昭和57年7刷　Ａ５判　P263　カバークスミ、上端イタミ、背ヤケ　小口時代シミ

挿絵：依光隆

“……月にはすでにルナ・シティという地下都市が建設されていて、そうとう数の市民がそこに住みついています。市民たちのうちある年令までのおとなは地球生まれですが、子どもたちはみんな月で生まれ月で育った月二世。いうなれば月っ子です。
　かれらにとって、月は生まれ故郷です。そして、いまわれわれが生まれ故郷を愛するように、月をしんそこ愛しています。かれらにとって、地球は、住みよいところではありません。〈略〉
　だからかれらは、地球生まれの親たちが、なにかというと地球をなつかしみ、みどりの森だの青い空だの、はてしない海だのそよ吹く風だのといってセンチメンタルになることがばかばかしくてしようがない。それ以上に、そんなぬるま湯みたいな惑星にへばりついていて、宇宙へでていこうとしない連じゅうがごたごたしていることから、地球を軽蔑しさえする。こんな時代なのです。……”（巻末解説『作者と作品について』より）

目次：
一　宇宙のふたご／二　家族会議／三　宇宙船を買う／四　ローリング・ストーン号／五　準備ＯＫ／六　フォア・スリー・トゥー・ワン！／七　宇宙病／八　行くか、もどるか？／九　宇宙での生活／十　流行病発生／十一　火星をめざして／十二　フォボスの宇宙空港／十三　ようこそ火星へ／十四　破産か、それとも／十五　つぎの目的地へ／十六　ふわふわ騒動／十七　宇宙ギャングか？／十八　ロック・シティ／十九　チャーリーおじさん／二十　大売りだし／二十一　思わない災難／二十二　捜索／二十三　はてしない旅

作者と作品（福島正実）
二十一世紀の世界（白木茂）