平成6年初版　Ａ５判　P236　カバー僅イタミ

メルヴィルの小説『白鯨』の前半部を取り上げ、作品の構造、作中の日時、原書での言い回し、固有名など、作品のさまざまな部分に込められた隠喩的意味、聖書や思想的象徴にもとづく符牒を読み解く学術的な論考。

目次：
まえがき
第一章　「幻」
　Moby-Ｄｉｃｋの主題は復楽園であるが、第Ｉ章の‘Loomings’は、Moby-Ｄｉｃｋ全体の問題点とそれらの解釈のための鍵が用意されている。その鍵をさぐってみる。
第二章　「布袋」と「汐吹屋」
　「布袋」には「堅固な砦」、「汐吹屋」には「打ち捨てられたノアの古船」の面影がある。第ＩＩ章‘The Spouter-Inn’のテーマの隠された意味について考える。
第三章　「掛け布団」
　「掛け布団」には「たがいに符合し合うものの片方」という意味がある。そのＩＶ章の‘The Counterpane’の意味について考える。
第四章　「朝食」
　「朝食」には、「しっかり掘りおこす」という意味が隠されているが、第Ｖ章の‘Breakfast’の‘Grub Ho.’を掘りおこす。
第五章　「説教壇」と「説教」
　Ｍｅｌｖｉｌｌｅほど徹底して、キリスト教的救済を肯定し、激しく求めた例は珍しい。高い説教壇に垂直の様子がかかっている。第ＶＩＩＩ章‘The Pulpit’と第ＩＸ章‘The Sermon’ではその意味を考える。
第六章　「盟友」
　第Ｘ章の‘A Bosom Friend’は第ＩＩ章‘The Carpet Bag’のBosomは、箱（Chest）や潜函（Coffer-dumm）との関連が浮かぶ。
第七章　「寝着」と「出生」
　第ＸＩ章の‘Night gown’では、夜闇の中の小さな光の重要さが説かれ、第ＸＩＩ章の‘Biographical’には、深層の意味として「生命の図式」が考えられる。
第八章　「鍋料理」と「街路」
　第ＸＶ章‘Chowder’のテーマは食事とベッドであるが、これらはいずれも結婚に結びつく意味をもっている。第ＶＩ章‘The Street’のNew Bedfordは、かつてはNew Englandで最も荒れ果てた土地であったが、今は最も快適な土地になった、と表現されている理由をさぐる。
第九章　「船」
　第ＸＶＩ章‘The Ship’では、IshmaelのPequod号への乗船が決まるが、この航海の謎を解く手掛かりがある。
第十章　「預言者」
　第ＸＩＸ章‘The Prophet’では、Elijahという預言者が現れるが、彼の顔には一面にあばたがある。これは聖痕と呼ばれるもので、神秘的な力を持つ人や、神に選ばれた人にしばしば現れるが、Elijahのあばたについて考える。
第十一章　「後看板」
　第ＸＸＸＶＩ章の‘The Quarter-Deck’では、春分の日に起こった事件について述べているが、この日に初めてAhabは、船員たちにMoby Dickについて説明し、Moby Dickについて説明し、Moby Dickを追う決意をする。MElvilleの春分にこだわる理由は何か。

参考文献
あとがき