2001年 文庫判 P374 カバー少スレ、背少ヤケ、端少イタミ
“安部公房の小説の言葉、谷川俊太郎・西脇順三郎の詩の言葉、中島みゆき・DREAMS COME TRUEの歌の言葉、斎藤茂吉・俵万智の短歌の言葉、そして、広告・写真・映画の言葉などの多彩で魅力的な例文を、言語存在の深奥部を穿つハイデガー言語論の視角から、哲学的抽象論議に終始することなく具体例に即して解きほぐす。ソシュールの構造主義言語学を批判的に乗り越え、これまで本格的に論じられないまま敬遠されることの多かった後期ハイデガーの言語論の根幹をつぶさに検討し、その明日への可能性を探る画期的論考。”(カバー裏紹介文)
目次:
【第I部 記号としての言葉】
第一章 言葉は世界を非現実化する ―言葉の幻想性
{情報伝達手段としての言葉/コンピュータによる言語処理/言葉は不在の事物を表わす/心の中の幻/ソシュールの〈差異〉}
第二章 言葉は世界を区切る ―言葉の恣意性
{アナログ音からデジタル音へ/デジタル音からアナログ音へ/言語的相対性「恋」から「愛」へ/シニフィアンとシニフィエとの結びつき}
第三章 ファジーな言葉と定義された言葉 ―自然言語と科学言語
{自然言語の暖味さ/自然言語の厳密さ/『砂の女』―科学言語から自然言語へ}
【第II部 雰囲気としての言葉】
第四章 言葉には翳がある ―言葉のアナログ性
{二律背反への疑問/「着衣」は「裸」/「白」は「黒」/「きれい」は「きたない」/翳のない世界/「夜」は「昼」/ハイデガーの〈アレーテイア〉}
第五章 言葉は雰囲気の同じものを集める ―雰囲気的同一性
{幼児の前論理性/語の雰囲気的同一性/語の空間性・情調性/語の概念は揺れ動く/ハイデガーの〈自らの-中へと-戻り-行くこと〉/具体的状況からの出発/隠喩の生成}
第六章 言葉は世界を孕む ―雰囲気的空間
{差異の網状組織/カントの〈シェーマ機構〉/ハイデガーの〈引っ掻いた痕跡-によるデッサン〉/語の雰囲気的空間/語はイメージを孕む/語は世界を孕む}
【第III部 深淵としての言葉】
第七章 言葉は響き合う ―言葉のシンフォニー
{語の多義性/「雪」は「愛」/「秋」の世界のシンフォニー/言葉の線条性/ハイデガーの〈静けさの響き〉}
第八章 言葉は底なしの深淵である ―言葉の魅惑と恐怖
{言葉はシュルレアリストである/言葉の無的性格/言葉は天使である/人間の身体は言葉である}
第九章 言葉は歴史的途上にある ―理念としての言葉 げ
{ベンヤミンの〈理念〉としての言葉/〈理念〉は世界のイメージを孕む/断片の収集・概念の作業/翳への〈注意深さ〉}
参考文献
図版出典
あとがき
言葉という次元―文庫版へのあとがき
解説(石澤誠一)