昭和53年 A5判 P578 元パラ端少破れ、汚れ 函背少汚れ、少イタミ 月報付
“いま魚族は絶えつつある。同時にかつて自由な空間であった海に生きる沿岸漁民も亡びつつある。近代がつくりだした資本主義漁業は稚魚群をとりつくし魚礁を荒廃させ、はては沿岸漁民をも放逐した。さらに内陸の大企業コンビナートは海水を汚濁し、人間の生命までも奪いはじめている。自然の人間族への復讐であろうか……。
一方この国の農耕民的風土のなかで非農耕民である漁民は差別視され、貧困と屈辱を強いられつづけてきた。本書は強靭な肉体を元手に板子一枚下は地獄の海上で自由な業を営みながら、ときに国境を越えて漂泊を強いられた沿岸漁民の生活の極限を描く。”(帯文)
目次:
自由の蒼民―解説・漁民の世界―(岡本達明)
【第一部】
天草漁民聞書(久場五九郎)
はじめに
第一章 天草 {一 百姓と舟人/二 漁業の盛衰―下島牛深/三 牛深の半農半漁部落/四 御所浦島/五 牛深の舟津/六 宮崎部落の釣漁/七 上島宮田村/八 二江の海士}
第二章 水俣の中の天草 {一 料理屋と女衒/二 血の鎖国/三 移住の原型}
【第二部】
十八人の墓(角田直一)
第一章 潮
第二章 家船
第三章 手から帆へ
第四章 人名と毛人
第五章 藻三本・家三軒
第六章 部落の始原
第七章 かわりゆく塩飽衆
第八章 長州への道
第九章 幕末塩飽
第十章 海を染める劫火
第十一章 自由は南から
秋田でかせぎ漁民物語(松村長太)
一 北に向う川崎船
二 荒っぽい漁師
三 地獄の入り口
四 父祖伝来の海
五 新天地南カラフト
六 荒海決死の冒険
七 ニシンを追って
八 悲しい受難史
魚の胎から生まれた男(石橋宗吉述/高垣眸聞書)
【第三部】
朝鮮をめぐる日本漁業(吉田敬市)
通漁時代の鮮海漁業開発
移住漁村の建設とその消長
資料 朝鮮主要移住漁村年表
北海道鰊漁業労働事情(東京地方職業紹介事務局)
漁夫の労働と漁撈操作
漁獲物の処理と其の作業
九一及二八の制度並賞与の方法
漁夫の処遇
【漁民論考】
漁民論考一 漁場と漁民(河野通博)
漁民論考二 糸満売り(上田不二夫)
漁民論考三 記録なき国境の海へ(筆宝康之)