2003年初版　四六判　P382　帯少クスミ、少背ヤケ　カバー背ヤケ、上部少イタミ

副題：サロンと文学カフェから眺めた両大戦間期およびナチス体制下のウィーン

“〈羞恥の沈黙〉に閉ざされた第三帝国の忌わしき記憶。憎悪と敵意の感情に引き裂かれた破局的な状況の下、思想や信条の違いを越えて、自由な精神が躍動し、数多の運命が交錯する舞台だった〈カフェ〉に集う、有名無名の作家、知識人、文化人、政治家、そして市井の人々。
ウィーン新聞界の重鎮が回想する〈現代史〉のなかの日常”（帯文）

目次：
序
第一章　帝国延命
　｛一　カカーニエンの顔見世行列／二　インフレ時代のクローネ銀貨｝
第二章　カフェ・ヘレンホーフ巷談
　｛一　文学カフェの診断書／二　性の革命論者オットー・グロースからチャタレイ夫人まで／三　サウジアラビア外交官ムハマド・アサドこと元東欧ユダヤ人ポルディ・ヴァイス／四　怜悧、聡明、ゆえに破綻、あるいは著作なき文士エルンスト・ポーラク／五　「人類の友」フランツ・ヴェルフルｊとの出会い／六　ヨーゼフ・ロートと反カール・クラウス文芸誌『不平家』／七　『特性のない男』とそのパトロンたち／八　言葉の綱渡り芸人アントーン・クー／九　一輪の名花ビビアーナ・アモン／ランボー肌の物書きフランツ・ユング／十一　われらが群盗の頭目アードルフ・ヨーゼフ・シュトルファー／十二　散文侯爵アルフレート・ポルガー／十三　一〇〇パーセント母親似、ありはストリンドベリの息子／十四　カーレンベルクとウマルモスクを同時に望むところに住めるなら―レーオ・ペルツ／十五　最後の貴紳アレクサンダー・レルネット＝ホレーニア／十六　ヒルデ・シュピールの第二の故郷／十七　ルードルフ・シュタイナーの教えを棄てた男／十八 ウィーン幻想リアリズムの祖、あるいは奇術師カール・アントーン・ライヒェル／十九　建築を哲学する男ハンス・フェッター／二十　マリオネット劇場「銅鑼」／二十一　骨董収集の楽しみ／二十二　全ての発端、あるいは心理劇／二十三　カフェ・ライムントの常連／二十四　カフェの名物給仕たち／二十五　カフェ・ヘレンホーフの顧客名簿｝

第三章　ウィーン最後のサロン
　｛一　ベルタ小母さん、枢密顧問官夫人ベルタ・ツッカーカンドル／二　バレエ界の女王グレーテ・ヴィーゼンタールの世界／三　幻想と諷刺の作家ヘルツマノフスキーのデビュー／四　女性画家ヒルデ・ポルステラーのサロン、あるいは時代の転換とあらたなる開始｝

第四章　ヒトラー治下のウィーンの明け暮れ
　｛一　春のリング散歩／二　禁欲的な茶話会、あるいはルードルフ・カスナー／三　ヒトラーとネストロイ／四　ウィーンの地下生活記録／五　楽団長シュタインブレッヒャーの意趣返し／六　言語統制／七　虎穴に入らずんば／八　あるバイエルン人の幻視／九　「くそ食らえ」／十　仮病で命拾い／十一　デーメル会修道女たち／十二　食糧統制下の食料品店ヒープリンガーとその反骨の女主人／十三　『新ウィーン日報』の暗澹たる歳月｝

謝辞
原注
訳注
人名索引
訳者あとがき