あるいはセーヌ川に墜ちたイカロス
{ポン・トオ・シャンジュ/ 死の刻印/イカロスの神話/移ろいの橋}
IV 「屍体公示所」 あるいは河岸のキリスト幻想
{屍体というオブジェ/「埋葬」の図像学/内面化と聖別/寓意としての屍体}
あとがき ―ゴッホによせて
シャルル・メリヨン年譜
初出一覧
参考文献解題