1979年初版 文庫判 P222 帯少汚れ、背少ヤケ 小口からページ端にかけてヤケ
“鬼面人を驚かす奇抜な発想とタガのはずれた言葉遊びが表わすさかしまの世界の大祝祭”(帯文)
“独創的な殺人を犯すことで「殺人趣味の会」から称賛されるという黒いユーモア。溺死人は実はふつうの人間と別の生理と習性をもっていて資本をも産みだすのだ、という牽強付会な現代の神話。無銭飲食の黒人を使節団としてもてなすというさかしまのマキャベリスム。タイム・マシンの作り方を悪趣味なまでに緻密な綺想で描いた科学的予言―愚劣さと神性、幼児性と老練、正気と陶酔、日常用語と言葉遊びの間の往復運動をくりかえしながら、およそこの世でユビック(遍在的)なものならなんでも寄せ集めた本書は、ユビュ王を自称するジャリにふさわしく飽くなき欲望と魁偉な姿で際立っている。
時代の夜明けに覆されたアイデアの玩具箱の惨状を呈するショート・ショートとエッセイの混合した収録作79篇は、すでに場当たり的な効用性というものを抜けでて、役立たずを暴力的に推し進めて詩的幻想の書にまでなった来るべき百科辞典である。”(カバー裏紹介文)
目次:
巡査の脳味噌/現物給与/砂の男/奴隷女/近代的決闘/事故とカメラマン/溺死人の風俗/ヴィクトリア女王の柩/人口調査/大尉の大蝦/黒人の植民地パリ/マダム民族《ナシオン》の場合/ファゲ氏とアルコール中毒/どちらが強いか/カーニバルの最後の火曜日/エドガー・アラン・ポーの冒険/軍隊を守ろう/フランスの木々/フジヤマ/絞首刑/馬力電車/女を殴る/特務曹長とんま/ダンスの弾道学/暗黒の正体/馬的思考/法王の存在/新しい切手/いかにしてウイルヘルミーヌ女王陛下と知り会いになったかという話/鉄道事故/勇気の定義の試み/ブルノー神父/被幽閉者十万人/渡り鳥の大統領/殉教者の子供たちの保護機関/英語の勉強/ブリュッセルの国民軍/軍隊における笑い/食人/乗合馬車のあとがき/ある種の害虫「羽根」について/歴史の小話/国旗/自殺と支払い期限の関係/王様の虫様突起/白鳥の歌/死刑廃止論について/彼岸《あのよ》の指導委員会/外用薬/パリ祭と人間供犠/バーナム/サーベルの廃止/憲兵の経験的心理/ある軍人の報告―再び溺死者について/遊楽日/切手《タンブル》氏の陥穽《おとしあな》/毒薬の伝説/タイム・マシンの作り方 {一 媒体の性質/二 タイム・マシンの理論/三 機械の描写/四 タイム・マシンの機能/五 タイム・マシンから見た時間}/若干のSF小説について/斜面の自転車競走としてのキリストの受難/悪循環/聖処女と小便小僧/さまざまな賞金/パリ・マドリッド自動車競走/防腐剤だ 防腐剤だ/別荘生活者の弁/診断/マクベス博士/感化院/轢く歩行者/新しい黴菌・恐怖を散蒔く病気/インスタント言語/乗合馬車の狩猟術/パリ市中での発砲/公民権について/解決された空中移動/人を轢く歩行者の結論/死後の賛辞
訳者あとがき