
1991年5刷 A5判 P411 カバー僅汚れ
“世界は音に満ちている。さまざまな音がいろいろな形で私たちを包んでいる。海の音、風の音、都市のざわめき。聞こえる音、 聞こえない音、過去の音、未来の音が、私たちの音の世界をつくりあげている。今この瞬間に私たちが耳にしている響きもこうした音の地平のなかにある。
これまで一般に音が問題にされるとき、それは「音楽」として取り上げられるか、あるいは「騒音」として取り上げられるかのどちらかであった。
…〈略〉…
しかし、私たちの音の世界はそれらの枠組みよりも遙かにダイナミックである。本書の著者マリー・シェーファーは、そうした従来の「音楽」や「騒音」によってはとらえることのできないさまざまな音をすくいあげる包括的な枠組みとして〈サウンドスケープ〉という考えかたを提示している。…”(本書巻末「訳者解説」より)
目次:
序
日本語版への序文
序章
{インダストリアル・デザインからサウンドスケープ・デザインへ/オーケストレーションは作曲家の仕事/音楽のアポロン的概念とディオニュソス的概念/音楽、サウンドスケープ、社会福祉/サウンドスケープの記譜法《ソノグラフィー》/耳の証人/サウンドスケープの諸特徴/耳と透聴力/特別な感覚}
【第一部 最初のサウンドスケープ】
第一章 自然のサウンドスケープ
{海の声/水の変容/風の声/奇蹟の国/独自な音/黙示録の音}
第二章 生命の音
{鳥の歌/世界の鳥のシンフォニー/虫/水棲生物の音/動物の音/人間は言語と音楽でサウンドスケープにこだまを返す}
第三章 田舎のサウンドスケープ
{ハイファイなサウンドスケープ/牧場の音/狩りの音/ポストホルン/農場の音/田舎のサウンドスケープにおける騒音/聖なる騒音と俗なる沈黙}
第四章 町から都市へ
{神よ 聴きたまえ/時の音/その他の焦点/基調音/夜と昼の音/馬車の基調音/仕事のリズムが変化し始める/路上の呼売り人/都市の喧騒/選択的な騒音規制 ―路上の呼売り人は去れ}
【第二部 産業革命後のサウンドスケープ】
第五章 産業革命
{産業革命によるローファイなサウンドスケープ/テクノロジーの音は町と田舎をつきぬける/騒音《ノイズ》は権力/音の帝国主義/音の平坦な線/列車にまつわる伝承/内燃機関/筋肉音の増大/空の大きな音の排泄孔/飛行士の難聴の耳/反革命}
第六章 電気革命
{音分裂症/ラジオ ―拡張された音響空間/放送のかたち/音の壁/ムーザック根元音あるいは中心書}
【間奏曲】
第七章 音楽、サウンドスケープ、変容する知覚
{野外生活の代用としてのコンサートホール/音楽、鳥の歌、そして戦場/狩猟ホルンはコンサートホールの壁を突き破り、田園を再び沸き入れる/オーケストラと工場/音楽と環境の道遇/反作用/相互作用/新たな管理人を捜している聖なる騒音/聴覚空間のフロンティアで/音楽とサウンドスケープにおいて増大する低音の特性/海底の故郷への帰還/内なる空間の統合に向かって}
【第三部 分析】
第八章 表記
{音のイメージ/三次元的音響像の問題点/音響学者は世界一の読み取り専門家/音響体、音事象、音風景/空からのソノグラフィー}
第九章 分類
{音の物理的特性による分類/音の指示機能による分類/美的特質による分類/音のコンテクスト}
第十章 知覚
{図と地/音響的能力/聴覚の鍵としての音楽/遠近法と強弱法/ジェスチュアとテクスチュア}
第十一章 形態学
{木からプラスチックへ/足からタイヤへ/ホルンから電信へ/ラチェットからサイレンへ/形態学的研究のもつ価値についての結論}
第十二章 シンボリズム
{海への回帰/風は気まぐれ/マンダラとベル/ホルンとサイレン/変遷する象徴性}
第十三章 騒音
{騒音の定義の展開/騒音の危害/環境騒音のレベルはどのくらい急速に上昇しているか?/環境騒音の増加に対する人々の反応/騒音規制の法律のいくつかの側面/騒音規制の法律の研究がどのように文化の違いを明らかにするか/世界をめぐる都市の騒音規制法令/言語における騒音/禁忌音}
【第四部 サウンドスケープ・デザインに向かって】
第十四章 聴く
{音響生態学とサウンドスケープ・デザイン/サウンドスケープ・デザインのモデュール/イヤー・クリーニング/サウンドスケープの旅人/音の散歩}
第十五章 音響共同体
{音響空間/音響共同体/戸外の音と屋内の音/古代における音響技師としての建築家/サウンドスケープ・デザインのプラス・マイナス/サウンドスケープ・デザイナーとしての現代建築家}
第十六章 サウンドスケープのリズムとテンポ
{心臓、呼吸、歩行そして神経系/自然のサウンドスケープのリズム/村の生活のリズム/ラジオ放送のリズム}
第十七章 サウンドスケープ・デザイナー
{サウンドスケープ・デザインの原理・/標識音の保存/サウンドスケープの修理/ベルの電話のベルというまずいしゃれ/自動車の警笛/ユートピアのサウンドスケープ}
第十八章 響きの庭
{雄弁な水/風の霊}
第十九章 沈黙
{静寂な聖林と時間/沈黙の儀式/西洋人と否定的な沈黙/積極的な沈黙の回復}
エピローグ 音楽をこえて
原注
付録
サウンドスケープ用語集
訳者解脱
索引