1991年 四六判 P173 帯付
“20世紀ギリシャ―戦前・戦中・戦後の動乱下、ひたすら詩作を重ねた「現代最大の詩人」(アラゴン)のエッセンス83詩。エーゲ海の光と闇。政治、女、子ども……。”(帯文)
“エーゲ海の青と光り輝く太陽にみたされているギリシャ、だが、20世紀のギリシャは、たび重なる軍事独裁政権や、イタリア、ナチス・ドイツの侵攻など、暗い日々が続いた。古代ギリシャへの憧憬と光のイメージ、暗黒の現実との交錯のなかで、現代ギリシャの詩人は、想像力と時代批判をみごとな言語表現に高めてきた。1930年代世代とよばれるエリティス、セフェリス、そしてヤニス・リッツォスはその代表者である。
孤独と貧窮と疾病の中で育ち、左翼運動に身を投じたリッツォスは、拘禁・流刑・自宅軟禁・発禁処分がくり返される状況下、処女詩集『トラクター』(1934)以来、百冊前後の詩集を発表しつづけてきた。本書にはそこから「括弧1」 「括弧2」「はるかなる」の三詩集83詩をおさめる。時代を最も鋭敏に感じとり、政治的抵抗詩の多いことから〈ギリシャのソルジェニーツィン〉とよばれるリッツォスだが、少年時代の回想や日常生活をうたった素朴な詩、シュルレアリスム的作風のもの、それにエロス的色調の濃い詩も多く、既成の枠組を超えたきわめて音域の広い詩人である。”(カバー裏紹介文)
目次:
まえがき
【括弧一 一九四六年―一九四七年】
一 単純性の意味/二 飢え/三 顔/四 夏/五 いつの日か あるいは/六 自足なのか/七 最後の賛成/八 つくりなおす/九 にわかに/一〇 サーカス/一一 午後/一二 理解/一三 ミニチュア/
一四 女のひとたち/一五 三幅対 (・一 たそがれまで ・二 そのひとのこと ・三 このままではいけないの?)/一六 雨もよいの夜/
一七 同じ星/一八 結論/一九 われらは待つ/二〇 できるか?/二一 ありがとう
【括弧二 一九五○年―一九六一年】
二二 幼年時代―回復期/二三 遅刻/二四 むだづかい/二五 獲得法/二六 いままで忘れられていた優しさ/二七 なにもしないままに/二八 両手/二九 卓上カレンダー/三〇 夜想曲/三一 点/三二 倹約/三三 ただそれだけということ/三四 同じトゲ/三五 選ぶことと選んだことと/三六 踊らなかった あいつ/三七 スケッチ/三八 沈黙の音/三九 特別のしるし/四〇 古代神殿の廃嘘にて/四一 自由/四二 香がくゆる/四三 治癒/四四 現在の事件/四五 春/四六 花冠/四七 夕べの横顔/四八 秋の表れ/四九 メッセージ/五〇 三つひと組/五一 夜と彫像
【はるかなる】
五二 そろりそろりと/五三 墜落/五四 短い対話/五五 だから/五六 ほとんど完壁/五七 法廷の展示品/五八 熱/五九 片手の男/六〇 ありがとう/六一 おおまたで踏みこえる/六二 ひそかに/六三 うたがわしい姿勢/六四 赤い手をして/六五 ちかよれないもの/六六 夜明け/六七 伴奏つきで/六八 式典の準備/六九 不眠/七〇 縮尺/七一 土曜日の前の日/七二 立ちなおる/七三 攻撃されて/七四 どういうわけだろうか/七五 両側/七六 翌日/七七 冬の日射し/七八 予想したるもと予想外と/七九 いちばんよい方法/八○ 各自の死後に/八一 貴重品収納庫/八二 墓地の彫像/八三 遥かなるもの
注
リッツォス略伝
参考文献