1987年2刷 史六判 P569 カバーヤケ、クスミ、端イタミ 小口汚れ
インド、中国、日本といった狭義の「東洋」だけでなく、エジプト、ペルシア、ユダヤ、バビロニア、さらにアメリカ、アフリカ……など、古代から近代にいたるまで西洋人にとっての異文化、さまざまに夢想されてきた広義の「東洋《オリエント》」について、そのイメージの歴史を辿る。
目次:
序 旅への誘い
1 旅の見取図 エクゾティスムの魅惑と呪縛/2 旅の行方 「東洋」という名の幻想
I 最古の民・最果ての怪異
{・ヘーロドトスの「開かれた世界」 ・最古の民族=エジプト人 ・地の果ての怪物たち}
II 遍歴する賢者たち
{・「哲学の異国起源」神話 ・異境の神人たち ・東方に旅する賢者の群 ・「ローマII世界」と唯一の秘められた真理}
III 秘教の解釈学
{・謎のことばと隠された真理 ・秘教としての神話―寓意による解釈学-秘教としての世界 ・「神のことば」による世界創造―ユダヤ-キリスト教における「唯一の真理」の普遍主義}
IV 隠喩としての歴史
{・隠喩的思考=「真理の一元論」の方法論 ・唯一の神の無数の顕現―異国の神話の「ギリシア式解釈」 ・キリスト教的真理と異教神話の合致 ・「神と人間のドラマ」としての歴史―歴史の隠喩化}
V 世の終りと帝国の興り
{・「永遠のローマ」―ローマの神秘的歴史哲学 ・初期キリスト教における「終末の都ローマ」 ・コンスタンティーヌス帝の改宗と「天の帝国の地上の模像ローマ」 ・「世界紀元」の誕生}
VI 東の黎明・西の夕映え
{・キリスト教的「進歩史観」と世界史の時代区分―訓育としての歴史 ・ダニエルの「四つの獣=四つの帝国」の夢 ・「東から西へ」―帝国の歩みと真理の歩み ・世界史の完成を目指して―シャルルマーニュからヘーゲルまで}
VII 終末のエルサレム
{・反キリストとしてのマホメット ・「世界の中心」エルサレムの象徴 ・キリスト教の「人間化」と民衆十字軍=「貧しき者」の終末論的熱狂 ・フィオーレのヨアキムの革命的歴史神学―「至福の精霊の時代」へ向けて}
VIII 楽園の地理・インドの地理
{・インドの聖トマス伝説 ・「極東」のキリスト教帝国の伝聞 ・絶対的東方「地上の楽園」と「インド」の地理 ・中世的知の構造―伝説的知と自己目的的イマジネール}
IX 秘境のキリスト教インド帝国
{・祭司ヨーハンネスからの手紙―驚異のキリスト教インド帝国 ・地の果ての布教と終末の帝国 ・「パックス・モンゴリアーナ」のもとで―中央アジアに祭司ヨーハンネスを尋ねて ・旅の幻滅と新たな夢想―祭司ヨーハンネスの「インド=エティオピア帝国」}
X ―そして大海へ……
{・ルノー・ド=シャティヨンの紅海遠征と「中世のパレスティナ問題」 ・大海に祭司ヨーハンネスを尋ねて―「大航海時代」の夜明け ・ヴァスコ・ダ=ガマの「二つの目的」とひとつの夢 ・祭司ヨーハンネスの「正体」}
XI 新世界の楽園
{・中世的イマジネールの終焉―ルネサンスの認識論的革命=「幻想の現実化」へ向けて ・クリストーバル・コロンの「地上の楽園」発見 ・コロンの終末論的使命 ・終末の王国スペイン}
XII 反キリストの星
{・一四八四年の星―「黄金時代」の夢と世の終りの恐怖 ・サヴォナローラ=反キリストの革命と敗北 ・フィチーノと「古代神学」の復活 ・「新エルサレム」フィレンツェの秘教的ユートピア ・新たな黙示録の時代へ}
XIII 追放の夜・法悦の夜
{スペインのユダヤ人追放と宗教の内面化 ・キリスト教カバラの始まり―ヨーロッパのもう一つの「内なる東洋」 ・スペイン天啓主義の天上的狂気とロヨラ―「イエスの軍団」の誕生}
XIV 東洋の使徒と「理性的日本」の発見
{・ザビエルのインド布教―期待と幻滅 ・マラッカでの邂逅―ザビエルと日本人ヤジロウ=パウロ ・「理性的異教徒」の発見 ・ザビエルの日本人観 ・「唯一の理性」による世界統一へ}
XV 天使教皇の夢
{ある天啓主義者の生涯―「碩学にして狂気」のギヨーム・ポステル ・ポステルの「記号論的神学」―ことばと歴史の「真義学」 ・ポステルの「フランス=世界帝国主義」とそのヨアキム主義的起源 ・中世の終末神話からルネサンスの黙示録的現実へ―ミュンツァーのドイツ農民戦争、「新エルサレム」ミュンスターの惨劇 ・「天使教皇」=「第二のアダム」ポステルによる楽園復原 ・二つの理性―ザビエルの「自然理性」とポステルの「楽園的理性」}
XVI アレゴリーとしての「ジアパン島」
{・ポステルの「アジアー楽園」観 ・ポステルによる「日本事情報告書」の解釈―仏陀=キリスト同一説 ・「影」としての西方―「影」としてのジアパン人}
エピローグ
注
引用文献一覧
あとがき