1974年7刷 四六判 P294+索引P7 カバーヤケ、端少イタミ、背上端破れ 小口ヤケ大、汚れ 巻頭口絵ページから扉にかけて時代シミ
“およそ精神の危機が訴えられる時代にはきまってグロテスクな芸術が一世を風靡する。現代芸術はかつてなかったほどグロテスクなものとの親近性を示している。単に文学と絵画だけではなくあらゆる芸術がグロテスクな諸特徴に満ちており、いってみれば、グ口テスク風こそ現代における唯一の正統なジャンルではあるまいかとさえ思いたくなる。
十年前に刊行され、つとに古典的名著と評された本書において、この不世出のドイツ文学者は、ルネッサンス以降五世紀にわたり、「グロテスク」という言葉の歴史を概観するとともに各時代の詩学と美学におけるその定義を吟味し、主として多くの個々の絵画と文学におけるその表現を解釈することによって、グロテスクなものの本質をできるかぎり厳密に規定している。ここに初めて「グロテスク」という概念は、今後の芸術研究のための確固たるカテゴリーとなったばかりか、また変革期における文化診断の重要な手がかりともなったのである。”(カバー袖紹介文)
目次:
緒言
問題提起
第一章 グロテスク模様 事柄と言葉
第一節 「当今グロテスク模様とよばれているもの…《ケ・オッジ・キアマノ・グロテスク》」
第二節 「この話はとてもグロテスクだ《セ・ディスクール・エ・ビアン・グロテスク》」
第二章 「グロテスク」という概念の拡張
第一節 「通称、地獄ブリューゲル」
第二節 即興喜劇《コメーディア・デラルテ》の「幻想《キメラ》的」世界
第三節 疾風怒濤時代《シュトゥルム・ウント・ドラング》の戯曲における「グロテスク風の精神」
第三章 ロマン主義におけるグロテスクなもの
第一節 理論 {フリードリヒ・シュレーゲル/「ユーモアの破壊的なもくろみ」(ジャン・パウル)/美女と野獣《ラ・ベール・エ・ラ・ベール》(ヴィクトール・ユゴー)}
第二節 小説 {語り手としての悪魔的滑稽家/『暗夜物語』(E・T・A・ホフマン)/『グロテスク・アラベスク奇譚』(E・A・ポー)
第三節 戯曲 {アヒム・フォン・アルニム/「グロテスクだ! グロテスクだ!」―『ヴォーツェック』(ビューヒナー)/ロマン主義喜劇}
第四章 十九世紀におけるグロテスクなもの
第一節 美学におけるグロテスクなものの解釈
第二節 「写実主義的な《リアリスチック》」なグロテスク風(ケラー、F・Th・フィッシャー、W・ブッシュ)
第三節 外国文学の「写実主義《リアリズム》」におけるグロテスクなもの
第五章 二十世紀におけるグロテスクなもの
第一節 戯曲 (ヴェーデキント、シュニッツラー、グロテスク風の演劇《イル・テアトロ・デ・グロテスコ》)
第二節 恐怖小説の作家たち (戦慄文学、マイリンク、カフカ)
第三節 モルゲンシュテルンと言語のグロテスク風
第四節 トーマス・マン
第五節 「現代」抒情詩と夢物語
第六節 絵画における超現実主義《シュルレアリスム》
第七節 グラフィック (アンソール、クービン、A・パウル・ヴェーバー)
総括 グロテスクなものの本質を規定する試み
註
訳者あとがき
人名索引