1996年　四六判　P349　カバー上端僅ヤケ　天少クスミ

“プルーストの描く迫力ある同性愛者シャルリュスのような、性別ばかりか、国境も階級差も軽々と乗り越えるゲイたちのなかに、私たちは人間の「自由」の体現者を認めるべきではないだろうか。―本書から”（カバー裏側袖紹介文）

目次：
序章　あえてその名を告げぬ愛
　｛『失われた時を求めて』と同性愛／男爵パラメード・ド・シャルリュス／同性愛者プルースト／同性愛・恥ずべき罪悪／なぜ同性愛か／用語の問題｝
第一章　ゲイ小説としての『失われた時を求めて』
　｛同性愛者たち／ソドムとゴモラ／同性愛・物語の発動源／『ソドムとゴモラ』以前の同性愛／「私」は同性愛者であるか／語られない物語／沈黙と逆転のロマネスク／転回点としての『ソドムとゴモラ』／「心の間歇」と同性愛／三人の芸術家と同性愛／「グロテスクな」同性愛者たち｝
第二章　時代的背景
　｛偏見と排除の強化／同性愛者への「科学的な」見方／同性愛・世紀末のトピック／プルーストと性科学／遺伝する病気としての同性愛／病的な同性愛と健全な同性愛／同性愛スキャンダル／オイレンブルク事件／プルーストとオイレンブルク事件／オイレンブルク事件と同性愛者排除の論理／同性愛文学／プルーストにとっての同性愛小説｝
第三章　母親は同性愛の原因となるか
　｛同性愛の原因／母親の問題／プルーストと母／母は息子の「悪徳」を知っていたか／「ある親殺しの孝心」とモンジューヴァンの挿話／作品への投影／シャルリュスと母／そのほかの同性愛者と母／話者の場合｝
第四章　ユダヤ人であることとゲイであること
　｛「呪われた種族」／プルーストの時代のユダヤ人批判／ユダヤ的なものと同性愛／『失われた時を求めて』でのユダヤ人とゲイ／「ユダヤ人」シャルリュス／プルーストのユダヤ人意識／ユダヤ人たる母―「就寝劇」について／「就寝劇」での同性愛のテーマ／ブロック一族の不品行／ラシーヌ劇について／イスラム世界の寛容さ｝
第五章　キリスト教と同性愛
　｛プルーストの同性愛意識／病気・遺伝・種族／キリスト教による禁圧／同性愛排除はキリスト教本来の姿なのか／「性異常」を助長する（？）キリスト教／プルーストにおけるキリスト教と性衝動／キリスト教徒シャルリュス／キリスト教と同性愛―シャルリュスの場合／中世的・キリスト教的ファンタスム／神はソドムを全滅させたのか／宗教と同性愛｝
第六章　社会における同性愛
　｛召使たちへの愛／主人と召使・その社会的意味／「エプロンのフェティシスム」／師匠と弟子／ギリシアのモデル／戦争と同性愛／ジュピアンのホテル／ドイツおよびナチズム／そしてワグナー／同性愛的人間関係／「召使のスノビスム」｝
第七章　美意識豊かなナルシシストたち
　｛シャルリュスの末路／同性愛者の特質―プルーストからみて／同性愛者と芸術家的資質／才能豊かな精神病者／ナルシシスムについて／ナルシシスト、シャルリュス／両性具有の問題／両性具有者による創造／両性具有は人間の理想か｝
第八章　サド・マゾヒズムについて
　｛暗夜の方舟／まぼろしのユートピア／同性愛とファンタスム／ついに酔えないシャルリュス／演劇的なもの／マゾヒズム・想像力の肥大／心優しきマゾヒスト／マゾヒズム・愛の希求／「避けがたい残酷さ」／エロスの作家（？）プルースト｝
終章　文学の主題としての同性愛
　｛プルーストの貢献／作中人物としての同性愛者／同性愛者的感受性／「イデアリスムの教訓」／芸術家たりえないシャルリュス｝

注
主要な参考文献
あとがき