1986年初版 四六判 P283 カバースレ、少クスミ、背ヤケ大、上端少イタミ
“巫女にして母、母にして女帝―オキナガタラシヒメ(神功皇后)の物語はいかに形成されたか。古事記、日本書紀の丹念な読みをふまえ、喪われた古代の女の呪的霊能に光をあてて神話の構造を透視する《胎中天皇の神話》、危機の7世紀に、権力から疎外され幻想的権威として実質なき栄光の頂点に祀り上げられる〈狂心〉の巫女王を鮮やかに描く《斉明天皇論》、古代後期の遊女の美声と伎芸に、人々の肉体的・精神的救済をもたらす〈巫女の文化〉の継承をみて、女性の見直しを提起する《古代の女の文化》他9篇を収録。
本書は、〈人類史の遠い地平の仄明りの中に〉、新たなフェミニズムの構想と歴史を読み直すための手がかりを求めた著者の遺稿集である。”(カバー裏紹介文)
目次:
古代の女の文化―女性史の見直しのために
I
伊勢神宮の由来
{はじめに/参迎える神/聖なる稲田/伊勢の狭長田の五十鈴の川上/神宮の祠官たち/宇治土公と度会氏/伊勢路と東国(1)/伊勢路と東国(2)/もう一つの神宮起源譚}
胎中天皇の神話
{はじめに/皇太子誕生の物語/「新羅征討」物語をよむ (豊浦宮、香椎宮 ・巫女オキナガタラシヒメ ・胎中天皇 ・住吉大神 ・御馬甘 ・ミアレ)/筑紫降臨の意義/巫術と卜術/八十島祭と宮主/女帝オキナガタラシヒメ}
斉明天皇論
{はじめに/建王の挽歌 その(1)/建王の挽歌 その(2)/女帝と外交/今は漕ぎ出でな}
斉明女帝論―日本書紀を通してみた虚像
{はじめに/皇極・斉明の時代/狂心の渠/転換期としての七世紀/律令的精神と女帝/皇極女帝と祈雨/おわりに}
II
「六月晦大祓の祝詞」の一節
「枕辺に斎戸を据ゑ」(万葉集巻三・四二〇他)の意味するもの
遊女論にことよせて
「からゆきさん」研究と女帝論
{教科書問題にふれて}
「己れの生を綴るいとなみ」について
今、転換期を迎えて
III
置目説話をよむ―古事記説話の手法
初出一覧