1984年新装版1刷 四六判 P360 全体に経年によるヤケ、汚れ、イタミ 小口シミ汚れ ページ複数ヶ所に少開きグセ
“この書では、伝染病が歴史のなかでどのように動くか、その理論とその必然性の裏づけの“ダイナミックな把握”の態度が一本の筋となって流れている。それを著者の幅広い知性で裏打ちされた人生観が修飾し、しかも文章ににじみ出るウィットとユーモアと諷刺と痛烈な皮肉が、好個の読物としている、といえよう。
著者ジンサーは微生物学者で、ハーヴァード大学の教授だった。彼はいう。
「長年、伝染病を相手として取り組んでいるうちに、国家の運命に、また確かに文明の興隆と滅亡のうえにも、これらの伝染病による災害がきわめて重要な影響を与えてきたことに、われわれは深く印象づけられて来た。しかもそのようなことがらを、歴史家とか社会学者は、ほとんど無視して来ているのである」
こうして書かれた伝染病の伝記は1934年にも、1964年にもベストセラーになり、洛陽の紙価を高めたのだった。学者の職業について、彼はいっている。「ごくわずかな例外を除けば、とにかく知的な職業というものは、全体的理解能力を高めるべきものであること、人間の心をギルド的にきびしく分類するのは間違っていること、そして芸術と科学には共通点が多く、また相互に敬意を払いあうことによって、豊富な収穫も得られるものであることを、われわれは固く信じている。」 この心から生まれた素晴らしい贈り物といえよう。”(カバー裏紹介文)
目次:
まえがき
第一章 はじめに
第二章 一科学者の芸術観
第三章 寄生性微生物と生命の起源
第四章 寄生性と流行病発生の歴史
第五章 新しい病気となくなった病気
第六章 古代の病気
第七章 ローマにおける伝染病の流行とその崩壊
第八章 伝染病と戦争
第九章 わき役、シラミの登場
第十章 人間の生活におけるシラミ
第十一章 ネズミ、その人間との関係
第十二章 われわれの主人公、発疹チフスの登場
第十三章 発疹チフスの誕生、少年期から青年期へ
第十四章 発疹チフスの流行と伝播
第十五章 発疹チフスの成年期
第十六章 発疹チフスと現代および将来
原注
年表
訳者あとがき