1985年 A5判 函付ソフトカバー P360+索引P24 函および本体表紙背から端にかけてヤケ、クスミ 小口少イタミ
“〈円卓の騎士〉〈聖杯探求〉などで知られる『アーサー王物語』。中世以来多くの人々に親しまれてきたこの物語の主人公アーサーは、はたして歴史上の人物であったのか否か。本書は、ケルト世界の英雄アーサーの史的実在を史料や考古学の成果のうちに探り、さらにはアーサー伝説のヨーロッパ全土への伝播と、その後アングロ・サクソンを軸として展開されたイギリス史における伝説の受容と変容とを跡づけ、ケルト世界とアーサー伝説の史的復権を試みる。”(カバー袖紹介文)
目次:
序 アーサーの史的復権
第一篇 歴史のアーサー
第一章 民族的・歴史的諸前提
第一節 歴史のアーサーをめぐる諸史料 {一 ギルダス『ブリタニアの破壊と征服』/二 ネンニウス『ブリトン人史』/三 『アンナーレス=カンブリアエ』と紀年法}
第二節 ケルト人の世界 {一 ケルト人とは何か/二 ブリテン諸島のケルト人/三 ピクト人の問題}
第三節 ローマン=ブリテン {一 ローマのブリタニア支配/二 ローマ支配の動揺/三 ローマン=ブリテンの終焉/四 ローマ支配復活の問題}
第四節 五世紀前半のブリタニア ―ケルト諸族の自立と移動―
第五節 アングロ=サクソンの浸透 {一 ウォルティゲルン/二 アンブロシウス=アウレリアヌス}
第二章 歴史のアーサー
第一節 史料上のアーサー
第二節 バドニクスの丘の戦い
第三節 歴史のアーサー {一 アーサーの史的実在性/二 ドゥクス=ベロールム/三 カムランの戦い}
第四節 バドニクス以後―六世紀前半ノブリタニア― {一 アングロ=サクソンの進出の停滞/二 アングロ=サクソンの大陸逆流}
第五節 アングロ=サクソンの再進出 {一 ブリトン人の頽勢/二 カドウァロンの大反響}
第二篇 伝説のアーサー
第一章 歴史的諸前提
第一節 アーサー伝説の諸史料 {一 韻文的・散文的諸史料/二 聖界伝説の諸史料}
第二節 七―八世紀より十一世紀に至るブリトン人 {一 北ブリトン人の衰退とスコットランド王国の形成/二 ドゥムノニアとブルターニュ/三 ウェイルズの形勢}
第二章 伝説のアーサー
第一節 アーサーの伝説化 {一 伝説の種々相/二 不死・帰還伝説/三 聖界伝説におけるアーサー/四 伝説化の基本的契機}
第二節 アーサー伝説の拡大 {一 フランス・イングランド/二 イタリアへの普及/三 東方への伝播}
第三節 拡大の諸契機 {一 伝説の初期媒介者/二 拡大の諸契機}
第三篇 アーサー伝説の「歴史」化とロマンス化
第一章 アーサーの「歴史」化
第一節 『ブリタニア列王史』 {一 ジェフリ=オヴ=モンマス/二 『ブリタニア列王史』/三 『列王史』の材料/四 『列王史』の意図}
第二節 『ブリタニア列王史』の「歴史」化 {一 『列王史』への批判者/二 『列王史』の「歴史」化}
第二章 アーサーのロマンス化とその背景
第一節 伝説のロマンス化
第二節 ロマンス化の政治史的背景 {一 カペー家とノルマン家/二 プランタジネット家とアーサー=ロマンスの成立}
第三章 アーサー説話と歴史
第一節 アーサーの遺骨発掘 {一 グラストンベリ修道院の遺骨発掘/二 遺骨と十字架の真偽/三 遺骨発掘の意味}
第二節 エドウァード一世とアーサー {一 エドウァード一世のウェイルズ征服/二 エドウァード一世とスコットランド/三 エドウァード一世と「円卓」}
第三節 モーティマー・ヨーク両家とアーサー伝説 {一 モーティマー家の「円卓」と「系図」/二 スコットランドの反応}
第四節 アーサーの「アングル化」 {一 オクス・ブリッジの争い/二 スコットランドの反応}
第四章 アーサー信奉の復活と終焉
第一節 テューダー朝とアーサー信奉 {一 テューダー朝の登極/二 アーサー信奉の復活}
第二節 アーサー説話をめぐる論争 {一 批判の開始/二 論争の激化/三 アーサー信奉の終焉}
図版・系図
あとがき
索引