2016年 A5判 P342 帯付 カバー上端ごく僅イタミ
“多様な表象から複数の現実へ!
間引かれる女児と留学する女子、因習に凝る閉鎖社会と都市のモダン、土着の信心と啓蒙の普遍、スパイと愛国、モダニズムとリアリズム、革命と反革命、郷土と脱域……人々が自らの生きる姿をそこにつぎ込んだ表象の世界をとらえ、その振幅と変遷から近代中国像を再考する。”(帯文)
目次:
序 近代中国 ―広がる表象―(関根謙)
【第1部 女性】
第1章 近代中国と溺女問題(山本英史)
はじめに
一 帝政中国における溺女問題
二 南京国民政府による溺女改革
三 人民政府による溺女改革
おわりに
第2章 林徽因と培華女学校(櫻庭ゆみ子)】
はじめに
一 培華女学校とA・G・ボーデンスミス
二 培華女学校設立のいきさつ
三 培華女学校と林徽因
四 林徽因とセント・メリーズカレッジ
五 培華女学校の発展、その後
おわりに
第3章 日記体小説に描かれる女性同士の愛―廬隠「麗石の日記」論(松倉梨恵)
一 一九二〇年代における女性同士の愛をめぐる言説
二 日記に書かれる同性の愛
三 日記に書かれる出来事と、書かれない出来事
四 日記を書く女性
五 日記の外側の物語
おわりに
第4章 中国語圏映画における川島芳子の表象(杉野元子)
はじめに
一 川島芳子が登場する中国語圏映画
二 川島芳子裁判の渦中に作られたスバイ映画『76号女間諜』と『第五号情報員』
三 台湾語スパイ映画『第七号女間諜』と『天字第一号統集』
四 梁琛監督映画『川島芳子』 と『戦地奇女子』
五 丁善璽監督映画『黒龍会』と『旗正飄飄』
六 一九八九―九〇年公開の伝記的映画『風流女諜』、『川島芳子』、『川島芳子 Kawashima Yoshiko』
七 一九九一年公開のアクンョンコメディ映画『財叔之横掃千軍』と『賭侠II之上海灘賭聖』
おわりに
【第2部 戦争】
第5章 孫瑜映画のモダニティ ―『おもちゃ』をめぐる、農村・女性・メロドラマ(吉川龍生)
はじめに
一 農村表象 ―『養蚕』との比較に見る『おもちゃ』の特徴
二 女性表象 ―黎莉莉の健康美
三 メロドラマ
おわりに
第6章 日中戦争前期、サラワク華僑の救国献金運動と祖国の表象(山本真)
はじめに
一 先行研究と本稿の視座
二 東マレーシア・サラワク州における中国系社会
三 サラワク華僑による「籌販祖国難民運動」と祖国・中国の表象
四 「籌販運動」の実態
おわりにかえて
第7章 魯迅とゾルゲとの距離 ―表象としてのスパイ及び「上海文芸の一瞥」講演の謎(長堀祐造)
はじめに
一 魯迅とゾルゲ周辺の人物 ―尾崎秀実・スメドレー・山上正義
二 魯迅とハンブルガー夫人
三 魯迅とスメドレーそして董紹明・蔡咏裳夫妻
四 「上海文芸の一瞥」テキストの問題とゾルゲ・グループ
まとめ
第8章 路翎戯曲『雲雀』の登場人物をめぐって ―内戦時期知識人の表象(関根謙)
はじめに ―戯曲『雲雀』と中国一九四○年代
一 路翎という文学者、その青年時代
二 戲曲『雲雀』の概要
三 戲曲『雲雀』の上演と評価
おわりに ―『雪雀』に見る内戦時期文学の問題点
【第3部 民俗文化】
第9章 中国における「魔術的リアリズム」の文体 ―莫言『赤い高粱』を中心に(橋本陽介)
はじめに
一 魔術的リアリズムとは何か
二 魔術的リ7リズムの文体
三 中国における魔術的リアリズムの受容状況
四 莫言と『赤い高粱』と『酒国』
五 鄭義『神樹』など
六 チベットの「魔術的リアリズム」
おわりに
第10章 中国料理のモダニティ ―民国期の食都・上海における日本人ツーリストの美食体験(岩間一弘)
はじめに
一 上海における各地方料理の栄枯盛衰
二 日本の観光メディアにみる上海と東京の中国料理
おわりに
第11章 近現代中国における民間信仰と「迷信」の表象 ―江南地方の場合(佐藤仁史)
はじめに
一 神と人 ―フィールドワークからみる民間信仰
二 「淫」と「邪」 ―清代の民間信仰政策
三 「迷信」の発見 ―清末民国期の民間信仰観
四 「封建迷信」としての民間信仰
おわりに
後記(関根謙)