昭和2年 四六判 P225 全体に経年によるヤケ、シミ、汚れ、少イタミ ページ全体に開きグセ
旧字旧かな遣い
別題:平民工藝論
“これは大震災前後に私がかいたものをまとめたのである。〈略〉建築と云ふ字は限定された狭義の所謂建築にも、広く工作物を指す場合にも使はれるのだからさして差支はなからう。たゞ断つてをかねばならぬのは、所謂建築の仕事に実際面接してゐる当面の要求から具体的な何かを得やうとの期待で読んでくれると失望するかも知れないと云ふ事だ。然し、建築に就いて考へねばならぬ要求を持つてある読者にはこの本の頁は何等かを贈ることが出来るだらうと思ふ。
〈略〉
章のならべ方は、Iは私のぶらついてゐるときの態度を知つてもらう為め、採集の序詞としたのである。IIは旅行途上での探集で、IIIは採集のあるものに就いての小論である。而してIVは震災当時かいたもので、末尾に加へてもたいした矛盾がないやうだからこの機合を利用したのである。”(本書「序」より)
家屋、小屋といった建物のほか、橋、窓、自在鉤、雨樋など、生活に根ざした工作物について、著者・今和次郎が山村漁村で実地に採集した例を適宜スケッチを挿みつつ報告。後半の第III部はそれらにまつわる考察、第IV部は関東大震災後に観察されたバラックについて綴る。
目次:
I ある村の調べ
II 途上採集
{1 峠の茶屋/2 山の道/3 ある山村/4 山道の橋/5 流れの橋/6 同/7 海岸地の橋/8 崖縁の家/9 山人足の小屋/10 同/11 樵夫の家/12 木小屋/13 炭焼小屋/14 炭焼竈/15 水車小屋/16 海岸小景/17 萬灯/18 舟小屋/19 同/20 漁具小屋/21 漁師の家/22 漁家の窓/23 窓と腰掛/24 漁家の台所/25 漁村の家の間取/26 漁村の家並/27 井戸/28 同/29 同/30 棟飾り/31 同/32 鎌掛取/33 背負梯子/34 簀編み台/35 炉端・自在鉤/36 自在鉤/37 障子の引手/38 障子の風ぬき穴/39 雨樋/40 同/41 樋の釣木/42 ツバメの巣/43 蜜蜂の巣/44 肥タメ/45 カゝシ/46 石段/47 植木鉢/48 植木鉢/49 石油カンの塀/50 門/51 垣根/52 同/53 物干竿/54 同/55 同/56 火の見/57 同/58 同/ 59 駄菓子屋の店/60 茶店のセンベー入/61 ゴミトリ/62 同/63 同/64 下駄箱/65 コシカケ/66 郊外小景/67 のれん/68 小祠堂/69 道しるべ/70 ランプ/71 盆のお飾り/72 地震でつぶれた村の家/73 同}
III 田舎の工作物
{1 田舎家の構造美/2 土間の研究図/3 田舎家の美の二つの要素/4 村の人の作った橋/5 田舎の一ブリキ屋の仕事}
IV 震災バラックの回顧
{1 避難小屋/2 バラック/3 共同バラック}