1974年7刷　四六判　P154　カバースレ、ヤケ、少汚れ　小口ヤケ　カバー袖から見返し、巻頭巻末ページにかけてセロテープ跡

“時間とは、瞬間の中に閉じこめられ、二つの虚無の間につるされた現実である。この命題に基づいて展開される本書は、純粋持続として流れる時間をとらえようとしたべルグソン説との徹底した対比のもとに語られている。
実在するものは現在の孤独な瞬間のしるしから絶対に逃れられず、あらゆる変化と生成は一瞬一瞬を利用していくだけであると直観することによって、瞬間の存在論的始原性が確立きれ、持続や習慣や進歩という時間現象も非連続的な時間の相のもとに秩序づけられる。また、〈瞬間の直観〉の現実性を自我における純粋持続の観念性より根源的であると看破してい る点は、従来の形式論や連続説と非連続説の折衷論をはるかに越えるものといえる。自然科学者として出発したバシュラールならではの具象的時間論であるが、もちろん精神にはそれ固有の瞬間のリズムを見ている。
彼の著作としては比較的初期に属するが、その長い創造的な生涯を通じて展開した独特の詩学のいわば基底におかれるべき重要な書で、時間論と美学の関係、あるいは孤独な瞬間は美の生み出される唯一の場であるという彼の見解からすれば、〈瞬間の美学〉ともいえよう。”（カバー裏紹介文）

目次：
瞬間の直観
　まえがき
　第一章　瞬間
　第二章　習慣の問題と非連続的時間
　第三章　進歩の概念と非連続的時間の直観
　結び

詩的瞬間と形而上学的瞬間

訳者あとがき